フリーアナウンサー
宇垣美里さん
1991年4月16日生まれ、神戸市出身。TBSアナウンサーを経て、2019年4月よりフリーアナウンサー。美容フリークとしても有名で、2020年11月にコスメ本『宇垣美里のコスメ愛』を出版。複数の媒体でコラム連載を担当するなど、執筆活動でも注目を集めている。
「宇垣美里さん寄稿」
マスク生活で気づいた、“私と美容”の関係性
マスクが生活必需品となってから、かれこれ一年半が経とうとしている。最初の夏は暑さと息苦しさにかなり苦しめられたが、二度目となるともう慣れたものだ。日中のほとんどは顔半分を隠して過ごし、ここ一年半で出会った人の顔を私は知らない。毎週同じスタジオで会っているスタッフさんですらそう。相手も多分、私の顔は知っていても私がどんなふうに笑うのか、直接見たことはないだろう。
それなのに、メイク用品もスキンケア用品もドレッサーに増えていく一方だ。マスクの中が意外と乾燥することが分かってからは保湿重視でスキンケアを選び、ファンデーションは摩擦にも強いサラッとした質感のものを。マスク焼けが怖いから美容液や乳液もUVカット効果のあるものばかりを愛用している。総額については考えたくない。
美容が人に見せるためだけのものなら、きっとこうはならなかった。これ幸いとすべてを簡単にすませ、口紅なんて奥の方に封印してしまったことだろう。収納しきれないほどのアイテムを前に、改めて美容もメイクも、自分のためのものだったんだな、と思う。
画面越しなら少々のニキビもくすみもバレないし、なんならフィルターをかければキャラクターの顔にさえできる。食事を共にしないのならば、ノーリップ、ノーチークの死人のような顔色であろうとマスクで隠すことができる。それでも、鏡の中の自分を好きでいたいから、たまに触れたとき自分の肌に癒やされたいから、毎晩パックもするし見せることのない口紅を引く。
目の前の人はきっと私の肌が過去最高に調子がよくつるつるもっちりなのも、アイシャドウに合わせた最新色のリップグロスを使っていることも、マスクの端から見えるほのかなチークで表情が優しく見えていることも知らない。ただ自分の好きな自分でいるために、今日も今日とて鏡の前で奮闘し、納得いくメイクを施した私は最強だ。夏の暑さにも、大切な人に会えない日々にだって、負けるものか。
“美容が人に見せるためだけのものなら、きっとこうはならなかった。ただ自分の好きな自分でいるために、今日も今日とて鏡の前で奮闘する。”
背景写真/shutterstock 文/宇垣美里
Edited by 飯島 亜未
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