連載 VOCE特別インタビュー

『プリキュア』が脚本家としての分岐点に。女児向けアニメ新作『ワッチャプリマジ!』にこめる思い

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ワッチャプリマジ

『コウノドリ』や『おじさんはカワイイものがお好き。』などの人気ドラマだけでなく、『HUGっと!プリキュア!』など、アニメ作品の脚本も手がけてきた坪田文さんの特別寄稿。こめられたメッセージを知れば、作品だけでなく、社会の見え方がちょっと変わるはず!? 第3回目は、10月からの放映が発表されたばかりの『ワッチャプリマジ!』について。

女児向けアニメを大人に薦める理由

長期アニメシリーズは、色々と大変な事や制約も多いのでやり終わると「2度と出来ないっす」と燃え尽きてしまうのですが、それでも……声がかかると「やりたいです!」とチャレンジしたくなる。不思議な魅力があります。

10月から放送開始のアニメ『ワッチャプリマジ!』(以下、プリマジ)でシリーズ構成(脚本チームのリーダー的な役割)を担当することになりました。ジャンルは、いわゆる女の子の夢と希望でキラキラの女児向けアニメです。「子供が観る物でしょ?」「大人は楽しめないでしょ?」と思ってらっしゃる方に! いつの間にかハマってしまう女児アニメ沼の魅力をお話しします。

ワッチャプリマジ
(c)T−ARTS / syn Sophia / テレビ東京 / PM製作委員会

今作は、夢に向かって本気で頑張る女の子・陽比野(ひびの)まつりが主人公。魔法の力もミックスさせ、おしゃれとちょっとのラブもあるキラッキラのアニメです。

ここまで読んで「うん! 私に、関係なし!」とページを閉じかけたあなた、少しだけ待ってください! 年齢も性別も関係なく、キラキラしたものに惹かれる「女児心」は皆の心にあるはず!!……というのが、私の持論です。

心は、“成長していくもの”ですが、それは“老けること”とは違う。年齢を重ねていくことで、心に日々満ちていくものがあるだけだと思うのです。しかし、大人になり様々な事情があり疲弊していく事が増えていく……。(私の場合は主に労働によりHPとMP(編集部注:ヒットポイントとマジックポイント≒体力と発想力・創造力)が削られます。働きたくないでござる!

そんな時に、女児向けアニメは効く……!!

『プリキュア』で得た体感がターニングポイントに

私が、その沼にハマったのは大学院生の時。修士論文を書かなくてはならなかったあの頃……。何事も早く取り組んでいたら終わるのに、いつもの癖でダラダラと日々を消耗。しかしながら、迫る締め切り、真っ白なWordの画面。一人でコツコツと書けばいいのに、監視されながら書こうと思いつき、現実逃避の為に友人宅へ。

もちろん1行も書きませんでした。

朝まで皆でお酒を飲んで、二日酔いの頭で水を飲もうとキッチンに向かったら、そこに友人の父親がいてTVを観ていた。で、私も水を飲みながらぼんやりとテレビ画面を見つめました……それが『プリキュア5』でした。世代がズレてるのでそれまでまったく縁が無かったプリキュア。キャラも、ストーリーも、全くわからない状態。でも、画面の中で懸命に仲間を信じ、自分を惑わす悪の組織に立ち向かっていく一人の女の子。彼女の真っ直ぐで、きらめいた瞳を見つめているうちにあっという間に30分は過ぎていき。エンディングへ……。

その時、思ったんです。「修論、書こう」

「書けなきゃ書けないでなんとかなるっしょ!」的な思考回路に私は陥りがちなのですが、懸命に頑張るプリキュアを見てそれじゃダメだと思ったのです。絶体絶命のピンチでも、未来を信じて、真っ直ぐ戦えば!!
※ちなみに、この時訪ねた友人が現在、夫です。つまり私が泣きながらプリキュアを見ていたのを優しく見守ってくれていたのは、今の義父です。

そこから、担当教授が「やっと心を入れ替えてくれた」と喜ぶスピードで無事に卒論を書き上げ、無事に卒業することができました。ありがとう、プリキュア。ありがとう、夢原のぞみさん。

この体験は、私の人生の中では大きなターニングポイントとなりました。

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少女が見せる“真っ直ぐな覚悟”に魅せられて

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