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夫(上出遼平氏)は脳梗塞のことを一切聞いてこなかった
――夫であるテレビ東京のプロデューサー、上出遼平さんとは、お互いにどのような影響を与えあっていると思いますか?
夫は私より10歳下で、夢や目標は持たないでおこうみたいな考え方をする“さとり世代”なんですね。私の世代は受験戦争真っ只中でしたし、まだバブルの名残りを感じられるようなところもあって。頑張れば頑張るほど報われるんじゃないかという考え方をする私たちの世代とはギャップがあると思うのですが、脳梗塞の後に思考が変化していた部分があったので、タイミング的に彼の話がちょうど腑に落ちたんです。以前の私の考え方だったらお互いに受け入れられなくてケンカになっていたと思いますし、たぶん結婚していない(笑)。夢はある? と聞いても「夢とかないもん。でもなんか『ハッピーハッピーせんべい』ってせんべい屋さんやりたい」とかわけのわからないことを言うんですよ。昔の私だったらとても許容できなかったんですけど、そういう生き方もあるんだ〜、みたいに受け止めるようになっていて(笑)。“こうするべき”とか“こうあらねば”みたいな固定観念がなくなったタイミングで出会えたことが、よかったのかなと思っています。
――一緒にいると楽だな、という感じですか?
そうですね。脳梗塞の後に出社したときに、みなさんが神妙な面持ちで「大丈夫?」って言ってくださったんです。心配してくださっていることはよくわかるのですが、会話がすべてそのことばかりで、社会復帰したつもりでいた私はちょっと気落ちしてしまって。その度に患者である自分を思い出してしまったのですが、上出は私に一切病気のことを聞いてこなかったんです。全然違う話をしてきて、本当にニュートラルに人と接するんだな、一緒にいると楽だなと感じました。本人が意識しているのかどうかわからないけれど、彼が作った番組『ハイパー ハードボイルド グルメリポート』を観て、どんな職業の人にもラベルを貼らずに接しているからみんなが心を開いて、こういう番組が作れるんだろうなと思いましたね。
――上出さんにも、結婚によっていい影響があったのではないでしょうか。
(このインタビューの事前に)いただいた想定質問を見ながら、「私と結婚して何かいい影響あった?」と聞いたら、「ポジティブパワー!」って言ってました。それ以上は面倒くさいからもう聞かなかったんですけど(笑)。彼はものの見方が多様で、“奥さんはこうあるべき、女性はこうあるべき、この年齢だったらこうあるべき”……みたいなことがまったくない。カテゴライズされないから、家庭でも自由を感じることができています。年齢差があるよねと言われることもあるんですけど、お互いに年齢を軸に行動していないので、自分たちは気にしたことがないです。
今日の服は古着屋で買った!
――最初に同性からのモテを意識していた頃のお話をうかがいました。現在はどのようにファッションを楽しんでいますか?
今日の服は古着屋で買ったものなんです。ブティックとかで売ってそうですよね(笑)。社会人になってからは自分が好きな服を着るようになったんですけど、よく後輩にも言われてたんです。「未歩さん、その格好どうしたんですか!?」 って(笑)。でも自分がほしい、着ていて楽しいって思えることがすべてで、今はモテに対する意識はゼロです。局アナ時代は自分のやりたいこと=番組を盛り上げることだったので、露出が多い衣装を着ることも自分なりの貢献のつもりでした。貢献できていたかどうかはさておき、自分ができることをやれたら、という気持ちだったんです。今は自分で自分の責任をとるフリーランスの立場にいるので、仕事でも素直に自分が着たいと思うものをチョイスしています。インスタでもたまに「昔の方がよかった」っていうコメントをいただくこともあるんですけど、その一方で「イヤリング、すごくかわいいと思いました!」と言ってくださるフォロワーさんもいて。やっぱりすべての方に好かれようなんて傲慢だと思うので、自分が好きなものを着てもしも共感してくださる方がいたら、その方とちょっと心を通わせられたらいいな、という気持ちでいます。
まつ毛のエクステも、最近とりました
――今日のアクセサリーもかわいいです!
アシンメトリーなものが大好きなんです。左右対称は二択という気がして苦しくなるんですけど、左右非対称というだけで広がりが出る気がして。今日のイヤリングとネックレスも、すごく気に入ってます。
――ヘアメイクに関してはいかがですか?
髪の毛はプロの方にお願いしてイメージ通りにやっていただいているんですけど、局アナ時代の名残りでメイクは自分でやっています。私、自分のバタくさい顔があんまり好きじゃないんです。小松菜奈さんのように、今っぽいおしゃれな顔の方に憧れがあります。自分の顔におしゃれ要素がないのは自覚しているのですが、太めの平行眉にしてみたりして、今っぽくするにはどうしたらいいんだろう……って模索中ですね。ただ年々メイクは薄くなっていて、まつ毛エクステも最近とりました。スティックファンデにパウダーファンデを重ねていましたが、今はパウダーファンデだけ。以前はアラを隠そうとしていたけれど、今はある程度自然な方がかっこいいと思うようになりました。あとはSPF50の下地とファンデを使い、日焼け対策は以前より気にしています。
――最近は“モテ”“愛され”といったワードから解放されている方も増えているかと思いますが、そういう価値観に縛られて悩んでいる女性にはどんな言葉をかけたいですか?
私にも経験があるように、限られた選択肢のなかで選ばされていると、人の目が気になりますよね。でも自分で選択肢をつくりに行ったり、何かをつかみに行ったりしたときに、自分を本気で好きになれると思うんです。私の場合は社会人になって自分でお金を稼げるようになってから、主体的に動けるようになりました。アナウンサーの仕事を始めて来年で20年になるんですけど、よく続いているなというより逆にこれしか続かなかったな、って。ちょっとでも私はこれが好きかも!って気になったものに出会ったら、飛びついてみてもいいんじゃないかなと思います。これは違ったなと思ってまた次に進んだら、そこに新しい出会いがあるかもしれない。……こんなことを言っちゃっていますけど、みなさんもうすでに頑張って生きてらっしゃると思うので、私から言えることはあまりないです。でももし周りからの“良い悪い”の評価が気になって迷ったときは、自分の“好き嫌い”に正直になってもいいかなと思いますね。
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大橋未歩
フリーアナウンサー。2002年テレビ東京に入社し、多くのレギュラー番組で活躍。2013年に脳梗塞を発症し、療養期間を経て同年9月復職。18年3月よりフリーに。現在、『5時に夢中!』(TOKYO MX)にアシスタントMCとしてレギュラー出演中。「東京2020パラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた鼎談会」メンバー、パラ応援大使に就任。パラ卓球アンバサダー、防災士としても活動。
撮影/塚田亮平 ヘア/根本秀子 取材・文/細谷美香
Edited by 渕 祐貴
公開日: