『VOCE読者に話しておきたいこと』
30代、ずっと焦っていました
女優としていろんなチャンスに恵まれましたが、自分の芝居がうまいなんて一度も思ったことはありませんでした。20代の後半、過労で入院したときにお医者様に言われました。「進んでやりたいと思う仕事だけをしなさい」。この言葉を胸に、文学座でお芝居を学んだり、NHKから独立したり、ニューヨークに留学したり……。でも今は、やって後悔したことは一つもありません。
何かを始めるのに、早すぎるとか遅すぎるなんてことはないんです
私の母がエッセイを書き始めたのは70歳過ぎ。デビュー作はヒットし、3年後にはNHKの朝ドラにもなりました。人生、何が起こるかわかりません(笑)。聖路加国際病院名誉院長の日野原重明先生は、「100歳まで生きたかったら、今日から新しいことを始めること」とおっしゃっていました。先生は95歳からゴルフを始めたそうです。
努力してきれいになっている人が、素敵だと思う
女優の沢村貞子さんが生前、50年ぶりに女子大の同窓会に出かけていらして、「人間、50年も経つと昔きれいだった人がみんなきれいじゃなくなってる! 今きれいな人は、仕事を続けている人か、夫を亡くして前向きに生きてる人のどっちかよ」って報告してくださったことがあります(笑)。そのとき、「大人のきれいは前向き次第」と気づきました。
─ 今回の審美言 ─
「求められることが大事。実力だけで、なんてことありません」
PROFILE
女優・ユニセフ親善大使
黒柳徹子さん
東京・乃木坂生まれ。俳優、司会者、エッセイスト。東京音楽大学声楽科卒業後、NHK専属のテレビ女優第1号として活躍。1976年にスタートした「徹子の部屋」の放送は1万2000回を超え、同一司会者によるトーク番組の最多放送でギネス世界記録を更新中。1981年に刊行された『窓ぎわのトットちゃん』は国内で800万部、世界で2500万部を超える空前のベストセラーに。昨年刊行された『続 窓ぎわのトットちゃん』も日本で50万部の、ベストセラーとなり、今年5月には中国語版も刊行された。1984年よりユニセフ親善大使となり、のべ39ヵ国を訪問。飢餓、戦争、病気などで苦しむ子どもたちを支える活動を続けている。
黒柳さんのライフワークでもある舞台「ハロルドとモード」が今年も上演されます。1971年にアメリカで公開された同タイトルの映画を舞台化した本作は、年齢差のあるちょっと変わった二人のラブストーリーと、生きることの楽しさをコメディータッチに描いた作品。主役のモード役に黒柳徹子、注目のハロルド役はtimeleszの松島聡が演じ、さらに深川麻衣、山崎樹範、平田満、板谷由夏といった豪華キャストが揃います。東京公演9月26日~10月10日EXシアター六本木、大阪公演10月17日~10月21日森ノ宮ピロティホール。
公式サイト:https://haroldandmaude.jp/
撮影/下村一喜 ヘア/松田コウイチ メイク/MAHIRO スタイリング/大野美智子 取材・文/菊地陽子
Edited by 新井 美穂子
公開日: