教えてくれたのは……
TOKYO BREATH CLINIC
上田恵子院長
日本口臭学会認定医。2002年に開業した「新浦安デンタルクリニック」では、口臭症治療の分野で2011年より5年連続全国1位の実績を上げ、2017年に銀座に女性のための口臭症専門クリニック「東京ブレスクリニック」を開業。全国各地から訪れる患者一人ひとりと真摯に向き合い、治療実績の高さに定評がある。雑誌やWEBなどでの記事監修も多数。
起床時の口の中には、大便10g分の細菌がうじゃうじゃ!
上田恵子院長
一日の中で、口の中の細菌がもっとも多いのは寝起きのタイミング。寝ている間は、口内の動きが停止するため唾液が循環しづらく、温室のような環境になっています。一つの細菌が、寝て3時間後には約1億個に増えてしまうともいわれていて、寝起きの細菌は大便10g分ほどに相当する量。細菌が繁殖し放題で、飽和状態です。たとえ、寝る前にキレイに磨いたとしても、どんなに健康なお口でも、細菌は確実に増えるので、誰でも口臭が起こります。菌はキスをすると移ってしまうし、寝起きにキスをするというのはドラマや映画の世界の話。学問的にはありえないので、してはいけません(笑)。
そもそも、なぜにおう? 口臭のカギを握っているのは唾液だった!
上田恵子院長
口臭は、細菌が唾液や粘膜、食べカスなどをタンパク源にして分解する過程で発生し、最終的には『揮発性硫化物(きはつせいりゅうかぶつ)』と呼ばれるガスとなって口から出てきます。いわゆる“ドブっぽい”と言われる、硫黄臭さを放つガスです。歯周病や内臓疾患といった病気由来の口臭、ニンニクやアルコール、強い薬などが原因となる口臭もありますが、日常の口臭の多くは生理的口臭として揮発性硫化物というガスが口から出てくると言っていいでしょう。そして、この“揮発性”というのは、液体が蒸発していることを指します。つまり口内の液体である唾液が蒸発して、ニオイを発している可能性が高いということ。唾液の量が少なかったり、ネバついて汚かったりすると、口臭は必ず起こります。舌の動きが止まると唾液の循環も停止するため、何時間も寝た後にニオイが出るのは当然ということです。
「寝起きの口臭対策」は朝イチのうがい&歯磨き一択!
上田恵子院長
とにかく起床時は、飽和状態の細菌を飲み込んではいけません。まず、ぶくぶくうがいをして細菌を外に吐き出し、丁寧に歯を磨きましょう。夜、寝る前にもきちんと菌を取っておくことが大前提ですが、それでも就寝中に菌は繁殖するので、何はともあれ朝イチに菌を出す。そこから水を一杯飲んで口の中をうるおわせてから、朝ご飯を食べる。朝食後は、フロスや歯間ブラシなどで食べカスを取り、水でゆすぐぐらいが◎。食後は、口の中がよく動いて良質な唾液が出ているタイミングなので、ブラッシングや歯磨き粉で取ってしまわないほうがいいですよ。
「日中の口臭対策」は“サラサラ唾液”にこだわるべし!
朝の口臭がヤバいということはわかったけれど、人と接する機会が多い日中も何かとニオイが気になってしまうもの。どういう意識を持つのが正解?
上田恵子院長
ネバネバとした汚い唾液が蒸発して嫌なニオイを発するわけですから、唾液をサラサラにしてあげればいいんです。口臭が気になると歯や舌を磨く人がとても多いですが、歯や舌といった組織そのものからニオイが出ているわけではなく、どちらも唾液で覆われており、その唾液がにおうのが原因です。
なので、いかにキレイでサラサラとした唾液を循環させるかが、口臭対策の要に。とはいえ、『唾液を出さなきゃ!』と焦ってしまうのは逆効果。唾液の分泌は自律神経が支配していて、交感神経が優位になると口の中は乾いて唾液はネバつきます。ストレスや緊張を感じたときににおうのも、そういう理由からです。
サラサラ唾液を生むために、すぐできること3か条!
【その1】水を飲んでネバついた唾液を薄める
上田恵子院長
日中の口臭対策にもっとも効果的なのが、お水を飲むこと。口内の乾燥をやわらげて、ネバついた唾液をサラサラにしてくれます。料理と同じで、濃くなったら薄めればいいんです。お茶は、飲み過ぎるとかえってうるおす力が低下してしまうこともあるので、お水がベストです。
【その2】表情をゆるめてリラックスする
上田恵子院長
険しい表情で一つのことに集中していたり、奥歯をギュッと噛み締めていたりすると、唾液の循環が止まって口臭が慢性化されやすくなります。特に下向き作業を続けていると、ノドの奥から圧迫されたニオイが出てしまうことも。なので、気づいたら正面を向いて表情をゆるめ、顔もお口もリラックス。また、食べたり話したりしているときは、サラサラ唾液が勝手に出てきます。友達や同僚とおしゃべりを楽しむということも、実は口臭対策に有効なんですよ。
【その3】“ら”と唱えて唾液の分泌を促す
上田恵子院長
サラサラ唾液を循環させるには、口内の動きを止めないことが大切。“ら”と言うと舌が自然と丸まってくれるので、心の中で“ら、ら、ら、”と唱えながら舌を動かしてみましょう。また、舌を動かしていると換気扇のような役割を果たしてくれるので、ニオイが口内にこもりにくくなります。口を動かすにはガムを噛んでもいいですが、やわらかくて甘いお菓子タイプではなく、硬めの機能性ガムを選びましょう。
関連記事
イラスト/腹肉ツヤ子 取材・文/橋場鈴里
Edited by 西村 美名子
公開日: