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教えてくれたのは……
TOKYO BREATH CLINIC
上田恵子院長
日本口臭学会認定医。2002年に開業した「新浦安デンタルクリニック」では、口臭症治療の分野で2011年より5年連続全国1位の実績を上げ、2017年に銀座に女性のための口臭症専門クリニック「東京ブレスクリニック」を開業。全国各地から訪れる患者一人ひとりと真摯に向き合い、治療実績の高さに定評がある。雑誌やWEBなどでの記事監修も多数。
【勘違い口臭ケア】やりがちだけど効果は薄い4選
上田先生いわく、「日本人は息のマナーレベルが低い」。それって、あまり意味のないお手入れに注力していたり、ケアしているつもりが実は口臭を悪化させていたりすることにも原因があるかもしれません。目からウロコな“あるある”勘違いをご紹介!
<1>口臭が気になったら歯を磨く
上田恵子院長
患者さんなどに『口臭が気になったときに何をしますか?』と質問したとき、『歯を磨く』と答える人がほとんど。そもそも歯磨きの目的は、虫歯や歯周病などの病気予防ですが、口臭の原因が歯にある、だから歯を磨くと思っている人は本当に多いです。でも、歯は実際にはカチンコチンの塊で、歯科医がダイヤモンドを使って削るほど硬い。カチンコチンの塊である歯そのものから、ニオイが出ることはありません。歯の表面は唾液で覆われていて、口臭が出るときは唾液がネバついてニオっている可能性が高い。水でゆすぐか、水を飲むなどして、唾液を薄めるのがいいでしょう。
<2>口臭対策にスッキリ系の歯磨き粉を使う
上田恵子院長
爽快感があってスッキリする、泡立ちのいい歯磨き粉が大好き、という人も多いのではないでしょうか。ただ、舌の表面には『舌乳頭(ぜつにゅうとう)』という突起状のものがたくさん付いていて、泡の成分である合成界面活性剤はそれを剥がしてしまう可能性があります。その結果、舌の表面や口内がガサガサに乾燥することも。口の中が乾くとニオイが悪化しやすくなるので、うるおいを守るという意味でも、泡立たず保湿成分配合の歯磨き粉がおすすめです。花粉症などを患っていて、粘膜系がデリケートな人は特に要注意。成分が刺激になり、口内の粘膜がより剥がれやすくなってしまいます。
先生のクリニックで扱っているのはこれ!
<3>「舌磨き」を一生懸命行う
上田恵子院長
舌は粘膜であり、皮膚よりもさらに繊細です。口内は神経分布が少なく痛みを感じにくいため、舌もゴシゴシとこすることができてしまいますが、必死に磨くほど舌を傷つけてしまいます。“舌が白い=すべて汚れ”だと思っていませんか? 健康な人は本来、舌がうっすら白いもの。真っ赤な状態はキレイなのではなく、舌表面の突起物である『舌乳頭』が剥がれ落ちて、ドライマウスを引き起こしている状態です。
通常、舌表面のデコボコのへこみ部分には唾液が溜まっています。舌磨きをやり過ぎると、この唾液を溜めるスポットも取り除いてしまうので、舌表面が乾燥します。そして乾くと防御反応で舌乳頭が毛羽立って、分厚く白くなるという悪循環に。肌と同じで、角化してガサガサになるイメージです。口の中が乾燥するほど、より口臭を発してしまうので、根本から解決しないとキリがない。うるおいを保つためにも、唾液をきちんと分泌できることが重要です。
舌に付着する細菌のかたまり“舌苔(ぜったい)”を頑張って取り除こうとするよりも、まずは口腔内のうるおいを守ること! 唾液がきちんと分泌されていれば口臭対策にもなるので「正しい口臭ケア」をチェックして。
<4>食後すぐに歯を磨く
上田恵子院長
これを正しい習慣ととらえている人も多いと思いますが、歯磨きは起床後と寝る前だけにして、食事直後はフロスや歯間ブラシで食べカスを取って水でゆすぐだけで十分。実は、一日の中で口の中の細菌がもっとも少ないのは食後なんです。食事をすると舌を動かすのでサラサラとした良質な唾液が分泌されやすく、口内がうるおった状態に。口臭が出にくいのは、良質なサラサラ唾液が口内で循環しているとき。なので、これを歯磨きで取り除いてしまうのはもったいないんです。また、歯磨き粉を使ってゴシゴシこすると口内が乾燥しやすくなり、口臭を招く原因にも。ブラッシング後は嫌なニオイのもととなるガスがかえって増えるという、日本口臭学会の報告もあるほどです。
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口臭の基本知識を解説