好きな自分になりたかった。自分を諦めなくて良かった
川村さんの人間としての最大の魅力は、何度も言うようにその真っ直ぐさにある。そのブレない軸となる性格は、いったい何がきっかけで形成されたのだろうか。
「それはきっと……経験、ですね。多分、人とは違う経験をしてきたからかもしれないです。苦しんだ数が違うというか。もちろん、誰もが悩んだり苦しんだ経験をしていることもわかっているけれど、自分の中では、それくらい大きく影響している出来事なんです。よく人から、なんか闇を抱えていそうとか、近寄りがたい感じって言われるんですけど、きっとそういう過去があるからだろうなって自覚していて。
でも、そう思えるだけ良かったなって思ってます。ひねくれた時期もあったけど俯瞰できる自分がいるからこそ、その時期を過去にできたんだろうなって。経験とは違うけれど、たくさんのコンプレックスとも向き合ってきて、で、今があって。今は毎日すごい充実しているし、仕事にも人にも恵まれていて、本当に大阪でくすぶってたままだったらどうなってたんやろ、って思いますけどね」
静かに語り始めたこの話に驚きを感じるほど、撮影現場で見せる空気や表情は常に穏やかで、柔らかい。
「今の自分とは全然違う頃があったんですよね。でも、そのときの自分が嫌いで良かった。だからこそ変わろうとしたし、今がある。自分のことを真っ直ぐな人って言ってもらっているけど、ただ、好きな自分になりたかっただけなんです。それはたとえば、好きなマンガに出てくるめちゃくちゃいいヤツとか、カッコよくて優しいヤツだったりとかですね。
特に『NARUTO -ナルト-』にはかなり影響を受けていて、後にラップのリリックにも入れた『賢いってのがそういうことなら、オレは一生バカでいい』っていうセリフがあるんですよ。これは胸に刻んでいる言葉でもあって、別にバカ正直でいいし、正直者がバカを見る世の中を変えてやる、バカを見るのはおかしいって俺は唱え続けたいんです」
そう、熱く語る川村さんから、意外な言葉が続いた。
「極論、平和な世界になったら、表舞台から自分は必要なくなるんじゃないかな?と思っているんです。というのも、自分が志しているのはアーティストとして売れるとかヒットを出すことはもちろんですが、そのもっと先。より良い、正しい世の中になるための活動をしたいんです。立場的に声を届けやすい場所にいるからこそ、歌だけでなく、自分を通じて人々が争わず、認め合えるようなマインドも伝えていきたい。今すぐにではなくても、生きている間に叶わなくても、いつか芽が出てくれることを願って種をまいておけるから。そのためのアーティスト活動だって、僕自身は思っています。
なんか大げさなことを言っているかもしれないけど、こう思うようになった根底は、おそらく自分が幸せになりたかったからなんですけどね。でも、それを今、自分の枠から出して世界に向けて伝えたい。だからこそ、真っ直ぐな人たちが集まっている、人間性に惚れてLDHを選んだことにも繋がっているんです。ここなら、何か変えられるかもしれないって。だから、この今いる場所を借りて、これからも理想の世界を目指して発信し続けていきます!」
さまざまな感情をエネルギーに変え、これから先も川村さんはパフォーマンスを通じ、熱い想いを発信し続けていく。やっぱり彼は、現代のスーパーヒーローなのだ。
撮影/吉田崇 ヘアメイク/oya(KIND) スタイリング/庄将司 取材・文/森山和子
Edited by 松本 薫
公開日: