目次
教えてくれたのは……
一般社団法人日本リカバリー協会代表理事・医学博士
片野秀樹先生
休むことの大切さを訴えている一般社団法人日本リカバリー協会代表理事。 博慈会老人病研究所客員研究員、医学博士。近著『休養学: あなたを疲れから救う』(東洋経済新報社)が大好評。
現代人は、「疲労負債」の負のスパイラル状態に陥っている?
片野秀樹先生
日本ではゆっくり休むことをなまけていると捉える考えがしみついています。けれど、疲労を抱えていては、身体活動能力が低下するため、普段通りのパフォーマンス(能力)を発揮することができません。休むことが罪なのではなく、むしろ、そういったパフォーマンスを発揮できないコンディションでその場にいることのほうが罪悪なのではないかと感じます。
私たちの生活は、活動(仕事や勉強、運動)→疲労→休養サイクルになっています。休養時に“充電”ができていない状態で活動すると、さらに“充電”を消耗する「疲労負債」の負のスパイラル状態に。パフォーマンスが低い状態でも働くことに意義がある、そんな考えを捨て、休養を取り、万全の状態で挑むことが正解!
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【休む=悪】じゃない!疲労の正体と“疲労負債”を解決する【活力貯金】
活力を増進する“攻めの休養”の取り方とは?
片野秀樹先生
「リジェネレーションサイクル」は、自分自身が持つ活力を知り、どれだけ追加する必要があり、それをどう補っていくかというセルフケアであり、セルフマネジメントです。“活力貯金”のための休養には、いくつか方法があります。一般的に休息というと睡眠というイメージが強いと思いますが、それ以外の方法でもできます。まずは、日常の些細なことも休息になるということを知ってほしい。それらをうまく組み合わせることで、多くの休息を得ることができるので、ぜひ試してみてください。
生理的休養
休息型
寝る、座って休むなど、あまり動かずに心身を鎮静化する。
運動型
散歩、柔軟体操などの軽い運動をして体内にフレッシュな酸素を取り込むことで血流を促し、老廃物を排出することや新陳代謝をアップする。
栄養型
腹八分目にする、ファスティングを取り入れる、胃腸を温めるといった方法で、疲れた消化器系を休ませたり、癒やしたりする。
心理的休養
親交型
休憩中に同僚と話をする、近所の人と立ち話をするなど、人と触れ合う行動。人以外にもペットに触れる、自然の中に行く、社会と交流するなど、なにかと交わること全般。
娯楽型
映画を観る、本を読む、ゲームをするなど、好きなことや趣味を楽しむ。(ただし、やりすぎは疲労の原因になるのでほどほどに!)
造形・創造型
ものづくりをする。頭の中でつくり出すことを想像する、心地よいことを妄想するだけでもよい。人の悩みやストレスのもとになる過去と未来のことを考えず、現在に集中できればOK。
社会的休養
転換型
環境を変える。旅行に行く、引っ越す、模様替えをする、机のまわりの整理をする、服やメイクを変えるなど。
片野秀樹先生
これらの休養は、複合的に合わさるほど、“活力貯金”になります。たとえば、スープを飲むとひとつの行動ですが、やり方によっては下記のように複合的な休養に“昇格”させることができます。
・人にレシピを教えてもらう【親交型】
・スープをつくる【娯楽型・創造型】
・温かいスープで胃腸を温め、癒やす【栄養型】
・スープジャーに入れて出かけた先で飲む【転換型】
このようにいろいろなタイプの休養を上手に組み合わせるのが得策。どのような手段で活力を養い、パフォーマンスを維持するか……そんな考えを持って生活ができるようになると、疲労感から解放される日も近づくでしょう。
“活力貯金”できている? 自分に合う休養の方法を知るためのコツ
片野秀樹先生
自分自身に合う休養のタイプや活力がきちんと養われているかを知る術としては、メモを取ることがおすすめ。先ほどあげた休養タイプ7つのうち、やったことを記録し、あわせて翌朝、体調も書き留める。それを続けていくうちに、なにをした日にコンディションがよくなるのかというルーティーンが明確になってきます。
終業後~翌日の始業時までの自分時間をマネジメントする
片野秀樹先生
仕事が終わったあとから翌日の始業時刻までの時間(勤務間インターバル)をなんとなくやりすごしていませんか? ダラダラと過ごすうちに、やりたいこともできず、睡眠時間も減っていた……というストレスは疲労の原因になります。まず、勤務間インターバルの時間から自分がよいコンディションを保つための睡眠時間を引き、残りの時間をどのように使い、休養にどう時間を割くかを考えてみてください。おのずと、「ここまでに終えなければ」という終業時刻が見えてくるので、勤務中、業務の効率化を考えるようになるなど、自身のマネジメントをする上でのメリットがあります。
“活力充電タイム”の土日を一週間の始まりと考える思考の転換を!
片野秀樹先生
私はよく土日を一週間のスタートだと考えてくださいと伝えています。仕事のはじまりが月曜と設定すると金曜にはヘトヘトに疲れていて、大きな「疲労負債」を抱え込んで週末に突入します。そして、なんとかゼロベースに戻ったくらいの状態で新たな一週間が始まれば、翌週にいいパフォーマンスを発揮するのは難しくなります。一方、土日に翌週考えられる疲労の量を考え、それに見合った活力を貯金した万全の状態で1週間をスタートできれば、違いは明らかです。週中に疲労を感じてきたら早く帰宅するなど、冷静な判断ができるようになると、なおさらよい状態が保てるようになります。
まずは、自分の疲労感の度合いを知り、どれだけ活力貯金をできるか、が勝負の決め手。特別なことをしなくても、いつもやっている雑談を増やす(親交型)や料理を楽しむ(造形・創造型)など、気持ちの持ちようで、それが活力につながるというのは、忙しい人にもできそうなので、うれしい限り。それに、暇つぶしと言われがちなドラマ鑑賞やゲーム(娯楽型)も“活力貯金”だと思うと、充実感がアップすることは間違いなし。
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イラスト/二階堂ちはる 取材・文/金子優子 構成/剱持百香
Edited by 剱持 百香
公開日: