連載 齋藤薫の美容自身stage2

世界で一番“やる気”がないのは、今、日本人?だから、今すぐ“やる気”を生む、たった一つの方法

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世界で一番“やる気”がないのは、今、日本人?だから、今すぐ“やる気”を生む、たった一つの方法

人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。今月のテーマは「世界で一番“やる気”がないのは、今、日本人? だから、今すぐ“やる気”を生む、たった一つの方法」。

いつの間にか意欲のない人になっている人に聞いてほしい

世界と比べて日本はどうなのか? そんなデータで凹むことが少なくない。女性の地位が低い。自分に自信がない。自己評価が低い。睡眠時間が世界一少ない。座っている時間が世界一多い。「何だか日本人って……」と暗澹たる気持ちになるけれど、もっとも驚き、非常にマズイと思ったのが、実はこのデータ。

日本人は世界中で一番やる気がない?

アメリカの調査会社が引き出した結果が今、物議をかもしている。それは、“日本人のやる気”が125ヵ国中、最下位だったこと。そんなバカな、と耳を疑った。日本人はおそらく世界一きちんと真面目に仕事をしている、そう思っていただけに、信じられない結果。いや、真面目なのと、やる気があるのとは別の概念。ましてや「あなたは熱意あふれる従業員ですか?」という質問では、熱意、あふれる、というちょっと強い言葉に多くの日本人はたじろいだはず。あなたなら何と答えただろう。きっと匿名でないならイエスと答える人もいるはずなのに、イエスはたったの5%! これ相当に問題だ。

確かに昨今はこんな声をよく耳にする。基本的にプライベート優先で、最低限の仕事や、与えられた仕事しかしない。ちょっと注意すれば、ふてくされ、あっという間にやめてしまう。そういう社員が増えていると。10年前頃はまだ多くの人がやる気だったはずだけれど、今の日本に意欲のなさが蔓延し始めているのは間違いなさそうだ。

一方で、日本は先進国では明らかに低賃金であるうえに、給料が全然上がらないこともデータはしっかり伝えている。平均年収でいえば、1000万円を優に超えてくる世界トップクラスのアメリカと比べると、日本はその半分、韓国より100万円も年収が低いことがわかっている。

そういう現実があると、本当にやる気をなくす。こんなに忙しいのに何で?と納得がいかないし、政治家の裏金問題や、国会中継での居眠りなど見せられたら、やってられないと思って当然なのだ。加えて言うなら、うだつの上がらない上司を見ていて、将来に希望が持てずにやる気をなくす人も多々。そのせいか、正社員になりたい人も減っている。一体どうしたものか?

いやいや、推し活には100%以上の情熱をかけて生きているから大丈夫。他にやることはいっぱいあるし、それで充分楽しいし、だから仕事のやる気なんて、小指の先ほども持てないのよという人が、今や少なくないのだろう。

ただ、このまま、やる気のないままで生きていて本当によいのだろうか。ちょっと考えてみてほしい。これからの私たち、本当に100歳まで生きるとしたら、一般論としては定年後も多分ずっと働かなければならない。考えたくないけれども、今の流れから言って年金だけでは食べていけない人も少なくないはずで、大なり小なり70代、80代まで働かなければいけない未来が待っているとしたらどうだろう。

そうした将来への大きすぎる不安を解消できるものがあるとすれば、それって“やる気”だけなのではないか。働くことに対する基本的なやる気、それがあるとないとでは、未来予想図がまったく違ってくるはずで、「仕事をやめたい」「仕事に行くのが嫌で嫌で」が生涯続いてしまう。

だから今のうちに、“やる気”が生まれる鍵を知っておきたいのだ。ネットなどを覗くと、やる気を出すには“目標を明確にすること”なんて提案があるけれど、それができたら苦労はしない。そもそもモチベーションが上がらないなんてことにはならないはず。解決法はもっともっと些細なこと。ちょっとした違いなのだ。

どんな仕事にも共通する“気力の源”、何だかわかるだろうか。ズバリ、褒められること。多分これ以外にはないはずなのだ。もちろん生まれつき“やる気”のある人は、けなされようが笑われようが頑張ってしまうけれど、もともと“やる気”のない人の意欲を引き出すなら、もうそれしかないのである。

ドーパミンとオキシトシンを上手に操ると、仕事が大好きになる?

よく知られていることだが、人は褒められると、“脳の報酬系”とも呼ばれるシステムが活性化、幸せホルモン“ドーパミン”を放出して、ひたすら「気持ちいい」感覚に満たされるのだが、最近の研究では、それがまたさらにドーパミンを得たい、だから褒められたいという意欲のスイッチをオンして、素晴らしい“やる気スパイラル”を生むことがわかってきた。親が子どもを褒めて伸ばすのと同様、褒められれば褒められるほど伸びるという単純な仕組みがそこにあるのだ。

ただ褒められることばっかり考えていると当然のことながら嫌われる。上司だって、褒められたいがために仕事をしている部下を評価はしない。そこが難しいところで、褒められるのは結果であり、目的にしてはいけないのである。

じゃあどうするか。“褒められる”のはなかなかハードルが高いけれど、“感謝される”のはもう少し簡単。1週間に1回でもありがとうと感謝されれば、それだけでモチベーションが高まり、やる気につながるはずだから。

ただこれも、たとえば不意のお茶出しなど、時代遅れなうえにスタンドプレイのようなとってつけたようなものは、まったく逆効果。感謝の押し売り的な言動は全然喜ばれない。そうじゃなく、むしろ“先回りすること”が大切なのだ。どんな小さなことでもいい、相手がしてほしいことを先回りして済ませるクセをつけること。仕事ができると思われるのはもちろん、間違いなく感謝される。

単純な話、3枚のペラを手渡され、これを10部ずつコピーしてって言われたら、誰が考えても10人に配る資料なわけで、3枚ずつクリッピングして10セットつくる的なことを頼まれなくても先回りするのは当然のこと。それをクリアファイルに入れて手渡せば、「ありがとう」に「気が利くね」がたっぷり入ってくる。本当にちょっとしたこと、その積み重ねが、仕事のやりがいにつながり、どんどんやる気が出てくるのではないかと思うのだ。

ちなみに、職場環境として褒められることも感謝されることもないなら、自分から褒めたり感謝してみればいい。これもとってもよい方法。実は褒められてドーパミンが高まるのなら、逆に人を褒めると愛情系の幸せホルモン“オキシトシン”が分泌される。オキシトシンと言えば、昨年秋にリニューアルしたコスメデコルテのAQにもオキシトシンを引き出す働きがあることで、大いに話題になった。ってことは、人を褒めるとキレイになるということ? これも取ってつけたような褒め方をしても効果はないので、褒める時は心から。

で、なんと「ありがとう」と感謝した時にもオキシトシンが分泌される。人を褒め、人に感謝するのを心がけていれば、悪いことなど起こるはずはないのだ。単純に好感度が高くなり、信頼される存在に。結果として、褒めて感謝することがそのまま仕事のやりがいになったりするはずなのだ。

20代は職場に好きな人がいたから会社が大好きで、30代は褒められることがやりがいで、40代、50代は褒めることがやりがいになり、60代は感謝されることでまた意欲が生まれ、70代はいろんなことに感謝して仕事を続けて……だから仕事が嫌になったことが一度もないという先輩がいた。見事な仕事人生だと思う。

仕事=つまらない、仕事=やりたくない、最初からそう決めつけていれば、仕事なんて楽しいわけがない。もともと仕事自体はそんなにうれしいものじゃなく、だから仕事そのものではなくて仕事の周辺にくっついてくる感情、それで自分を高めるのだ。ドーパミンとオキシトシン、2つの重要ホルモンを操るように生きていけば、仕事が必ず好きになる。どんな仕事も好きになる。結局のところ、問題は仕事でなく自分自身。不満を生むのは仕事ではなく、いきなり何もかもつまらなくする自分自身なのだ。

そして、こうした仕事のやる気は、その人の幸福度と完全にシンクロしている。毎日行かなければならない仕事に、多少とも喜びがあれば、それはそっくり幸せにつながる。毎日の仕事が嫌な人ほど、その人の人生は全編不幸感が強い。いくら推し活が楽しくても、暮らしの基本は仕事。人生の3分の1以上は、仕事をしているのだ。通勤を含めればもっともっと。その時間を嫌々でなく不幸でもなく、多少ともウキウキできれば、その人の人生は丸ごと輝くはず。だから、やる気のクセ、今からつけておいて。絶対に人生が変わるから。

もともと仕事自体はそんなにうれしいものじゃなく、だから仕事そのものではなく仕事の周辺にくっついてくる感情、それで自分を高めるのだ。ドーパミンとオキシトシン、2つの重要ホルモンを操るように生きていけば、仕事が必ず好きになる。

撮影/戸田嘉昭 スタイリング/細田宏美 構成/寺田奈巳

Edited by 加茂 日咲子

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