割れてしまったお皿や茶碗を漆を使って修復し、金粉で装飾する日本独自の伝統技法“金継ぎ”。修復の過程がアートになり新たな価値を生むことで世界からも注目を集めています。
割れるアクシデントも“金継ぎチャンス”に!
何を隠そう、“金継ぎ”のことを知ったのは今日がはじめてだったんですけど、本当に素晴らしい伝統技法ですね。僕はもともと和の文化にとても興味があるので、金継ぎ教室の先生に室町時代から受け継がれている技法だということを教えていただいて、人知れず感動していました。
そして技法と同じくらい、その作業に込められた想いが素敵だなと思ったんです。これまで、いただいた器やちょっと思い切って購入した食器が割れたり欠けてしまったらすぐに諦めて捨ててしまっていました。そういう悲しい気持ちになるのが嫌だから、割れそうなものは買わないという選択をしてきたこともありました。でも、金継ぎをマスターすることでたとえ壊れてしまっても、新たな価値を吹き込むことができますよね。新品のとき以上に、修復の手を加えたことでより愛着が湧く気がしますし、シンプルに、物を大切に使い続けていくこと自体が素晴らしいことだと思います。たとえお手頃な価格のものでも思い入れが深いものはずっと持っていたかったりもしますし。そういう気持ちを抱きながら、サスティナブルをアートとして楽しめるところがすごく魅力的ですよね。もっと多くの人に親しんでもらえたらいいなと思いました。
作業はとても繊細。漆は直接肌に触れるとかぶれてしまうことがあるので、取り扱いには細心の注意が必要なこともあって、指先の動きにひたすら集中して黙々と工程を進めていきました。こういう静かな時間って、不思議と心のリフレッシュにも繋がるんですよね。さて、初体験にしてはうまくできたと思いますが、いかがでしょうか? そして、一度うまくできるとまた挑戦したくなるものですが、わざと何かを壊すのは間違っているので、日々の生活の中で“金継ぎチャンス”を待ち受けてみたいと思います。今までなら壊れる=悲しいだったけど、これからは「金継ぎで新しいアート作品が作れる」というポジティブな発想に転換できそう。今日のこの出合いに感謝しています。
「天然由来の接着剤“漆”をヘラで丁寧に練ります」
「手で湯呑みの表面に触れて欠けている部分を感じてみる」
「金継ぎしたい部分をやすりで手早く、優しく、削ります」
「練った漆を細筆にとって欠けている部分を埋めます」
「シルクの真綿で金粉を重ねてこんなふうに仕上がりました!」
「温度23℃、湿度77%の“漆風呂”で寝かせて完成待ち」
【PROFILE】
たなか・けい 1984年7月10日生まれ。東京都出身。俳優として映画、ドラマなどで話題作に次々と出演するほか、舞台、CMでも活躍。この春は舞台『Medicine メディスン』に出演する。5月6日(月)より東京・シアタートラムにて。6月より兵庫・愛知・静岡にてツアー公演も。
【INFORMATION】
今回行ったのは……
つぐつぐ 浅草店
本格的な教室やワークショップなどで金継ぎを体験できる。
住所:東京都台東区雷門1-1-2 1F
電話:03・5246・3476
営業時間:10:00〜18:00(木〜日)、10:00〜13:00(火)
定休日:月・水
撮影/川﨑一貴(Ajoite) ヘアメイク/岩根あやの スタイリング/伊里瑞稀 取材・文/石橋里奈
Edited by 松本 薫
公開日: