目次
お話をうかがったのは
肛門科医
佐々木みのり先生
大阪肛門科診療所副院長。元皮膚科医という異色の経歴を持ち、日本初の女医による肛門科女性外来を開設。便秘や痔に悩む数多くの女性を治療している。著書に『便秘の8割はおしりで事件が起きている!』(日東書院本社)ほか。
管理栄養士
望月理恵子さん
テレビ、雑誌ほか、さまざまなメディアで、健康、美容、ダイエットなどヘルシーな栄養情報の発信や、美と健康にいいおいしいレシピの考案をしている。著書に『やせる時間に食べてみた!』(主婦の友社)ほか多数。
同じ対処法じゃよくならない!! 便秘には2つのタイプがあった
便秘にはその原因によって2つのタイプがあり、それぞれ対処法が違うという。
「便秘には腸に便が停滞して起こる『お腹(大腸)の便秘』と、直腸や肛門に便がたまっている『出口(直腸・肛門)の便秘』があります。多くの人が便秘対策で行う腸活や下剤は、便をつくる大腸に原因があるお腹の便秘には効きますが、出口の便秘には効きません。便秘を解決するには、自分がどちらのタイプなのかを知って、それに合わせた対処が必要です」(佐々木先生)
【Type1】便をつくる大腸で起きている、お腹(大腸)の便秘
◆弛緩性便秘
腸のぜん動運動が弱く、便がゆっくりと移動するので便の水分が減って大きめのコロコロ便に。腸内に便やガスがたまり、お腹が張る。おならが臭くなることも。
◆けいれん性便秘
自律神経の乱れが原因で腸がけいれんして便を先へ送るぜん動運動が過剰になり、コロコロとした小さい便に。腹痛をともなうことも。ストレス性の便秘もこのタイプ。
特徴
- 食生活が乱れている
- 水分をあまり飲まない
- 過度なダイエットをしている
- ストレスを感じることが多い
- 運動不足
こちらの方があてはまる数が多い人は食生活で改善
腸内環境を整える菌と便の材料になる食物繊維をバランスよくとると同時に、生活リズムを見直して自律神経を整え、ぜん動運動を適正化しよう。
【Type2】便を押し出すお尻のトラブル、出口(直腸・肛門)の便秘
◆直腸性便秘
便を排泄する通路「出口(直腸・肛門)」で起こる便秘。トイレをガマンすることで便意が起こりにくくなり、排便したのに出口に便が残っているため、直腸や肛門の便を感知するセンサーが鈍くなり、便意を感じにくくなったり、スッキリ出し切れない状態に。
特徴
- 腸活をしているのに便秘
- 排便後にお尻をふくとペーパーに便がつく
- 臭いおならがよく出る
- 出始めの便が硬い
- 便意をガマンすることが多い
こちらの方があてはまる数が多い人は尻活で改善
腸活よりも前に、便の通り道である出口をカラにすることが先決。そこで出口にたまった便を出す行動=尻活を取り入れて、出口便秘を改善。
両方あてはまる人もいます!
佐々木先生
大腸に便がたまり直腸まで下りてこず、出口にも便がたまっている状態がお腹とお尻の両方が原因の二重便秘。毎日排便があっても便の量が少ない、残便感やお腹の張りがあれば二重便秘の疑いが。その場合は食生活の改善から始めましょう。
毎日の食べるものでいい便をつくって出す。お腹(大腸)の便秘は食生活で改善
「お腹の便秘」や「二重便秘」が疑われたら、まずは食生活の見直しから。基本の腸活のおさらいと、どうしても便秘が続いて困ったときは、SNSで話題の「梅流し」でお腹の便秘を改善!
食物繊維、腸にいい菌、油をバランスよくとる
お腹の便秘は、まず食生活の改善。では、何を食べるのが正解?
「便の材料になる食物繊維やぜん動運動の潤滑剤になる油が不足すすると便秘になります。一日の摂取カロリーの約25%の油や、2種類の食物繊維、腸内環境を整える菌を食生活に組み入れることが腸活の基本です」(望月さん)
食事のリズムも重要ポイント!
「体内時計のように腸にも時計があり、ほぼ同じ時間に食事をすることで腸が刺激され、ぜん動運動を促してくれます。朝食や夕食を抜くのは腸活の大敵です」(望月さん)
普段の食生活に取り入れよう! 便秘改善食のベストバランス
普段の食事で不足しがちなのが便の材料になる食物繊維。2種類の食物繊維をバランスよく取り入れつつ、腸にいい菌をプラス。加えて料理に油を上手に使えば腸にいい食生活に。
◆腸内環境を整える腸にいい菌
腸に直接働きかけたり、腸内細菌を増やしたりするのに働く腸にいい菌。食品からとれる主な菌は以下の3つ。たっぷりとろう!
【ビフィズス菌】
乳酸菌の100倍も腸内に棲んでいるといわれ、よい腸内環境には欠かせないビフィズス菌。ビフィズス菌の入ったヨーグルトでとるのが便利。
【乳酸菌】
キムチやチーズなどの発酵食品などに多く含まれる。腸内を酸性にして悪玉菌が棲みづらい環境にし、腸の働きを活性化してくれる。
【酪酸菌】
大腸粘膜の働きをサポートして腸内環境を整える。ぬか漬けなどの漬物に含まれる。酪酸菌のエサになる食物繊維をたっぷりとるのもおすすめ。
◆便の材料になる不溶性食物繊維
水に溶けない食物繊維で便のかさを増やしてぜん動運動を促す。ただしストレスによる便秘の場合とりすぎると便秘を助長することも。
ごぼうなどの根菜類や豆類、きのこ類、穀類など、嚙みごたえがあり、ぼそぼそ、ザラザラした食感。便のかさになる重要な要素。
◆便を軟らかくする水溶性食物繊維
水に溶ける食物繊維で便を軟らかくして出しやすくする働きがある。善玉菌のエサになり腸内環境を整えるサポートも。
わかめやこんぶなどの海藻類など、ねばねば、つるつるした食感が水溶性食物繊維の特徴。便の水分を増やしてスルリと出しやすくする。
より効果的に腸活をしたい人は?
オーダーメイドのグラノーラもおすすめ!
腸内フローラの検査結果を参考に、自分に合う菌を育てるグラノーラが選べて、毎月届く。
+αで取り入れて腸活に役立てる!
SNSで話題! 週に1回の腸デトックス【梅流し】
大根と梅をたっぷりの水分で煮た煮物が最強の便秘改善食として大人気。簡単レシピ&効かせるコツは?
材料(1食分)
- 大根 1/2本(250~300g)
- 梅干し 中2~3個
- 昆布(だし用) 15g
※だしの素を使う場合は大さじ1 - 水 1.5リットル
作り方
- 鍋に昆布と水を入れ、30分ほど浸しておく
- 鍋を火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出す
- 大根は1cmの厚さに切り、皮をむいて鍋へ入れる
- 大根が柔らかくなるまで中火~弱火で20分程度煮る
- 大根が煮えたら、種を取った梅干しをちぎって加え、5分ほど煮る
どうして便秘にいいの?
大根の食物繊維と水分、梅干しのクエン酸が腸に働く
望月さん
梅流しは一食置き換えや断食後の回復食として取り入れる食事法。大根に含まれる水分や食物繊維、梅干しに含まれるクエン酸が腸に働いて、スムーズな排便を促してくれます。
途中で飽きちゃうときは?
味変して最後まで食べて
望月さん
大根、梅干しを残さず食べ、煮汁もゆっくりとすべて飲むことが大事。量が多いので飽きる場合は、みそやキムチを加えて味変もOK。大根を角切りにして食べやすくしても。
いつ行えばいい?
空腹時が効果的
望月さん
食べすぎた日の調整食や慢性的な便秘なら週に1回程度を目安に行っても。夕食代わりや落ち着いてトイレに行ける休日の朝食にトライを。空腹時に行うほうがより効果的です。
腸のふたをとって便通りをよくする。出口(直腸・肛門)の便秘は尻活で改善
チェックテストで出口の便秘にあてはまった人は、出口にたまった便を外に出す習慣を身につける尻活を! 出口の便がなくなれば、毎日スルリと便が出てお腹スッキリ!
便意をガマンすると腸の出口にどんどん便がたまる!
お尻で問題が起きている「出口の便秘」。その大きな原因は?
「便意があるのにトイレをガマンするからです。便が直腸に下りてくると便意が起こり、肛門まわりの筋肉がゆるんで排出する準備が整います。これが排便反射。このときに軽くいきめばスルリと便を出すことができます。ところが何度も便意をガマンしていると、便をためることがクセになり、出口に出残り便があるのを感じない鈍感な直腸と肛門に」(佐々木先生)
そして出口に残った出残り便は直腸で水分が吸収されてカチカチに。
「硬くなった出残り便で出口渋滞が起こり、肛門付近に常に便がたまった状態です。毎日排便があっても、たまった便の一部が押し出されているだけのこともあります。排便後に肛門をふくたびにペーパーに便がつくなら、出口の便秘の可能性大なので要注意です」(佐々木先生)
尻活で出口の便秘を改善しよう。
【便の出口を開く】毎日やろう! 尻活メニュー
◆便意を感じたら即トイレ
便意を感じたらトイレへ行く習慣を。直腸と肛門の角度がまっすぐだと便が出やすいので上体を前に倒してひじをひざに置き、足裏を床につけて姿勢を安定させる。足裏がつかないなら足元に台を置く。
◆残便感があったら下腹部ゆすりを
トイレに行ってもなかなか出ない場合は、下腹部ゆすりを。便座に座って上体を少し前かがみに。両手の親指をおへその横にあてて両手で下腹部を包むようにつかんだら、上下にゆすって刺激する。
◆おなかもお尻も温める
お腹やお尻を温めることで血流がよくなり腸の働きが活発に。簡易カイロをお腹やお尻にあてたり、腹巻を活用するのも手。寝る前には40℃前後のお湯に浸かって体を温めて、肛門と腸の血流を促して。
◆軽い上下運動をする
階段の上り下りや縄跳びなど上下振動がある運動は、お腹=腸が上下に動いて腸の刺激となり便秘の改善効果が。阿波踊りの動きは前かがみの姿勢で腰をリズミカルに揺らすので出口の便秘に効果的。
【Cautian!】1回のいきみは10秒以内、温水洗浄は3秒以内
佐々木先生
いきむときは息を止めず、ゆっくり息を吐きながら。1回のいきみは10秒以内にして4~5回いきんでも出ないときは一度トイレから出て、便意が訪れるのを待つ。温水洗浄は肛門の肌荒れの原因になるので、使いたいなら一番弱い水圧で3秒以内にすること。
【Cautian!】薬を使うなら下剤より坐剤を!
佐々木先生
下剤は腸に働きかけてこれからつくる便に効きますが、すでに出来上がっている出口の便には効きません。お尻から入れる坐剤は出口の便にダイレクトに効くのでおすすめ。旅先での緊張による便秘にも便利。
坐剤は肛門に挿入すると体温で溶けて炭酸ガスが発生。直腸に働きかけ、おだやかな便意を促します。下剤作用のある『ビサコジル』入りの坐剤は避けましょう。
イラスト/ヤマサキミノリ 取材・文・構成/山本美和
Edited by 岡部 奈央子
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