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教えてくれたのは…
日本栄養精神医学研究会 会長・医療法人山口病院 副院長 栄養専門精神科医
奥平智之先生
「メンタルヘルスは食事から」をモットーに食事や栄養を重視した精神科診療に取り組む。鉄欠乏女子を「テケジョ」、栄養の問題に起因するうつ状態を「栄養型うつ」と命名し、「栄養精神医学」の大切さを啓発している。近著に『最新版 マンガでわかる ココロの不調回復 食べてうつぬけ(主婦の友社刊)』。
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気分のアップダウンが激しい、疲れやすい、眠れない=まずは食事を見直す
現代社会を生きる私たちがぶつかりやすい心の不調。気分がパッとしない、悩みやすい、いつもダルい、常にイライラしている、眠りにくい……そういったつらいコンディションと食事が実は深く関係しているのだとか。
「たんぱく質やビタミンB群、鉄……など、栄養が不足するとメンタル面の調子が悪くなり、うつ状態にもなりえるということを知らない方が多いと感じます。心の病気は、精神科で処方される薬で改善するケースも多いですが、表面化している症状を緩和する対症療法的な側面が大きいと思います。
根本治療のためには、環境的なストレス要因をなくすと同時に、ストレス耐性を高めることが重要です。ストレス耐性を高めるには、栄養状態の適正化が欠かせません。栄養の問題があっても、実際の診療現場で、見逃されていることが多い実情があります」と栄養専門精神科医の奥平智之先生。
そこで、メンタルヘルスと食事の関係についてくわしく解説してもらいます。
「メンタルヘルスは食事から」。栄養がプチ不調を解決するわけ
心を元気にするために必須な脳内ホルモンをスムーズにつくれる
栄養専門精神科医 奥平智之先生
幸せホルモンといわれるセロトニンのほか、睡眠に関わるメラトニン、“リラックスホルモン”といわれるGABA、意欲を高めるノルアドレナリン、報酬を得たときに出る“快楽ホルモン”との異名を持つドーパミン、“神経興奮ホルモン”といわれるグルタミン酸といった脳内の6つのホルモンがバランスよく働いていると心の安定感が保たれやすくなります。これらの脳内ホルモンの産生をスムーズにするためには、材料となるタンパク質やビタミンB群などのビタミン、鉄などの栄養をしっかり摂ることが大切です。
ミトコンドリアが活性化し、脳細胞の機能が正常に働くことで心が乱れにくくなる
栄養専門精神科医 奥平智之先生
人体に37兆個ある細胞の中にあり、エネルギーを作り出しているミトコンドリア。そこでエネルギーをうまく作れなくなると、全身の細胞の機能とともに、脳細胞の機能が低下して、メンタル不調につながります。ミトコンドリアは、脂質、タンパク質、糖質という三大栄養素に加えて、酸素、鉄、マグネシウム、ビタミンB群などを材料にしてエネルギー物質を作り出すため、栄養は心の元気の源といえるでしょう。
参考:奥平智之『最新版 マンガでわかる ココロの不調回復 食べてうつぬけ』主婦の友社 2022年
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心の栄養を保つために必須の6つの栄養素
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