遂にスタートした吉高由里子主演の新大河ドラマ『光る君へ』。第一回の視聴率は12.7%という滑り出しを切った。次週予告では、子役から、大人の紫式部を演じる吉高由里子が登場。第二回からいよいよ本格的に、彼女の魅力が解禁されることとなる。
かねてより前評判の高かった今回の大河ドラマ。私自身もヒットを確信しており、その理由は吉高由里子の天才的な憑依型演技力にある、と前編記事で詳しく語らせてもらった。
しかし今作に限らず、彼女の作品がいつも確実に成功をおさめてきた理由はそれだけではない。そこには彼女の、自分だけではなく共演者も共に輝かせるという特異な能力がある、と思っている。後編ではさらに、その視点から『光る君へ』へのヒット予測をおこなってみたいと思う。
共演者が必ずブレイクする
吉高由里子といえば、代表作はNHK朝ドラ『花子とアン』(2014年)、『東京タラレバ娘』(2017年)、『わたし、定時で帰ります。』(2019年)、『最愛』(2021年)……と、まさに枚挙に暇がない。しかし注目すべきはそのヒットだけでなく、共演した相手役のブレイクぶりもだろう。
今や押しも押されもせぬ人気主演俳優として活躍する坂口健太郎(32)は、飛躍のきっかけは吉高百合子と共演した『東京タラレバ娘』であった。アラサー女性たちに向かって「もう女の子じゃない、自分で立ち上がれ」などセクシズム丸出しのキツ~いセリフを吐く役どころだっただけに、一歩間違えれば大炎上しかねないところだったが、炎上どころか大ブレイク。そこには、彼をただの嫌味なイケメンに見せず、発言の裏側に「何かある」と感じさせた吉高由里子の好演技が影響していたことは、まず間違いないだろう。
また『わたし、定時で帰ります。』で共演した向井理(41)。当時、主演作において芳しくない結果が続き、主演俳優としての地位が危ぶまれかけていた向井だったが、この作品で吉高由里子の上司で元恋人・種田を演じたところ、優しく部下をフォローする理想の上司ぶりに惚れる視聴者が続出。ドラマ終了後は“種田さんロス”が巻き起こったほどのインパクトで、向井にとってまさに新境地を開拓した一作となった。
柄本佑のイケメン論争にも終止符
そして極めつけが、このたび『光る君へ』で、藤原道長として吉高由里子演じる紫式部の相手役を務める柄本佑(37)だ。吉高とは2020年にドラマ『知らなくていいコト』で共演しており、週刊誌記者を演じる吉高の恋人・尾高役を務め大好評を博している。
柄本といえば、183センチの高身長にシュッとした美しい切れ長な瞳の持ち主。が、かつて出演した朝ドラでは「白へびさん」というあだ名が付けられていたように、「イケメンかどうか?」となると議論の起こる存在でもあった。
しかし『知らなくていいコト』では、恋人を全力で守る大人の男を大熱演。その色気フルな演技にハマる女性が続出し、“尾高沼”という言葉まで生まれたほどだった。その後柄本は、イケメンからあくの強いキャラクターまで何でも演じられる俳優として、“演技派”の名をほしいままにしている。
このたび『光る君へ』では、その柄本と吉高由里子が再び想い人同士として再共演を果たすこととなった。相性の良さは証明済みなだけに、二人がどんな恋模様、そして葛藤を見せるのか、今からワクワクが止まらない。
このように数々の共演者を見事なまでに輝かせてきた吉高由里子。ある記事は、彼女が憑依型女優であるゆえ、「フィクションの中といえども本当に恋をするので相手が魅力的に見える」という分析を述べていたが、これにはいたく同感したものだった。そして自分だけでなく共演者も輝くということは、すなわち作品も輝く、ということにつながる。これこそが、彼女が主演を務めた作品が毎回確実にヒットをする要因の一つだと思うのだ。
フィクションを超えて相手に恋をする
ではなぜ彼女は、そこまで共演者の魅力を引き出すことができるのか。当たり前だが共演する相手の人間性というのは、皆それぞれに違う。人間関係には相性というものがあり、ある人の良さは引き出せても真逆のタイプの人となると全く気が合わず、むしろ良さを潰してしまうということもよくあることだ。しかし吉高由里子に限っては、どうやらそういうことは起こらないようだ。驚くほどにほぼ毎回、共演者を輝かせている。相手のタイプに一切関係なく。
これは彼女が常々語っているように、天性の“人好き”であることが影響していると思われる。彼女はかつて、某雑誌のインタビューでこんなコメントをしていた。「学生の頃は皆が横並びで“同じ”を求めていたけど、大人になるにつれその列を離れ、その人の人物像が見えてくる。それはまるで、手足が生えて歩き出す姿を見ているようで面白い」と。何とも人への興味の強さ、いや、愛を感じるコメントだ。
さらに彼女はこんなことも言っている。「表面だけではなくその一枚裏側をのぞきたくなってしまう。だからついつい相手をイジってしまうことも。どんな反応をするのか、どこまでなら怒らないのか、その人の“人間っぽい素”が知りたくて」。
きっと彼女はいつも、演じる前から相手を好きになっているのだ。そうしてフィクションであることを超えて相手と向き合い、笑い、涙し、恋もする。「人は、一緒にいると自信が持てる相手を手放したくないと思う」なんて恋愛心理もあると言われているように、吉高由里子に役を通してその“素”を愛された共演者たちは、自身も“役としての自分”を好きになる。これこそが、吉高由里子との共演によって多くの相手役が驚くほど輝く理由かもしれない。
大河ドラマは通常のドラマとは比べものにならないくらい多数の役者が登場し、1年という長きに亘って放送される。それだけに、相手役だけに限らず多くの共演者たちの魅力が、いつも以上に深く、濃く、吉高由里子によって引き出されていくに違いない。その先に見せてくれるのはどのように光り輝く世界なのか。本当に楽しみでならない。
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PROFILE
書き手
山本奈緒子 Naoko Yamamoto
放送局勤務を経て、フリーライターに。「VOCE」をはじめ、「ViVi」や「with」といった女性誌、週刊誌やWEBマガジンで、タレントインタビュー記事を手がける。また女性の生き方や様々な流行事象を分析した署名記事は、多くの共感を集める。
Edited by 渕 祐貴
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