特別な2020年。選ばれたコスメには意味がある!
上期下期の単なる平均値ではない
年間ベスコスだから働くバランス感覚
上半期・下半期ベスコスとは異なる、年間ベスコスの意味……。そこには単なる多数決の論理を超えた、もう少し微妙な選者の心理が隠れている気がする。上半期と下半期の投票には、良い意味で勢いと言うものがある。投票する時期を考えても、使ったばかりの感動をそのまま票にするから、斬新でインパクトが強く、そのシーズンのトレンドを象徴するようなものを選びたいとの意識が働くのだ。しかし年間ベスコスは、そうした結果や傾向を横目で見つつ、ある種、冷静な目で文字通り全体を俯瞰し、そうそうこれもきちんと評価しておかなければといった、バランス感覚を働かせながらの評価がなされる気がするのだ。もちろんどちらもガチな選択。しかし、そうしたちょっとした意識の違いが上期下期の単なる平均値ではない結果をもたらすのだろう。
ウィズマスクという逆境で
昔のような“考えるメイク”へ回帰する
今年は言うまでもなく極めて特殊な1年だった。正当な評価が難しいほどに、メイクをする日が激減し、ウィズマスクで偏ったメイク生活を余儀なくされた。少なからずそれが反映された結果となったが、こういう年だったからこそみんな改めて居住まいを正すように化粧品と向き合った結果が引き出された気もする。マスクをしての色持ち化粧持ちをリアルに評価し、アイメイクにも賢明な判断がなされた。いかに目元が主役の年といっても、力まず、はしゃがず、ナチュラルだけれど暗い印象に見えない表情豊かなカラーものが的確に選ばれた。こういう逆境にこそ、考えて精査して工夫する……化粧品がまだ肌になじまず崩れやすかった昭和の時代の法則を思い出したもの。そういう不便な時にこそ、人はキレイになるのだということも。
◆年間ベストコスメ1位・メイク(左から)
【ベースメイク部門】SUQQU ザ クリーム ファンデーション
【アイライナー・マスカラ部門】ルナソル シークレットシェイパー フォーアイズ 01
【リップ部門】SUQQU コンフォート リップ フルイド フォグ 07
【アイシャドウ部門】ディオール サンク クルール クチュール 689
【プチプラメイク部門】フジコ デュアルクッション
文句なしの圧倒的なNo.1と
激戦を勝ち抜くじわじわ来る名品と
年間ベスコスには2つのケースが考えられる。一つは言うまでもなく、もう今年はこれ以外考えられないという圧倒的なNo.1! もう一つは、そういう破壊力や瞬発力はなく、いわゆる派手さはなくても、じわじわと支持を集め、この先もきちんと愛されていくだろうオーソドックスな逸品が、激戦を通り抜けて、とても自然に票を集めて浮上してくるケース。今回に置き換えれば、前者は言うまでもなくランコムのクラリフィック デュアル エッセンス ローションなのだろう。そして後者は、初代のデビューから37年目となるエスティ ローダーのアドバンス ナイト リペア SMR コンプレックスであり、SUQQUのザ クリームファンデーション。年間ベスコスでは、まさしくそうした両極にある名品が肩を並べるのだ。どちらもベスコスの揺るがぬ定義ではあるけれど。
肌以上に人を癒してくれる手厚い潤いの包容力に一票が!
今年、コロナ過敏に悩んだ人がいた。お手入れしすぎの人もいた。肌に見えないストレスをずっしりと溜めた人も少なくなかった。スキンケア時間はたっぷりあったが、同時に不安定にもなった。そういう意味では、スキンケアの功罪について改めて考えさせられた1年だったかもしれない。だから年間ベスコスの結果には、刺激的なアプローチよりもやっぱり肌を優しく包み込んでくれる包容力あるスキンケアが評価されたことに気づかされる。単なるテクスチャーの心地よさではない、存在自体が不安定になった人を安心させてくれる、肌以上に人を癒やしてくれる、そういう化粧品がちゃんと評価されることに、何かしみじみスキンケアの有り難みを感じた。やっぱり逆境の時こそ、手厚い潤いが、私たちをちゃんと救ってくれるのだと。
◆年間ベストコスメ1位・スキンケア(左から)
【化粧水部門】ランコム クラリフィック デュアル エッセンス ローション
【クレンジング・洗顔部門】カネボウ コンフォート ストレッチィ ウォッシュ
【プチプラスキンケア部門】肌ラボ 極潤プレミアム ヒアルロン液
【美容液・オイル部門】エスティ ローダー アドバンス ナイト リペア SMR コンプレックス
【乳液・クリーム部門】シャネル ル リフト クレーム ドゥ ニュイ
撮影/ヤノコージ(STIJL)、伊藤泰寛 取材・文/穴沢玲子、中川知春、楢﨑裕美 構成/鬼木朋子
Edited by 鬼木 朋子
公開日:
この記事に登場したコスメ(5件)
この記事に登場したプロ