「美容」から考え直す、当たり前

「自分で自分の顔を撮るなんて、正気か?!」些細なことにも四苦八苦、自己肯定感低め人間の厄介な日常。

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こんな僕が「自撮り不可避」の事態に!

しかし、そんなことを言いながら、正確には一度だけ自撮りをしたことがある。あれは、マイナンバーカードをつくるときのこと。便利なもので、今はこういう公的な身分証明書もスマホで簡単に申請できる時代です。しかし、そんな手軽さと引き換えに、自分嫌い人間を苦しめるのが、自撮り。マイナンバーカードに掲載される顔写真を自分のスマホで撮って送らなければいけないのである。

自撮り、だと……?

スマホを持つ手がにわかに震え出す。え? 撮るの? 自分で、自分の顔を……? これまで必死に避けてきた自撮りをする人生と、まさかの公的手続きで遭遇するルート。似顔絵とかじゃダメ……?

恐る恐るカメラアプリを立ち上げてはみたものの、自撮りモードに切り替えた瞬間、画面いっぱいに現れる自分の顔に発狂しそう。何この人、どんだけ生気のない目してるん。目の周りの筋肉が衰えてきて、完全に目が垂れくぼんでいる。毛穴のブツブツもひどい。いちご鼻にみかん肌でもはや果樹園。勝手に顔面が秋の大収穫祭になっとる。というか、いつの間にか顔めっちゃ長くなってない? これはもうゾウリムシで画像検索したら僕の顔が出てきてもGoogleに異議は申し立てられへんわ。と、ありとあらゆる罵詈雑言が自分の顔に向かって火を噴いた。

写真:Shutterstock

しかし、文句を言っていてもことは進まない。なんとか自撮りをすませてマイナンバーカードを申請しなければならないのだ。僕は目の前に映る自分の顔を必死で見ないふりをして、ぎこちなく表情をつくる。

だが、所詮僕も人の子。どうしたって写りが気になってしょうがない。もうちょっと顎は上げた方がいいかしら。それとも下げた方が小顔に見えるかしらと、獅子舞のように顎をカクカクさせる。すっかり瞼が垂れ下がった目を少しでもパッチリに見せようと、きゅっと目に力を入れる。すると、やたら瞳孔が開いてしまって完全に顔面が犯罪者予備軍。もう顔の狂気がすごい。口角を持ち上げようものなら、自分を千葉雄大と勘違いしている中年男性の出来上がりで、今すぐ東尋坊から身投げしたい。

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自撮りは、努力と創意工夫の結晶だった

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