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教えてくれたのは…
医師・医学博士
西野精治先生
“世界一の睡眠研究所”と称されるスタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所(SCNラボ)所長。「睡眠の謎を解き明かして社会に還元する」を命題とし、科学的エビデンスに基づいた著書『スタンフォード式 最高の睡眠』は超ベストセラーに。睡眠医学と先進テクノロジーで脳を眠りへと導くソリューションカンパニー『ブレインスリープ』を創業。最高研究顧問に。2022年NOBシフトワーク研究会設立、会長就任。2023年には睡眠資格「スリーププランナー」の総監修を務める。
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そもそも「睡眠」って軽く見られがち!
西野先生によると、世界で睡眠への注目が集まってきたのは、「ここ20年くらい」とのこと。最近は睡眠が与える影響について科学的なエビデンスが出てきているし、今でこそ「睡眠ブーム」とも言われているけれど、それまでは「睡眠が大事」という研究者たちの意見もあまり重要視されてこなかったそう……。
かくいう私たちも、頭の片隅に「寝なくちゃ」という意識があっても、仕事や家事・育児、趣味など、時間に追われているときは、つい眠ることを犠牲にしがち。睡眠への高い意識がライフスタイルに根付くには、もう少し時間がかかるのかもしれません。
「睡眠=休息」だけじゃない! あらためて“眠り”って何のため?
体と脳の休息は睡眠の大きな役割だけど、それだけに留まらず。良い眠りは、ホルモンバランスを調整する、生活習慣病の改善する、皮膚の保水量を上げる、免疫力を高める、脳の老廃物を除去するなど、実にさまざまなメリットが。また、諸説あるものの、記憶を整理して定着させる、さらにはイヤな記憶を消去してくれるのも睡眠の働き。心、体、脳、すべてをメンテナンスしてくれているといってもいいくらい!
睡眠ブームのきっかけは「眠らない女性は太る」という研究結果
私たちは、予防のための努力はなかなかできない生き物。つい「睡眠を削っても、私は大丈夫」と思いがちです。睡眠への関心が高まったきっかけも、明確に“自分ごと化”できる事実が判明したから!
西野先生
2002年にアメリカで約100万人の大規模な調査が行われたときに、『短時間睡眠の女性は肥満度を表すBMI値が高い』という結果が出ました。男性はそんなにハッキリとした傾向が見られなかったけれど、女性は睡眠が短ければ短いほど太りやすい。この事実がメディアで大きな話題となり、睡眠学者だけでなく、内科の医師たちも興味をもってさまざまな調査を行いました。
そこから、短時間睡眠が肥満だけでなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病に直結するという結果が続々と現れ、さらにはメンタルや疾患への影響も明らかに。まだまだわからない部分も多いけれど、年々、睡眠に注目が集まっているといえます。
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睡眠のために知っておきたい基本知識
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