今回教えてくれたのは…
丸の内の森レディースクリニック
宋美玄先生
産婦人科専門医。医学博士。大阪大学医学部医学科卒。川崎医科大学講師、イギリス・ロンドン大学病院・胎児超音波部門留学などを経て、2017年に現クリニック開業。診療の傍ら、さまざまなメディアで女性の体や性の悩みなどについての情報を発信。積極的な啓蒙活動を行う。近著に『産婦人科医 宋美玄先生の 女の子の体 一生ブック』(小学館)がある。
オフィシャルサイト:https://www.puerta-ds.com/son/
女性誌などの記事で、よく“女性ホルモンをアップする”という言葉を目にするけれど、実際のところ、女性ホルモンは自力で増やすことはできるのでしょうか?
「女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)がありますが、“女性ホルモンをアップさせる”というときに指すのは、おもにエストロゲンのほう。このホルモンには、女性らしい体を作る働きや、肌のうるおいを保つ働き、髪のツヤを保つ働きなど、女性を美しくする働きがあるので、増やしたいと思う人が多いのだと思います。
ただ、エストロゲンは脳からの指令で卵巣から分泌されるので、自分でコントロールすることはできません。しいて言えば、体脂肪にはエストロゲンの分泌を増やす作用があるので、太るとエストロゲンは増えやすいとは言えます。でもエストロゲンを増やすために、太りたいと思う人はいませんよね?
たとえば、“恋愛をすると女性ホルモンが増える”とか、“テレビで好きなアイドルを見てドキドキすると女性ホルモンが増える”などというようなことは、昔からよく言われますよね。でも、こういったことでエストロゲンが増えることはありません。ただし、ドキドキしたり興奮をしたりすると、アドレナリンというホルモンが分泌されます。このホルモンには心拍数や血圧を上げる働きがあるので、頬が紅潮したりして、可愛く見えることはあるかもしれませんね(笑)」(宋先生)
女性ホルモンを自力で増やすのは難しいというのは、なんとも残念……。ちなみに、そもそも女性ホルモンの分泌量は多いほどよいものなのでしょうか?
「女性ホルモンの分泌量が減ると、生理不順になったり、不正出血が起きたりします。極端に減ると生理が止まってしまい、不妊の原因にもなります。また、肌のうるおいや髪のツヤが減ったり、膣周りが乾燥しやすくなったり、情緒が不安定になったり、骨が脆くなったり、セックスの感度が悪くなるなどといったトラブルも起きやすくなります。
ただ、これは女性ホルモンが普通に分泌されていれば問題ないことで、多ければいいというわけではありません。エストロゲンの分泌量が多いと、乳がんや子宮体がんなどエストロゲン依存性のがんのリスクが高まります。また、低用量ピルを飲むと血栓症のリスクが高まるように、エストロゲンは血栓症のリスクを高めます。ですから、エストロゲンは多ければいいわけではなく、大切なのは“正常に”分泌されていることです」(宋先生)
よく、一生のうちに分泌される女性ホルモンの量は決まっていて、「一生の間で分泌される量はティースプーン1杯程度」とも言われているけれど、これはホント?
「これは昔からまことしやかに言われている話ですが、女性ホルモンの体積を試算したような論文はなく、真偽は不明で、都市伝説のようなものだと思います。一生のうちに分泌される女性ホルモンの量はもともと決まっているかというと、そういうわけではありません。たとえば、妊娠をすればエストロゲンは増えますし、授乳中はエストロゲンが分泌されません。また、ピルを飲むとその間は体からは女性ホルモンは分泌されません。このようにライフスタイルによって女性ホルモンの分泌量は変化するので、もともと運命的に一生涯に分泌される量が決まっているわけではありません」(宋先生)
女性ホルモンの分泌は正常なら問題ないということだけれど、減ってしまうとしたらその原因は?
「女性ホルモンの分泌量が減る大きな原因は、過度なダイエットをして体重が極端に減ることです。やせると生理が止まるのは、女性ホルモンの分泌が止まって排卵が起きなくなるからです。また、激しい体重の増減も原因になります。そのほか、過度なストレスや不規則な生活なども女性ホルモンの分泌が減る原因です」(宋先生)
では、女性ホルモンを正常に分泌させるために気を付けることとは?
「前述したような女性ホルモンの分泌が減ってしまう原因になることは避けることですね。VOCE世代の女性は特に、十分にやせている人でもダイエットをしてやせようとしている人も多いですが、体脂肪からも女性ホルモンは分泌されるので、脂肪は女性にとって財産でもあります。
女性ホルモンは加齢によって減っていくので、特にアラフォー以降の極端なダイエットは御法度。無理にやせようとするのでなく、標準体重を保って“健康美”を目指しましょう。そのほか、ストレスを減らし、睡眠を十分に取って、バランスのよい食事をとることも大切です」(宋先生)
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取材・文/和田美穂
Edited by 沈 晨棟
公開日: