連載 VOCE’s BOOK 話題の著者に訊く

巷で流行りの【自己肯定感】とは一体何?本当に必要?!大ベストセラー『嫌われる勇気』の著者・岸見一郎先生が解説。

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読者のお悩み5
「自己肯定感が高い人って、なんだかしんどそう……。自己肯定感が高くても幸せにはなれないの? 」

A.岸見先生
特別な人間になろうとしない。「普通である勇気」を持つ人が人生において、最強な人。

幸せになるためには“普通である勇気”を持っていることが必要です。ここで言う“普通である勇気を持つ”とは、魔法のように何でもこなせる理想の自分ではなく、できないことがあるという現実を認めるという意味です。

例えば、仕事で急に英語が必要になったとします。ここで大事なのは、今の段階で英語を話せない自分を認め、そこから勉強を始めることです。他の人が上手に話せるのを見て、自分には無理と諦めず挑戦することが大切です。

英語に限らず、他者と競争し自分の価値を優劣で考えているかぎり、幸せにはなれません。特別よくなろうとしなくても特別悪くなろうとしなくても、今の自分を認め、そこからスタートすれば、少しでも以前との変化を感じられたら幸せを実感できるのです。

読者のお悩み6
「結婚を考えるほど好きだった彼に突然、別れを告げられました。それ以来、自分は価値がない人間に思えて、鬱になりそうです」

A.岸見先生
「あなたに価値がないのではなく彼と合わなかっただけのこと。他者からの評価に自分の価値を委ねてはいけません」

好きな人に「あなたのことが好きではない」と言われることは辛い経験です。でも、失恋したのは、あなたの魅力が足りなかったからではありません。その人があなたをパートナーとして選ばない決心をしただけのこと。失恋したからといって、あなたの価値が下がるわけではない。価値と評価はまったく別のものです。他の人の評価が自分の価値を決めるわけではありません。あなたを振った人はあなたを見る目がなかっただけです。

読者のお悩み7
「過去の失敗がトラウマで、前向きに生きられません」

A.岸見先生
「未来を考えて不安になっていたら、今が不完全燃焼になるだけ。過去を反省することと囚われることは違います」

過去の失敗に囚われて立ち止まってしまうのは、今の課題からの“逃げ”でしかありません。過去はもう過ぎ去ったことであり、まだやってきてもいない未来に何が起こるかは誰にもわかりません。先のことを考えて不安になっていたら、今が不完全燃焼になるだけです。もちろん、過去の経験から学ぶことは大切です。

ただし、反省することと過去に囚われることとは違います。過去に囚われるのは、また同じ失敗をすると考えて前向きに生きることにブレーキをかけることです。同じ失敗を繰り返さないように、自分の言動を検証して、今後に活かさなければなりません。そうしなければ、恋愛でも仕事でも、同じことを繰り返してしまうことになります。

人はいつからでも変わることができます。もう失敗したくないと思うなら、理想の自分ではなく、ありのままの現状の自分を受け入れ、過去から学び、そこから導き出した解決策を粛々と実行していけばいいだけです。

岸見一郎先生の最新著書『泣きたい日の人生相談』

岸見一郎著『泣きたい日の人生相談』

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Edited by 沈 晨棟

公開日:

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