親娘でてんてこ舞いだった音校生活!
十和子さん
宝塚特有の言葉も、最初は慣れるのに必死でした(笑)。
憂樹さん
あはは。確かに。ママに「別寸マットを買って」とお願いしたときとか、あと「黒い紙袋が必要なの」と伝えたときのことだよね。そのままの言葉を伝えたので、母も分からなくて(笑)。
十和子さん
それをそのまま東急ハンズやロフトで店員さんに聞いてみたんです。そしたら店員さんが困惑しちゃって……。上へ下への大騒ぎになったんですが、結局は宝塚音楽学校のすぐそばの文房具店にあるというのが判明しました。あとから聞いたら楽屋のお机を汚さないようにする透明の保護マットのことだったんです。大劇場と東京とバウホールなど、劇場によってサイズが違うから“別寸マット”(笑)。
憂樹さん
そうそう(笑)。
十和子さん
最初は分からなかったよね(笑) でも「別寸マットが必要なの」と娘に言われれば、「どうして?」と聞かずに、すぐに買いに行くというのが、こちらも身に付いてしまっているので、そうなっちゃって……。それの繰り返しでした。そういった面白エピソードだったら、本当にたくさんあるね(笑)。
憂樹さん
鉛筆1本ですら、持ち物は決まっていたからね。
十和子さん
だから、入学のときはちょっとしたお嫁道具を揃えるような感覚でしたね。すべての持ち物に【君島憂樹】と記入をして、送り出しました。
VOCE編集部
でも、それだけ全部をイチから揃えるということにも、意味があるんですよね。
十和子さん
そうです。全国からどんな条件で入って来た子でも、全員が一斉にフラットなところからスタートできるようにするためなんです。持ち物は一律で同じもの。ハンカチ一枚、靴下ひとつとっても全部同じ。レオタードも今までレッスンをしているからたくさん持っているんですが、それは使わず、すべてイチから揃える。
VOCE編集部
幼稚園とか小学校に入るのと同じ感覚ですね。
十和子さん
そうかもしれません。16歳の娘のパンツに【君島憂樹】と書くわけですから。でも、全員を同じスタートラインに立たせるという意味では、本当にきちんと考えられているのだと思います!
そう言って、十和子さんが一息ついたところで第1回目の対談は終了。憧れの場所へ辿り着いた憂樹さんの安堵と期待、そして生まれて初めて体験する生活への不安、一方で、愛娘を未知の場所へ送り出した十和子さんの戸惑いや奮闘……。退団した今だから話せることがたくさんあり、記憶を辿りながらの対談は本当に話が尽きません!
対談の第2回目は音楽学校を卒業して歌劇団に入団、初舞台を踏んだそのときから、退団するまでの思い出や紆余曲折、そして二人で目指している将来について伺います!
【君島十和子さん・プロフィール】
君島十和子(Towako Kimijima)
東京都出身、1966年5月30日生まれ。FTCクリエイティブディレクター、美容家。雑誌の専属モデルや女優として活躍後、結婚を機に芸能界を引退するも、美容への意識の高さに注目が集まり各女性誌で取り上げられる。現在はTVや雑誌にて活躍しながら、飾らない等身大の姿で定期的にファンに寄り添った配信なども行う。過日発売になったばかりの『アラ還十和子』(講談社刊)が絶賛発売中!
『アラ還十和子』
著者:君島 十和子
定価:1760円
講談社刊
【君島憂樹さん・プロフィール】
君島憂樹(Yuuki Kimijima)
東京都渋谷区出身、4月27日生まれ。宝塚歌劇団での芸名は蘭世惠翔(らんぜけいと)。2014年宝塚音楽学校に入学。文化祭では演劇部門で主役を務め、卒業時には演劇部門で優秀賞を受賞するなど、音楽学校時代から注目を集める。2016年に102期生として宝塚歌劇団に入団、星組公演『こうもり/THE ENTERTAINER!』で男役として初舞台を踏み、その後は月組に配属。2018年の『エリザベート ‐愛と死の輪舞-』で少年ルドルフ役に抜擢。新人公演ではマダム・ヴォルフを演じる。2019年8月22日付で娘役へ転向。2023年4月30日に『応天の門/Deep Sea』東京公演千秋楽をもって、惜しまれながら宝塚歌劇団を退団。退団後に蘭世惠翔から本名の君島憂樹へ戻し、芸能・タレント活動を開始。
君島十和子さん
ワンピース ¥124300/トリー バーチ(トリー バーチ ジャパン 0120・705・710) アクセサリー、靴/スタイリスト私物
君島憂樹さん
ワンピース ¥103400/コー(イーストランド 03・6231・2970) 靴、アクセサリー/スタイリスト私物
撮影/岩谷優一(vale.) ヘアメイク/黒田啓蔵(Iris) スタイリング/青木宏予 取材・文/前田美保
Edited by 三好 さやか
公開日: