◆いつの間にか肉親に!? 「我が子」として消費
過剰な母性が漏れ出るあまり、つい推しを前に母親ヅラしたくなるのもオタクの心理。しかし、言うまでもありませんが、オタクは推しの母親ではありません。
「体に気をつけてね」「おいしいもの食べて、ゆっくり休んでね」くらいまでなら許容範囲だとは思いますが、推しの共演者のアカウントまで行って「推しがお世話になっております」「推しとこれからも仲良くしてあげてください」と頼まれてもいない挨拶リプをしはじめたら危険信号。推しは、育成ゲームのキャラクターではないのです。
また厄介なのが、この母親ヅラには多かれ少なかれ支配欲が含まれているところ。そもそも親ですら子どもをコントロールすることなんてできないのに、なぜかオタクごときが推しに物を申せると勘違いしてしまうケースが定期的に見られます。
多いのが、推しに対する小言・お説教の類。「もっと言い方に気をつけた方がいいと思う」「昨日のあの態度は良くなかったよ」などお前は株主かという発言から、「髪型がおかしい」など余計なお世話まで、オタクの説教に百害あって一利なし。シンプルに失礼です。
全肯定オタクが正義とは思いませんが、それなりに打ち解け合った間柄でも説教やアドバイスはデリケートにしなければいけないのに、ただ一方的に応援しているだけの立場の人間が何かを言えるはずがありません。もし自分だけは特別と思っているなら、距離感を大いに見誤っている可能性が高いので、今すぐ高尾山あたりに滝行へ行ってください。
また、この母親ヅラというのが得てして彼女ヅラの隠れ蓑になっている側面があるのもタチの悪いところ。ガチ恋はヤバいという自覚があるがゆえに、母親なら異性として性的に見ているわけではないからセーフという謎の理論で巨大な感情を偽装したりしています。結局のところ、母親ヅラも彼女ヅラも推しに対する所有欲や庇護欲という意味では似たり寄ったり。
「オタクはオタクでしかない」と極太毛筆で書いてホーム画面にでも設定しておきましょう。
◆最近飽きてきちゃった……「代替可能な商品」として消費
個人的に最も僕の頭を悩ませているのがこのケースです。良くも悪くも推し活は一方通行。推しに見返りを求めない分、気が乗らなくなったら勝手に担降りできる自由をオタクは有しています。
けれど、推しは確かに「商品」ではありますが、シャーペンの芯のように簡単に買い替えできる「商品」ではないのです。推しにも心があり、人生がある。潮が引くようにファンが離れていくことに傷つかない人なんていません。実際、どんなに人気を得ても、このブームは一時的なもので、いつか自分も飽きられるという危機感を抱きながら仕事をしている人も多くいます。
多くの若手俳優がブレイク期に畳みかけるように大量の作品に出るのは、飽きられる前にしっかり格と実力を確立し、一過性の人気に左右されないポジションを得たいと考えているから。そう思うと、「こんなに休みなく働き続けて体調は大丈夫……?」と思わずオタクが心配してしまう労働環境をつくり出しているのは、熱しやすく冷めやすいオタク自身と言えます。
とは言え、気持ちが下火になっているのを自覚しながら義務感で推し続けるのも不毛な話。サスティナブルな推し活とはどういうものかと自問自答しながら、新たに出現した若い俳優についのぼせ上がってしまう軽率な自分のこめかみをゴルゴ13あたりに撃ち抜いてもらいたい今日この頃です。
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イラスト/小鈴キリカ(vision track)
Edited by 関野 桃子
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