<プロフィール>
サッカー日本代表
権田 修一(ごんだ しゅういち)
1989年生まれ、東京都出身。中学生からFC東京下部組織に所属、2007年トップチーム昇格。ロンドン五輪では4試合を完封するなど日本のベスト4進出に貢献した。昨年のワールドカップ・カタールでは、日本代表のGKとしてすべての試合に出場。渾身のビッグセーブを連発し、チームに勝利を呼び込んだ。現在は、J2リーグ、清水エスパルスに所属。
引退への決意をひっくり返した、大切な出会い
──GKというポジションは、90分間の試合中、一瞬の油断も許されないような緊張状態が続きます。集中力を維持する秘訣は?
「試合中の表情が印象的なのか、24時間厳しい表情をしているような完璧主義者と勘違いされることもありますが、実際の僕はというと、普段はけっこうフワッフワッしている(笑)。全然集中力がないタイプです。でも、ピッチに一歩入ったら、人が変わります。ずっと集中するのは難しいから、やる気が入るタイミングでスイッチを切り替えることが大事なのかなと。オフがあるから、オンのときにいい状態が保てるんだと思います」
──得点が入ってしまっても決して動じず、ゴールを守る“守護神”として第一線に立ち続けるためには、鋼のメンタルが必要。メンタルは強い方ですか?
「メンタルは、けっして弱くはないけれど、若いときからプロとしていろいろ言われてきて、『なにくそ』と思う気持ちから培われたものだと思います。それに、得点を取られると普通に落ち込みますよ(笑)。だって、GKというポジションは、自分が守ることができれば得点にはならないのだから。だけれど、90分という限られた時間の中に凹むような暇はないから、その先の勝利に向けて気持ちをシフトするだけ。ブレないコツと言われれば、可能性があるすべてのことを先に想像して、準備していることが大きいかもしれないですね。それはサッカー選手としてもプライベートでもいえること。人生なにがあるか分からないから、ある程度想定外のことまで予測しておくから対応しやすいというのはあります」
──“メンタルの怪物”……そんなイメージがありますが、心が折れ、挫折をした経験はありますか?
「2015年にオーバートレーニング症候群になった経験※が……あれは、選手生命に関わる挫折でした。実際に『もう、やめよう』と思っていましたし。サッカーが楽しめない状態に陥っていてやる気も失ってしまいました。メンタルにも支障をきたしていたのが厄介で、いつ治るのかもわからず、先が見えないというどん底まで落ちる経験をしています」
──サッカー選手をやめようとさえ思っていた“暗闇”から抜け出したきっかけは?
「今、週1回、静岡から東京に『JPEC SHIROKANE』というジムに通っているのですが、そこの河口正史さんというトレーナーさんとの出会いが大きかったと思います。サッカーに対してやる気が見出せずにいたのに、その人とトレーニングしたら、『これなら強くなれそう。サッカーがうまくなりそう』と、久しく感じていなかったサッカーへの意欲みたいなものが湧きあがってきた感覚を今もおぼえています。そこから、徐々に回復していきました。だから、今でもそのジムは僕にとってのパワースポット。フィジカルトレーニングではあるけれど、メンタルも整うような心強さがあります。練習後に東京まで行っているのに、妻には『トレーニング後のほうが元気だね』と言われるほど、心のコンディションの支えになっていることは間違いないです」
※ 2015年、ワールドカップ・ロシア大会の予選のある試合でベンチ入りできなかった事実を受け、今まで以上にハードに練習に打ち込んで過酷なトレーニングを続けた。その後、疲労感が十分に回復しないオーバートレーニング症候群を発症。
『JPEC SHIROKANE』
https://www.jpectokyo.com/
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批判を覆すには、結果しか無い