教えてくれたのは…
松倉クリニック代官山 大竹ラボ
大竹尚之先生
VOCE本誌でもおなじみの松倉クリニック代官山に併設されている美容外科手術を専門とするクリニック『大竹ラボ』の院長。北里大学に19年勤務したのち、横浜南共済病院整形外科・美容外科の部長に就任。その後、2004年に開設された聖路加国際病院の形成外科・美容外科の初代部長に就任。美容界の有名なドクターから「神の手を持つ美容外科医」として崇められる存在。時間をかけ、患者さんの気持ちに寄り添うカウンセリングと安全性の高い手術が好評。松倉クリニック代官山 大竹ラボ
「アンチエイジング手術」と「造形手術」、整形の種類によって心のコンディションにも差がある
松倉クリニック代官山 大竹ラボ・大竹尚之先生
いわゆる「整形」といわれる美容外科の手術は、大きく分けて2つあります。一つは、鼻を高くする、目を大きくするといった造形を変えるもの。そして、もうひとつが、たるんだ皮膚を持ち上げるリフトアップなどアンチエイジング目的のものです。美容外科手術におけるメンタルやコンプレックスの関わり方を考える上でこの2つは分けて考える必要があります。
アンチエイジング目的の手術は、年齢の経過によって変化した状態を元に戻す、個人のアイデンティティをブラッシュアップするものですから、美容外科の領域のなかでも動機が非常に健全なジャンルです。一方で、造形を変える手術は、個性を変えてしまうものです。別人になりたいというような動機も多く、心への作用も大きいため、大学病院ではあまり推奨していません。
美容整形をしたすべての人が幸せになり、明るい未来が待っているとは限らない
松倉クリニック代官山 大竹ラボ・大竹尚之先生
リフトアップ系などのアンチエイジングを目的とした手術をした方は、その後も明るく、健やかなメンタルを保っている方がほとんどだと感じます。それは、わたしが必要のない手術はしないというポリシーを持っていて、たるみを感じない20代でリフトアップを望むような患者さんをお断りしているということも関係しているのかもしれません。
造形を変える手術については、自分の悩みのタネだった嫌いなパーツを修正することができたとしても、コンプレックスの呪縛から抜け出せないこともある。それは、パーツにもよるところがあります。目の造形を変えた方は、明るくなられる方が多いように感じます。一方、鼻というのはネガティブに転がりがちなパーツ。鼻の造形を変える手術をして理論的に100%満足するというのはかなりのレアケースとも言えるほどです。かの芥川龍之介が鼻のコンプレックスを題材に一冊の物語を書き上げたほど、鼻というのは哲学的なパーツです。鼻の姿を自分の分身ととらえているかのように、手術を繰り返す人もいます。
もっともっと……、そんなふうにいつまでも納得がいかず造形を変えようとする人に必要なのは手術ではなく、もっと心の面も含めたトータルケアなのかもしれません。
“整形手術”で顔を変えてもコンプレックスが消えることはない
松倉クリニック代官山 大竹ラボ・大竹尚之先生
長年、美容外科医として多くの患者さんと触れ合ってきて思うことは、顔の造形を変えれば、コンプレックスを乗り越えることはできるけれど、消すことはできないということ。造形を変えれば、すべてが解決するかといえば、そんなことはないように感じます。美容外科の手術は、コンプレックスや、心の傷までもすべて消すことのできる魔法ではありません。
最近は、とてもカジュアルに美容外科の手術を受ける人が増えているようですが、手術ですべての不満から解放され、なにもかも明るい方向へと安易に考えすぎてはいけないと思います。手術が成功し、理想の目や鼻、輪郭を手に入れても、まだ違う気がすると納得できず、手術を繰り返す人がいて、ご自身がそうなる可能性もあるということを忘れてはいけません。
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整形をした事実に苦しむことも
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