エリザベスやヘレナのように生きたい
VOCE編集部
宝塚出身の方は実在の人物の役をもらうと、徹底的に調べる方が多いと聞きます。エリザベス・アーデンについてもいろいろと調べられましたか?
明日海さん
私、珍しいタイプで(笑) 先にその人物を調べてしまうと固定観念が生まれてしまうため、まずは台本を読むようにしています。その作品の中でどういうものを求められているのか、観客から観てどうなのか、その役から紐解いたときにこういう人でなければならないという要素をちゃんと図りたいタイプなんです。
VOCE編集部
なるほど! そうなんですね。
明日海さん
実際の人物像と、作品の中で描かれている人物像が違っていたり、少し脚色されていたりもするので、まずは台本!(笑) 資料も読みつつ、あとはすでに天国にいらっしゃる方の場合はご本人への「お願いします」という気持ちを忘れないように臨みます。
VOCE編集部
エリザベス・アーデンもヘレナ・ルビンスタインも女性の実業家としてのパイオニアでした。明日海さんご自身もトップスターを長く務められ、退団後も舞台のみならず映像でも活躍されています。台本と向き合ったうえで感じる“エリザベス・アーデン”という女性は?
明日海さん
エリザベスに限らず、ヘレナに対してもそうなんですが、私、こういう生き方がしたい!と素直に思いました。今の時代に生きている女性よりも、もっとジェンダーのギャップや男女格差があった時代ですし、二人とも育ちが決して裕福ではなかったにもかかわらず自分で事業を立ち上げて……。いろんな困難に負けずに「自分はこうするんだ」というのをちゃんとやり遂げていく力がある女性なんです。
VOCE編集部
今よりも確実に生きづらい時代だったことは間違いないですね。
明日海さん
長いものに巻かれることなく、パートナーをちゃんと尻に敷いて(笑) 自分の美学や生き方にもこだわりがある……。本当にカッコイイなって思うんです。それでいて、エリザベスとヘレナのお互いに対しては“絶対に負けたくない”という思いを抱えていて、それがとてもチャーミングに見えてきたんです。
VOCE編集部
チャーミングなんですね!(笑)。
明日海さん
はい(笑) 日本人みたいにオブラートに包んだりせず、素直にちゃんとモノを言う。素直な女の子はモテると聞きますから、今の時代に生きていたら、モテモテ女子だったんじゃないかな(笑)。
VOCE編集部
(笑) でも強さやパイオニアというポイントは、明日海さんとも共通項がありそうです。
明日海さん
私も現時点では結婚もしてないですし、子供いませんから、こうやって自分が志してきた仕事を続けている、続けていこうとしている人間として、本当におこがましいですが、彼女たちと共感する部分はたくさんあります。二人とも劇中で年齢を重ねていくんです。戦争を経験し、会社が経営不振になり……、それらを経験して最後のシーンを迎えます。この時期に、この作品、そしてこの二人の女性に出会えたことに意味があるんだと思えるくらい、すごくカッコいい女性だと思っています。
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明日海りおのライバルは?