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それでも“キレイ”の鍵は日々積み重ねるホームケア
ここまで美容クリニックやエステでの施術が実力をつけちゃうと、もはやコスメの出番はないのでは?
答えは圧倒的にノーだ。
理由はいくつもあるけれど、まず第一に、トラブル予防や肌のメンテナンスは、日々のスキンケアがメインだということ。できてしまったシミはレーザーで一発解決!(実はそれほど簡単じゃないけれど)だとしても、そもそもシミを防ぐには、そしてレーザー治療後の再発を防ぐためにも、日焼け止めなどの化粧品が不可欠だ。当のドクターたちも「レーザーでシミを消しても、全体の肌状態が今ひとつだと、きれいに見えません」と声を揃える。美容クリニックでの治療効果を美しくキープするためにも、自宅でのケアはとても重要なのだ。
2つ目の理由は、化粧品の進化が、美容医療に負けないほどハイスピードだということ。クスリのように短時間で効いたりしないので、実感しにくいけれど、『VOCE創刊時の化粧品が固定の黒電話とすれば、現在は5Gのスマホ』くらいの差はある。そう思っていたら、そんなレベルではなかった!
「そろばんがコンピューターになったくらいの違いです」と資生堂 みらい開発研究所シーズ開発センター長・加治屋健太朗氏。
「以前は肌の分析でも、キメや毛穴の状態を調べたり水分や油分量を測ったりと、肌表面の情報しか扱えませんでした。それが今では、外から毛細血管の血流を見ることはもちろん、配合成分がどの遺伝子の働きを促しているのかまで調べられます。分析できる単位が肌の外観から、分子レベルや細胞レベルになっているんです」
象徴的なのが美白化粧品の進化だ。20世紀の美白はメラノサイト(色素細胞)のメラニンづくりを抑えるというド直球のアプローチ。それが現在の最新作では、メラノサイトのまわりの細胞環境や不調など対象エリアも対象トラブルもぐんと広く、レシピもぐっと洗練されている。多くのブランドでファンデーションの基本色がかつてより1~2段階白くなっているのも、全国民規模で肌の透明度が高まっているからだろう。
人類史上初レベルの美肌だって今や余裕で手に入る
そして、なによりも注目したいのが、化粧品と美容医療は刺激を与えあう好敵手だということ。美容医療がこんなに「痛くない・高くない・怖くない」施術を拡充したのも、化粧品の快適さや人気を意識してのことだし、ドクターズコスメが爆発的に増えたのも、その表れだ。一方、魅力を増した美容医療への危機感から、化粧品は化粧品ならではの強みをさらに磨き上げ、速攻でつるすべ肌に整えたり長期的にエイジングを遅らせたりと、毎日使うコスメならではの神ワザを実現している。
こうなると、医療と化粧品、どっちを選ぶ?ではなく、両方のおいしいとこどりもアリだ。普段は自宅ケアで“#ていねいな暮らし”を重ねつつ、ときにはブラッセリーや高級レストランでプロの料理を楽しむように、エステや美容クリニックを利用するといった贅沢も可能。もちろん、上質なコスメを駆使してクリニック無用の肌を目指すのもかっこいい。どちらを選んでも、人類史上初の美容効果が得られるほど、先進の美容医療は凄み満点だし、現代の化粧品の底力はハイレベルだ。
そのために必要なのは、古い思い込みやハイリスクな流行に流されないための、新鮮で正しい情報(と経済力?)。少なくとも前者はVOCEが叶えてくれるはずだ。
イラスト/Yui Takahashi 取材・文/近藤須雅子 構成/大木光
Edited by 大木 光
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