一筋縄ではいかない人生。常に自分をアップデートさせていきたい
美容家
神崎恵さん
個性あふれる先輩たちの生き方が
\人生のお手本に!/
【UPDATE 1】「右にならえ」しない先輩たちに学ぶ
歳を重ねるにつれ、ますます「年上の先輩」たちにドキドキ、ワクワクしています。最近特に、素敵だ、かっこいい! とときめく人は、絶対に年上。島田順子さん、夏木マリさん、マダム・チェリーさん、内藤朝美さん、草笛光子さん、萬田久子さん、加賀まりこさん、野宮真貴さん……。あぁ、数え上げたらキリがない。外見の美しさだけでなく、みなさま、個性的で右にならえ、をしていない。わたしはわたし、笑顔と品、優しさと、強くてぶれない芯がある。纏う空気に生き方がのっかっている。とりわけ、映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で、今年のアカデミー賞にアジア人女優初、主演女優賞にノミネートされたミシェル・ヨーのこの言葉は印象的でした。「年をとると需要は小さくなり、与えられる役は減り、脇へおいやられる。だから『エブエブ』の話をもらったときは感激した。主役を張り、ストーリーを語れるということだから。歳をとると、引退するべきだ、こうしろ、ああしろと人から言われるようになる。だけど、ノー! 私に指示しないで。自分のことは自分で決める。わかった?」。もう、最高すぎませんか? そんな先輩たちはわたしの“光”です。
ミシェル・ヨー
60歳でノリに乗る、俳優ミシェル・ヨー。公開中のカンフーとマルチバースを組み合わせた異色の映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(配給:ギャガ 全国公開中)で主演。
マダム・チェリー
芦屋のカフェのオーナー、マダム・チェリーは70歳でモデルに復帰、多くのショーで活躍中。
島田順子
81歳、現役ファッションデザイナー。近著『おしゃれも生き方もチャーミングな秘密』(マガジンハウス)も話題。
男のために化粧しているうちは、お子ちゃま。
神崎さんが大好きな、大阪・文の里商店街・ビューティーショップ ドリアンのポスター。キャッチコピーが秀逸!
\TAKEからGIVEのフェーズへ/
【UPDATE 2】人を育てる力
だれでも気軽に化粧品の情報や美容法を発信でき、同時に多くのさまざまな情報を受け取れる時代です。そんな美容ブームの高まりはうれしいと思う一方で、少し危うさも感じます。使用感などの感想はもちろん自由ですが、正しい知識と正しい伝え方も不可欠です。そのうえで、受け取る側の選択肢が広がればいい。2021年にスタートした美容塾は、そんな思いもあって、美容の力を信じ、正しく豊かに美容情報を発信できる美容家を育てるプロジェクトです。美容家とは何なのか。どういう人であるべきなのか。そもそも、美容ってなんなのか……。この活動を通して、本当に日々、たくさんの気づきをもらっています。また、ほかにも、さまざまな企業で講演を行い、これまで培ってきた知識や技術、考え方をお伝えしていますが、皆さんからの質問や熱気には多くの学びがあります。人を育てることは、自分も育ててもらっているということ。今のわたしのエネルギー源のひとつです。
美容塾では知識だけでなく表現力も伝授
日本ロレアル主催のシングルマザー就労支援プログラムでの講演も!
\思いがけない情報に出合う/
【UPDATE 3】SNS時代の情報収集力
“どうやって情報を取り入れていますか?”とよく聞かれます。わたしの日々の情報源はラジオと新聞が中心。あとは、できるだけ毎日本屋に行って目立つところにある本をチェック、そうすることで“今”がなんとなくつかめます。それから、ほんの少しニュースをみて、気になる人のインスタグラムをチェック、ツイッターは発信がメイン、動画はファッションブランドのコレクションを見るくらいでしょうか。今の時代、ビッグデータによって自分が触れているもののアルゴリズムの中で得る情報も多いと思いますが、情報収集は“わたし”が主体でありたいと思っています。車の中で聴くラジオとか、立ち寄った本屋で偶然見つけたワードとか、カフェでたまたま耳にした素敵な会話からとか、何げない瞬間に、思いがけず出合う情報こそ大切にしたい。情報過多の今の世界で、情報を偏らせないことは、とても大切なことだと思っています。
穏やかな声に癒やされつつ、多種多様な話題はアイディアのヒントにも!
月曜から木曜の朝6時から9時。「わたしの朝は別所さんの声とともに始まるといってもいいかも。情報収集に欠かせない番組です」
出会いも別れも、
\変化をポジティブに受け入れるために/
【UPDATE 4】自由でいるための稼ぐ力
ここぞ! というとき動くためにも、自由でいるためにも、お金は必要だと思います。もちろん、お金がすべてではないけれど、パートナーがいてもいなくても、これからの時代、自分で稼ぐ力はマストだと思う。子どもをふたり抱えた駆け出しのころから、わたしは、自分と子どもの暮らしは自分で稼いだお金でまかなうと、それをひとつの目標にしてきました。生活費の確保もままならなかったとき、子育てと両立できるという理由で選んだのがサロンの開業でしたが、今思い出しても本当にきつかった。でも、美容という仕事なら、きっと絶対、戦っていける。そのチャンスがある世界だと信じて走ってきました。わたしは美容という武器で稼ぐ力を培ってきたけれど、人それぞれ、稼ぐための武器はきっとある。大切な人、何より自分自身を幸せにするためにも、稼ぐ力は必要だと思います。
\動きながら瞑想する/
【UPDATE 5】頭を空っぽにする時間
何かを決断するときや、思考をオフにするとき、気分をリセットするときなど、わたしは必ず動いている気がします。「オフにする」「空っぽにする」方法は、人それぞれだと思いますが、わたしの場合は、トレーニングと料理、韓国ドラマ観賞かな。トレーニング中は体を動かしながら、すみずみまで、どこに効いているのか、じっと筋肉と対話しています。料理は、とにかく無心でひたすら手を動かします。どれだけ細くきゅうりを、どれだけ薄く大根を切れるかに集中する、みたいな。韓国ドラマは、余計なことはいっさい考えず、ドラマの世界と俳優たちの美しさに没頭し、心を動かす。歳をとるにつれ、スイッチを完全に切ってしまうと、再起動後の立ち上がりに時間がかかるようになることを実感していることもあって、何か、どこかを、動かしながら、頭を空っぽにさせているんです。
疲れた時こそキッチンに立つ時間が息抜きに
「わたしはつくづく育てたい人、わかちあいたい人。育てながら育てられ、楽しいことや役立つことをわかちあっていきたい」
今のわたしの頭の中を洗いざらいお見せする、という今回の企画。自分と真正面から向き合えたうえ、取材を通して、美容家を目指していたころや、初めてVOCEに登場したころのことなどを思い出しました。原点回帰とでもいうのでしょうか。
それにしても、わたしはつくづく「育てたい人・わかちあいたい人」なんだなと思います。根っからのおせっかいおばさんですが(笑)、最近、おせっかいぶりにさらに磨きがかかっています。
40代も後半を迎えた今、「育てたい」に加えて、「与えたい」「譲りたい」「教えたい」「引き継ぎたい」という思いが強くなってきました。2021年に美容塾を立ち上げたというのも大きいと思います。
ただ、本音をいうと、何もないところから、何者でもないときから、美容の世界へ飛び込み、無我夢中でがんばってきて今がある。小さな仕事をひとついただくのも本当に大変で、悔しくて惨めな思いもたくさんしてきました。だから、いくら「育てるのが好き」といっても、血と涙と汗の結晶ともいうべきわたしの美容のノウハウ、知識、大切に築いてきた人脈、環境……、そういったものを、簡単に提供するのってどうなのか?という思いと、でも、やるからには手の内をすべてさらけ出して見せて、きちんと育てたい、という思いとが折り合わず、悩んだ時期もありました。
そんな数年を経てやっと覚悟ができ、スタートした美容塾。今、人を育てることで、自分が育てられている、ということを日々実感しています。
これまで自分が体験してきたたくさんのことを、わたしも多くの人に引き継ぎたい。美容のノウハウやテクニックだけでなく、生き方や人生の楽しみ方なんかも含めて、みんなで考え、語り合って、わかちあえたら本当にうれしい。
バッグからさっとアメちゃんを取り出して配るおばちゃんのように、「これ、いいで。おすすめやで〜」と、やたらとパワフルで、明るいおばちゃんに、わたしもなりたいなと思っています。
\INFORMATION /
新刊「美を育てる」(幻冬舎)が3月30日に発売予定。スキンケアやメイク、ボディケアからメンタルケアまで、自身がこれまで実践してきたこと、そして現在も続けている71個の美の心得を詰め込んだ1冊。
撮影/魵澤和之(まきうらオフィス) ヘア/赤羽麻希(Un ami) スタイリスト/石関靖子 取材・文/田中美保
Edited by 大森 葉子
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