「わたしは、歳をとることが性に合っている」
美容家
神崎恵さん
神崎さんは、歳をとるのが怖くないんですか?
47歳になりました。いわゆるアラフィフに突入、「もう」47歳なのか?「まだ」47歳なのか?と聞かれれば、今の心境としては、「まだ」47歳、というのが本当のところです。
20代も30代も振り返る暇がないくらい、とにかくあっという間だったという記憶しかなく、年齢をあまり意識せず生きてきました。
40代に入って、特にここ数年は、確かに、肌のシワやシミ、体のフォルムのくずれやらを実感しましたし、そりゃあ若いときに比べたら体力や集中力の低下を感じます。
「神崎さんは、歳をとるのが怖くないんですか?」とよく聞かれます。
実際、雑誌のインタビューやインスタグラムのライブなどでも、いちばん多い質問かもしれません。
わたしはまだ、歳を重ねることに怖さを感じたことはありません。そしてきっと、これからも怖くないんだろうと思います。
以前、「歳をとるのは怖くない」と言ったとき、「それは年齢が若い今だから言えることで、実際に歳をとったらそんなことは言えない」というご意見を年上の方からいただいたことがあります。それから、巻き髪に肩を出したオフショルダーを着ていたときなどは、「おばさんのくせに、いつまでも若づくりなんですね」という声も。
こういった意見をいただくたび、「年齢」というものについて、深く考えるようにしています。
人はだれでも歳をとります。人間ですから、体や肌、髪、体力面など、あちこちに出てくるエイジングサインは自然のことです。
もちろん、美容家を名乗っている以上、加齢にともなうあれこれを、日々のケアやテクニックで補うことはいくらでもできます。実際、体づくりは楽しいし、やっぱり、うるっとして透明感のある肌や艶やかな髪、ラインをキープした引き締まった体は、自分自身を前向きにしてくれます。
つまり、これまでの知識と経験をフル稼働して手にしてきた美容という武器。これがあるからこそ、わたしは歳をとることや老いることが怖くないんだと思うんです。
そして、この武器をこれからもどんどん増やして、歳を重ねて得た知恵と知見をひとりでも多くの人とそれらを共有していきたいんです。
人生の折り返し地点に立った今、いい意味で「欲と老いと諦め」のバランスが見えてきた
ないものねだりだった20代より、今のほうが楽
正直にいえば、20代のほうがずっとつらかった。肌のハリも髪のツヤもあり、何より若さというパワーとエネルギーをもっているのに、あれもこれも手にしたくて、だれかと比べては落ち込み、張り合っては傷ついていました。あのころを思うと今のほうがずっと楽。
結婚、出産、離婚や子育てを経て、どんどん強く、たくましくなり、人生の折り返し地点に立った今、なんだろうなぁ、いい意味で「欲と老いと諦め」のバランスを見つけたような気がしています。
欲しいものが明確になったぶん、遠回りすることなく一点集中でそれを手にする道筋を考えることができるし、これまでがんばってきたからこそ、手にしやすい環境も整ってきました。体力が低下して疲れやすくなったぶん、体力や集中力の使いどころを熟考するようにもなりました。いかに効率よく、今もっているエネルギーを有効に使うか。それを考えるのも楽しい時間ですし、何より、うまくいったときの達成感たるや!
それに少なからず、人生のいろいろな経験を積んできたおかげで、欲と諦めの落としどころが見えてきたというのも大きいかもしれません。思考がよりシンプルに、おおらかになった気がして、それがまた心地いいんです。
もちろん、今もしんどいことはいっぱいあります。でも、歳を重ねて、しんどさや楽しさの質が変わってきたことを実感しています。
だから、声を大にして言いたい。
「今がいちばん、楽しいぞーっ!」って。
みんな、これくらいポジティブで厚かましくていいんじゃないでしょうか。いくつになっても美容やファッションが楽しめるメンタルと健康な肉体があれば、こんなハッピーなことはない。そんな未来を思い描きながら、今からちょっとずつ心や体を鍛えておくのって、貯金みたいでワクワクしませんか?
そう考えると、わたしは歳をとるのが怖くないというよりも、歳をとることが性に合っているのでしょう。70歳になってもきっと、「歳をとることが向いているんだわ」って言っていると思います(笑)。
だから今、声を大にして言いたい。「今がいちばん、楽しいぞーっ!」って。
いくつになっても美容やファッションが楽しめるよう今から心や体を鍛えておくのって、貯金みたいでワクワクしませんか?
撮影/魵澤和之(まきうらオフィス) ヘア/赤羽麻希(Un ami) スタイリスト/石関靖子 取材・文/田中美保
Edited by 大森 葉子
公開日:
この記事に登場したプロ