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すべての女性へ、好きで続けられることを一つ持っていればやっていけますよ
──野木さんの作品をみると、すべての人にとっての不当に差別を受けないでいられる権利の獲得と平等を目指すフェミニズムへの視点や理解を感じます。
野木「フェミニズムというと男女の対立をイメージする人もいるかもしれませんが、そういう話ではないですよね。私は女だったら、フェミニストにならざるを得ないと思っています。
たとえば、医学部入試の女性受験者一律減点の問題がありましたが、女性というだけで減点されるなんて当然おかしな話で、それでOKという女性はいないと思います。日本で緊急避妊薬のOTC化が進まないといったこともそうですが、女性の体のことを男性が決めるという構図がなくならない限り、フェミニストに“ならざるを得ない”と考えるわけです。だから、現在の日本を舞台にすると、そうした視点が入ってきてしまう」
──男女雇用機会均等法成立の流れで90年代のドラマもフェミニズムやシスターフッドを意識した作品は結構ありましたよね。それが2000年代に入り、バックラッシュによってなのか減っていった。そんな時代の潮流のなかで、野木さんのドラマは再び新たな指針をつくってくれていると感じます。
野木「『29歳のクリスマス』(1994年、フジテレビ系)なんて完全にシスターフッドですよね。あれは面白いドラマでした。あの頃、一斉に働く女性たちのドラマがつくられた。でもバックラッシュというよりも、女性の作り手が少ない中ですくい取れなくなってきたんじゃないでしょうか。当時のプロデューサーや企画を通す編成は圧倒的に男性が多かったはずなので、男が思う女のドラマみたいなものが増えていったのかなと。想像ですけど。私は視聴者時代が長かったので、私が観たいのはこういう作品だというのを、今つくってみたら受け入れられたというだけで、タイミングがよかったんでしょうね」
──最後にVOCEの読者にメッセージをいただけますか?
野木「毎日メイクをしているだけでみんな偉いと思います。私なんて打ち合わせも全部寝起きのままですよ。きれいになることも、自分のためにできているならいいですよね。結局なんでもいいから自分に自信が持てればいいと思うんです。たとえばそれが何かに詳しいとか、この趣味だけなら負けないとか、何かの“好き”を突き詰めるのでもいい。それがメイクであってもいい。好きで続けられることを一つ持てればきっと、やっていけますよ」
脚本家・野木亜紀子さんのインタビュー前編では、最新作ドラマ『連続ドラマW フェンス』についてお聞きしました! 男と女、沖縄とアメリカ、見えないフェンスにドラマを通してどう立ち向かったのか、取材しました。
取材・文/綿貫大介
Edited by 髙橋 ミチル
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