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『逃げ恥』『アンナチュラル』【人気脚本家・野木亜紀子】はなぜ“戦う女”を描くのか

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ドジっ子やバリキャリ以外の女性像を目指して描いた『アンナチュラル』

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──過去の作品も含めて、野木さん自身に似ているキャラクターはいますか?

野木「難しいですね。私、自分を書かないんですよ」

──しっかり物申すキャラクターという意味では『アンナチュラル』のミコト(石原さとみ)も近いのかなと思いました。

野木「『アンナチュラル』を書いたときは、普通を目指していました。あの頃の女性主人公の描かれ方は大雑把に分けると2通りで、一つがドジっ子みたいな未熟ドタバタ熱血キャラ。もう一つが強引でクールなバリキャリ女性。その間がいいのになあと思っていました。働く女性って、もっと普通に仕事をしてるじゃないですか。普通にちゃんと優秀だし、普通に意見を言って、柔軟に仕事をまわしている。そういう女性を目指してミコトを書きました。最初は周りに、もっと特徴を持たせなくていいのか、決めゼリフがなくていいのかと言われましたが、そういうのをやりたいわけではなかったので」

──ドラマの中の女性って明るくてかわいいか、クールで美人、みたいに単純化キャラが多いですよね。野木さんが目指すのはもっと当たり前に存在する素敵な女性たちなのだというのは作品を観ていてもわかります。年相応の、その職業の人の本当の人間味が垣間見れる。『アンナチュラル』でいうと、これまでかわいくてキラキラしていた石原さとみさんのパブリックイメージを覆したと思います。

野木「『失恋ショコラティエ』(2014年、フジテレビ系)の石原さとみちゃんもすごくいいですよね。かわいくて」

──あれだけ魅力的に演じられる人はそういないですよね。そして『アンナチュラル』のミコトは、石原さとみさんの次のステージを見せてもらえた気がしています。ほかにも野木さんのドラマの女性キャラをみても、ドラマにおける女性像を更新し続けてくれていると感じます。

野木「どの役にも日常がありますからね。実際にいそうな感じがほしいと思っています」

──『アンナチュラル』では3話でミコトが代理出廷するシーンが特に印象に残っています。女性を下にみるような態度を取り続ける検事に対し、ミコトが「好きで女に生まれてきたわけではありません」というシーンです。そこにはミソジニーやジェンダーバイアスへの抵抗を感じます。

野木「吹越満さん演じる検事から女性蔑視を利用されるエピソードですね。あそこまではないにしても、実際にまだまだあるんですよね、ああいう差別や偏見って。実は『空飛ぶ広報室』の4話でも近いことを描いているんです。主人公のテレビ局内でのエピソードなんですけど」

──一方『アンナチュラル』では男女の共闘も描かれていますね。3話の法廷でミコトは中堂(井浦新)に協力を求めます。

野木「あれも当時は、最後ミコトが法廷でスカッとやっつけなくていいんですかと言われました。でも実際の世の中の現状がそうではないから、スカッとなんてできないですよね。だからこそ希望も込めて協力し合う道を描きました

──女性蔑視を描く際に、男女の二項対立にしなかったことに野木さんのきめ細やかさを感じました。

野木「二項対立で勝つことに、何の意味があるんだろうって思ってしまうんですよね。『フェンス』では男性に厳しい目を向けている部分がありますが、分断させたくはないんです。何か手探りでもいいからお互いにいい選択を見出していかなきゃいけないと常々思っています」

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