ヘア&メイクとして美容黎明(れいめい)期を牽引。女性の生き方のお手本として進化し続ける、美のオピニオンリーダー
まだ美容がメインストリームではなかった時代から、ヘア&メイクアップアーティストのトップランナーとして、業界を牽引してきた藤原美智子さん。日本初の美容月刊誌誕生に、どんな思いを抱いていたのだろうか。
「当時はファッション誌や女性誌が主流。美容のページはいつもサブ扱いでメインを張ることもなかった、そんな時代に、丸ごと一冊が美容で、しかも月刊誌と聞いて驚いたのと同時に、やっと新しい時代の幕が開くと、ワクワクしたことを覚えています。ちょうどスーパーモデルブームが台頭してきた頃で、日本人のメイク魂に火がつき始めたタイミング。ベージュメイクの洗礼や、海外のアーティストブランドが続々上陸するなど、美容の熱量もぐんぐん上がって。私たち自身も、それまで語る機会のなかった美の哲学やメイクの技術をどう伝えていくか。どんな小さな企画にも全力投球、試行錯誤しながら取り組んでいたことを思い出します」
日本の美容の黎明期で撮影はアナログ全盛、ヘア&メイクは常に職人並みの技術が求められていた時代だ。
「まだ、デジタル撮影やレタッチなどの加工技術は一般的ではなかったので、常に完璧な仕事を要求されました。目元や唇のアップに耐えられる完成度、髪一本、まつ毛一本、肌の凹凸まで。大変でしたが、そのおかげでスキルアップし続けることができたのかもしれません。美容が主役だから、提案したいものを妥協せずに追求できたし、ヘア&メイク対決みたいな企画も増えて、発信する場も広がった。だからいつも現場は楽しく、輝いていましたね」
裏方であるヘアメイクが表舞台へと翔ける道を切り拓き、また、ニューヨーク・ハーフマラソンや香港のトレイルランを完走するなど、ウェルネスなライフスタイルも披露。オピニオンリーダーとして女性の生き方にも大きな影響を与えた藤原さん。この25年間で、美に対する価値観はどう変化したのだろうか。
「自分の中で、美容が占める割合は変わりましたが、美容がコアであることに変わりはありません。自信を持つ、前向きになれる、その後押しとなるのが美容だからです。昔から変わらずに信じているのは、真の美しさは外側と内側のバランスから生まれる、という考え方。自分らしさを大切にしたいという思いの延長線上にビューティがあると思っています。流行も大事ですが、心地いい美しさを引き出すのは、自分らしさ7割、流行3割のバランス。これは私の普遍的なルールですが、最近はそのバランスが崩れている人が多いよう。流行りに振り回されることなく、自分自身が核となる美しさを見極めていってほしいですね」
創刊からのキャッチフレーズ『キレイになるって面白い』についての藤原さんの解釈を伺ってみた。
「ワクワクすると世界が広がっていくもの。だからキレイになる面白さやワクワクは楽しんでほしいけれど、あくまで美容はひとつの道具。きれいになって得た自信を次にどう活かすか、何に活かすか。その先にもっと面白いことが待っていることを忘れずに。好奇心は人を生き生きさせてくれるし、好奇心を持てる人はどんどんキレイになれる。『キレイになるって面白い』って、そういうことなのだと思います」
藤原美智子/ふじわらみちこ
ビューティ・ライフスタイルデザイナー、「MICHIKO.LIFE」プロデューサー、「ボーテ ド ラ ドンナ」スーパーバイザー、信州大学特任教授。人気へア&メイクを数多く育成、日本の美容スキルを向上させた先駆者。
撮影/古水良 ヘアメイク/永田紫織(NOUS) 取材・文/安倍佐和子
Edited by 新井 美穂子
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