空前の猫ブームが続く昨今。その地域の人たちが保護する“地域猫”なんて存在も生まれ、猫好きな人たちを癒やしてくれています。が、野良猫たちの現実はそんなに甘いものではないよう。それを教えてくれるのが『ツレ猫 マルルとハチ』です。猫たちから見たこの世界とは……。可愛くてコミカルなんだけども、ちょっぴりハードボイルドで泣けてくる一作です！
『ツレ猫 マルルとハチ』
著：園田ゆり
マルルとハチ、たくましく生きる姿がとっても可愛い！のだけど……
可愛い猫たちの姿を描き、私たちを癒やしてくれる漫画は多数あります。こちらの『ツレ猫 マルルとハチ』も、凸凹野良コンビのたくましく生きる様子がとっても可愛くて面白い！ ……だけど、それだけでは終わってくれないのがこの作品の、切なくも秀作なところです。
もともとは飼い猫だったものの、スズメを追いかけているうちに迷子になってしまったマルル。餌の見つけ方も分からず、他の猫たちにも睨まれ、途方に暮れていました。でも飼い猫時代の知識を生かし、地域のボス猫・ハチを助けたことで、何とか居場所を見つけることができたのですが……。
猫目線で描かれた珍しい猫漫画
この作品は、人間たちの目線ではなく、猫たちの目線で描かれているのが最大の特徴。それゆえたくましく生きる姿だけでなく、苛酷なサバイバルもきちんと伝えてくれています。食べ物が見つからず息も絶え絶えになったり、ジョウロに頭が挟まって抜けなくなったことで死を覚悟したり……。可愛くも生々しくて、読んでいて息が詰まりそうになるときも多々あります。
他にもこの作品は、ペットショップの実情、動物保護活動、虐待など、猫たちを取り巻く様々な問題を浮き彫りにしています。それゆえ『ツレ猫』は、野良猫の保護活動をしている人たちの間でも「野良猫たちの苛酷な世界がちゃんと描かれている」と共感を得ています。
猫との関わり方を本気で考えさせられる
だからこそ読んでいて強く考えさせられるのが、私たちは猫とどう関わるべきなのか？ということ。飼ったものの最後まで責任を持たなかったり、野良猫を気まぐれに可愛がってあとは知らんぷりだったり……。
でも、当たり前ですが家猫だろうと外猫だろうと命は尊いもの。マルルとハチがたくましく、とても可愛いからこそ、猫たちに癒やしてもらっているだけではダメなんだ、と強く感じさせられる。
猫ブームの今だからこそ、猫を愛する全ての人に読んでもらいたい一作です！
取材・文／山本奈緒子
Edited by 金森 紗瑛
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