自分のおうちでお花見をすることが夢だった私は、2年前、自宅に桜の木を植えた。冬に植え、春に開花するのを待っていたが花は咲かず。まあ、植物からしたら、そんなすぐに新しい場所で花を咲かせるのも無理な話。まだ土との馴染みがよくないのかなと思い、それくらいは仕方ないと思った。1年かけて木と土が馴染み、来年の春に咲いたらいいかなと。しかし残念ながら夏になっても葉っぱは生い茂ることなく、我が家に来てから1年間、花も葉もつかない枯れ木のような状態が続いた。1年経過したところで植木屋さんに確認してもらったところ『残念ながら枯れてしまいました』との診断を受けた。無念。
しかし私は“自宅でお花見”の夢を諦めきれず、同じ場所に新しい桜の木を植えた。冬に植えて、春が来た。今回は蕾のようなものは確認できたが、開花することはなかった。大丈夫大丈夫。きっと夏には葉っぱがわさわさと出てきて、光合成をして来年お花見だ! ……と思っていたのだが、またまた同じ現象が起きた。もともとついていた葉はどんどん色を変えて落ちてゆき、新しい葉がついたり枝が伸びることはなかった。やはり桜の木というのは難しいのだろうか。家族会議も行い、桜の木は諦め、その場所には小さめのブランコを置くことにした。また一年越しに植木屋さんに来ていただき、桜の木を抜くための打ち合わせ。すると植木屋さんが桜の小さな枝をぽきっと折って一言。
『大丈夫です。この木は生きてます』
え! まさかの展開。折った小さな枝を見ると、白と緑が混ざったような瑞々しい断面が。『でも、一回も新しい葉っぱが生えなかったですし、うんともすんとも言わない感じでした』と伝えると『上に伸びることをやめて、今、根っこをしっかり生やしてるんです』と返ってきた。……なんだか……ぐっときてしまった。
『♪花を〜咲かせることよりも〜、しっかりと〜根を伸ばすんだ〜』ってアイドルグループが歌いそうな歌詞の世界観だが、実体験を通して受け取るそのメッセージにはしっかり感動してしまった。そして少し自分のことも重ねたりなんかして。
私はありがたいことにお仕事は増えてきていて、育児とのバランスが取れないくらいなのだが、まだまだ多くの人に『そろそろテレビで見たいです』『地上波復帰はまだですか?』と言われる。……いや……普通に地上波のテレビ出てるんだけど……。といつも心の中でつぶやく。でも世の中の私に対するイメージは、そう言うことなんだと思う。まるで我が家にいた桜の木と一緒。うんともすんともいってない感じ。ならば! 根を伸ばそうではないか。しっかりとした根を。どんな大輪の花、どんな太い幹も支えられるような頑丈な根を! 暑苦しいかもしれないが、私は最近そんなモードに入っている。
『私ってまわりから成長してないって思われてるんだろうな』『私、なかなか結果が出てないな』そんな風に思っているのなら、それは“根を伸ばす時期”ということ。準備をしておく、訓練をしておく、経験を積んでおく……自分にとっての“根の張り方”を考え、実行に移すことが大切だと思う。そしていつか、自分にとっての素敵な花を咲かせるのだ。がんばりましょう。
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ベッキー/Becky
1984年生まれ。神奈川県出身。14歳で子ども向け番組『おはスタ』でデビュー。以降、バラエティやトーク番組、雑誌などで活躍。2019年にプロ野球指導者の片岡保幸さんと結婚し、2020年春に第一子、2021年春に第二子を出産。2021年には「第14回ペアレンティングアワード」でママ部門を受賞。洋服のデザインや絵画制作も行い、カラフルなアクリル画が印象的な「Becky art」も人気。YouTubeチャンネル「ベツキイ!!!!」も、絶好調配信中。また、自身初のスキンケアブランド「NaturaLUNA...
」のプロデュースもしており多方面に活躍の場を広げている。
撮影、イラスト、文/ベッキー 撮影(ポートレイト)/猪原悠
Edited by 渕 祐貴
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