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【漫画】「ブスな女性はいない」は本当か?漫画家とあるアラ子さんが“ルッキズム”を描く理由

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ブスなんて言わないで

昨年末から漫画サイトで連載が始まると、その過激なタイトルと、タイトルから想像させる内容とはまったく違う深すぎるストーリー展開で、あっという間にルッキズムを代表する一作となった『ブスなんて言わないで』。「ブスなんていない」「何で差別されている側の人間が変わらなくちゃいけないんだ」といった提起に、SNS上は大きな盛り上がりを見せています。今なぜ、これほどまでにルッキズムに真正面から切り込んだ作品を描こうと思ったのか。著者のとあるアラ子さんに、その深い想いを伺いました。

『ブスなんて言わないで』
著:とあるアラ子

ブスなんて言わないで

あらすじ

高校時代、「ブス」ゆえにイジメに遭い、自信を失ってしまった知子。しかし自分をイジメていた梨花が美容家となり、「ブスなんていない、自信を持ちましょう」と発信していることを知り、梨花を殺すことを決意。梨花の事務所に向かうも実行できず、なぜか一緒に働くことになってしまう。そこから互いのルッキズム観のガチンコ勝負に……。

タイトルに「ブス」と入れるか、すごく迷った

──炎上しやすいテーマであるルッキズムを描こうと思った理由は何だったのでしょう?

とあるアラ子さん(以下 アラ子さん)「ネット上でよくルッキズムに関する話題が炎上していて、ずっと気になるテーマだったんです。そこには『ブスなんていない』ということがよく書かれていて。言いたいことは分かるんですけどそれじゃ何も解決しないな、と引っかかっていて。だからルッキズムを徹底的に漫画で描いてみたいなと思ったんです

──インパクトのあるタイトルも話題となっていますが、このタイトルにしようと思った理由も教えてください。

アラ子さん「『ブス』という単語をタイトルに入れるかどうかは、担当編集者さんとも一番話し合いになったことでした。でも、『ブス』を入れないとルッキズムについて描いた作品だと伝わらないな、と思って。

あと、この作品は「ブス」の知子と「美人」の梨花のダブルヒロインものなんですけど、どっちかの主張に偏るタイトルにもしたくなくて。だから『ブス』という単語を入れつつもそれを『言わないで』という言葉で否定すれば、どちらの視点にも立てるかなと思って決めました」

ブスなんて言わないで

──ルッキズムを描くということで、炎上は怖くなかったんでしょうか?

アラ子「それが意外となかったんですよ。いろいろ言われたりするのかな、とも思っていたんですけど、第一話を読んだだけではルッキズムを描いているとは分からない、というのが大きかったのかもしれません。

読み進んでルッキズムを描いた作品だと分かってからも、センシティブなテーマなので、攻撃的な言葉で批判するとそれがまたルッキズム差別になってしまうと思うのか、あまりキツい指摘はされてない印象です。私も一つの主張を展開しているわけでなく、いろいろな考えがあるよね、という描き方をしているので、読者さんも偏った感想を言いにくいという側面があるようです。本当はもっと感想を言い合って、思っていることを出し合って盛り上がってほしい、という思いもあったんですけど……」

──ストーリー構成やキャラ設定などで、一番悩んだことはどこだったのでしょう?

アラ子「『ルッキズムをテーマに描く』とだけ決めたものの、どう描くかまったく定まらなくて。ただ、最初から美容業界を描きたいとは思っていたんですよ。今は美の価値観が多様化して、皆さん、いろいろ葛藤がある中で働いているんだろうなと思っていたので。かと言って、美容業界の裏側とかを描くのも普通すぎる気がして。そこで、美容というイメージから程遠い異分子が美容業界に入り込む設定にしたらどうだろう!?と閃いたんです。そこから知子というキャラが誕生した、という経緯ですね」

ブスなんて言わないで

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