男性のメイクを阻むジェンダーバイアスというハードル
――@cosmeさんが考えてきたこととは、具体的にどんなことですか。
尾崎「男性だから、女性だからではなく、“スキンケアやメイクを通してセルフケアの心地良さを伝えたい”という思いが私たちの原点にあって、それを『僕メイク』により、改めて思い出すことができたんです。その一方で、 一朗の葛藤やハードルを見るうち、多様性を受け入れる社会の中で、私たちもまだジェンダーバイアス的なことにとらわれ続けていることも再確認させていただけたというか」
――メンズ美容の浸透をリアルに実感できていないというお話でしたが、どんなところからそれを感じていましたか。
尾崎「弊社のリサーチームが2021年に行ったアンケートがありまして。@cosmeに会員登録している15歳から59歳までの男性172名に対して実施したユーザーアンケートによると、ボディケアやスキンケアなど、体を洗うアイテムは9割以上の方が使用しているという結果が出ました。また、男性がスキンケアすることに対し、95パーセント女性が良いと思うと回答していたのですが、その一方、男性がメイクアップをするということに関してとなると、良いと思うという答えが68パーセントだったのです。この結果から、男性のスキンケアは良いけど、メイクアップとなると肯定的意見がグンと減る、近年では性別にかかわらずメイクを楽しむ良いムードは高まりつつも、男性を受け入れる女性側にもギャップがあることがわかってきました。
そこで私たちが考えたのは、男性への普及ももちろん必要ですが、女性にも男性が美容に取り組むことを受け入れてもらう必要あるということでした。双方がオープンな状態であれば、より一層メイクやスキンケアを楽しむムードが広がるのではないかと思っています」
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「俺には“タマちゃん”がいない」を解決