連載 ベッキーの「新こきゅう」

いつだって人生は一部分を切り取ってはいけない【ベッキー書き下ろしエッセイ連載第6回】

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いつだって人生は一部分を切り取ってはいけない【ベッキー書き下ろしエッセイ連載第6回】

家族に仕事に向き合う毎日の中で、ベッキーさんが気づいたことや考えたこと、出会ったひとやもの、とにかく心を動かされたままに本音で綴ります。連載タイトルの【ベッキーの「新こきゅう」】は、マスク生活を余儀なくされ、呼吸について考えさせられる日々の中で、ベッキーさんが想いを込めて命名。記事冒頭の写真も、ベッキーさんが撮影! 「相変わらず調味料作り、楽しんでいます! この日は教室でラー油と中国醤油を作りました! ちょろっと入れるだけで本格的な味になるので最高です!」

家族ぐるみでよく会ってるご家族がいる。私たちがお宅にお邪魔して、おいしい夜ごはんを頂くという流れがあり、いつも楽しい時間を過ごしている。そのご家族の大学生の娘さんからある日連絡があり、相談に乗って欲しいとの事だった。

『実は、芸能界に入りたいんです。一度きりの人生、チャレンジしたいんです』と伝えられた。びっくりした。いつも会うその子の印象は“いい子”。私たちの犬の面倒を見てくれる姿は優しく、また、サバサバとおしゃべりできる空気感が、気持ちのいい子だなとずっと思っていた。何度か会っているのに、芸能界に対する熱い情熱を秘めていただなんて知らなかった……。驚いたと同時に、嬉しかった。芸能界の後輩にも『色々と教えてください!』みたいなこと言われた事ないし。先輩風を吹かせることに憧れていた私は、チャーンス!とばかりに相談に乗った。

実際の“現場”というものも体験させてあげたくて、ドラマや広告の撮影現場なども連れて行った。彼女はかなり刺激を受けたようで、私が『落ち着いて!』と言っちゃうくらい、芸能界への炎が大きくなっていた。私は冷静に芸能界の“大変なところも”彼女に伝えたが、それでも彼女の勢いは止まらない。ならばと、人を紹介して、いわゆる“オーディション”というものを彼女は受けることになった。いくつかチャレンジしたが、結果はどれも落選。

彼女はすごく悔しそうにしていた。たぶん落ち込んでもいた。でも……なんだか……その姿が微笑ましかった。もちろん悔しがる彼女の想いに寄り添う私もいるけれど、心のどこかで『よし。いいぞいいぞ』と思っていた。

結果を出したい! 出さなきゃ!!と願う20代は、いつも“結果”という切り抜かれた一瞬が全てである。それに人は振り回され、一喜一憂。私もそうだった。1つオーディションに落ちただけで、“私は才能がないのかな”と落ち込む。でも、全てはご縁なのだ。ドラマのオーディションもそう。学校の受験もそう。受かった先で、地獄の日々が待っているくらいなら、数回落ちてでも“ご縁”のある居場所で、ぴったりな日々を過ごしていく方がいい。“ご縁”ってなんだかふわっとしていて、都合のいい言葉かもしれないけれど、それで心が落ち着くのなら、“ご縁”という言葉を借りていいのだ。人生、たまにはファンタジーもあり。

私が彼女に対して微笑ましいと思った理由。それは彼女の悔しさが“財産”でしかないから。不合格、落選、別れ……それらは一見“損失”と捉えられがちだが、違う。長い人生の中で考えると、“財産”でしかない。悔しさから生まれるパワーは本当に大きいのだから。いつだって人生は一部分を切り取ってはいけない。

私よりも若い子がこれを読んでいてくれてるのなら、伝えたい。悔しさってどこにも売ってないんです。なかなか自分からは体験しにいけないものなんです。そう考えると、相手方から言い渡されるお別れには、大きな宝が眠っています。だから、今、悔しい気持ちがあるのなら、その気持ちを大切に。それはあなたにとっての財産であり、今後の大きな原動力です。あなたたちは、もっと未来に対してワクワクしてていいんです。一緒にがんばりましょう! 今日もまた先輩風を吹かせてみました。

【ベッキー×上戸彩】スペシャル親友対談、11/2(水)から四日連続公開決定!!!

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ベッキーさん
ベッキー/Becky

1984年生まれ。神奈川県出身。14歳で子ども向け番組『おはスタ』でデビュー。以降、バラエティやトーク番組、雑誌などで活躍。2019年にプロ野球指導者の片岡保幸さんと結婚し、2020年春に第一子、2021年春に第二子を出産。2021年には「第14回ペアレンティングアワード」でママ部門を受賞。洋服のデザインや絵画制作も行い、カラフルなアクリル画が印象的な「Becky art」も人気。YouTubeチャンネル「ベツキイ!!!!」も、絶好調配信中。また、自身初のスキンケアブランド「NaturaLUNA...のプロデュースもしており多方面に活躍の場を広げている。

撮影、イラスト、文/ベッキー 撮影(ポートレイト)/猪原悠

Edited by 渕 祐貴

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