日本人と正反対の5つの気質が、世界的韓流ブームをつくっていた
ふと思う。私たちはなぜここまで韓国に魅了されるのかと。K-POPにハマり、韓流ドラマにハマり、韓国美容にハマる、気がつけば韓国スイーツに韓国ファッション……ほとんど全方位で、韓国づけになっている。考えてみれば不思議。実はそこに、ちょっとだけ生き方を変える重要なヒントが隠されていた。だから改めて知っておくべき、その理由。
まず理解したいのは、私たち日本人と韓国人の気質は多くの点で、真逆であること。政治面からもわかるように、韓国人は強気で頑固、負けず嫌いだ。歴史的な問題もあって日本を最大のライバル国と見てきたから軋轢もあったわけだが、そういう意味で比較をすれば、日本人はちょっと弱気で優柔不断……。
とはいえ、これほどライバル視されている韓国に対し、心底傾倒し、ちゃんと評価をできる日本人は、それはそれで素晴らしい国民性を持っていると自負してよいのではないか、そう思うのだ。
逆に言えば、それは自分たちにないものを持っている彼らを認められる素直さと柔軟性がある証。であるなら、学ぶべきものはざっと5つ。5つも?と思うのだろうし、同じ気質を持つ日本人はもちろんたくさんいるけれど、あくまで整理のためにあげてみたいのだ。
一つに、速さ。韓国人と働くと仕事の速さに驚かされると言われるが、「パルリパルリ」速く速くが彼らの口ぐせで、何に対しても「すぐやる」が物事に取り組むモットーであるらしい。韓流ドラマや韓国映画にもそれは如実に現れている。ともかく展開が速い。モタモタしていると批判を浴び、誰も見なくなるとか。どんなドラマもめくるめくスピード感でグイグイ進んでいくから、30話あっても(制作的にもあっという間につくられる)全然飽きずに最後まで一気見できてしまう。途中で止められずに困るほど。
2つ目に、熱い、近い。これは人対人の話で、プロポーズをイベント化したり、交際記念日を毎月設けるほど恋人たちの異常なまでの熱さは有名だけれど、友人関係でもおせっかいなくらいに“あなたのためなら何でもします”的に、尽くす傾向が。韓国に初めて行った時、道を尋ねた人がその場所に電話してくれ、場所がわかったから一緒に行きましょうと送ってくれるという、日本ではありえない手厚いもてなしを受けてすっかり感動、いきなり韓国人ファンになったほど、他人にも熱い。ともかく人との距離が近く、友達が多いうえにいちいち濃厚、孤独な人は少ないはず。仲間思いで結束が固いのは、K-POPのユニットの在り方に明らかだ。かつて日本で電車のホームから落ちた人を助けようとした韓国人男性が亡くなる事故があったのは忘れられない出来事だ(同じく助けようとした日本人と転落した日本人も死亡)。
3つ目、清潔な色気。これはK-POPや韓流スターが世界中を魅了し「今、世界一カッコいいのは韓国人」とまで言われる理由にもつながるが、なかなか両立しない色気と清潔感を併せ持つこと。BTSにしろ、TWICEにしろ、ビジュアルも踊りも歌も見事に色っぽいのに清潔だ。どれだけセクシーなポーズをしても下品にならないのは“肌の美しさ”に加え、過酷な競争社会を勝ち抜いてきたがゆえの魂のピュアさが影響しているのだろう。で、私たちが韓国美容にハマるのも、やはり清らかな色気への憧れ。日本男性の女性観の影響で、日本女性は色気を上手につくれない傾向にもあるからだ。
4つ目、これは今さら言うまでもないことだが、一生懸命。それもただの真面目な一生懸命ではない、不撓不屈、決して諦めない反骨精神から来る一生懸命だけに必ず結果を出してくる。だからK-POPのダンスはあれだけそろうのだ。一日18時間のレッスンに耐え抜いてきた結果だと言われるし、ただ諦めない国民性ゆえに、自分にも厳しいが、他人にも厳しい。とてつもない競争社会であると同時に、中途半端なことをやったらたちまち排除される。失敗も許されない、あっという間に追い越される、だから成功しても気が抜けない。その結果どんどんハードルが上がっていき、エンターテイメント的には次々素晴らしいものが生まれてくるという良循環が働くのである。
早々と自分の役割を探し出す、だから人生がはっきりする
そして5つ目。自分の役割に早く目覚めること。儒教の教えから年齢が1歳でも上なら「先輩」として敬うように、礼節のもと相手との立場の違いをはっきりさせる国民性があるけれど、職業でも、生涯における自分の役割を早々に見極め、それにまっすぐ進んでいく考え方が根づいている。だから成熟が早く、人生がはっきりする。熾烈な受験戦争を勝ち抜くのも、大学入学前に整形を平然とやってのけるのも、そういう過程の一部なのだ。彼らの粘り強さや完璧主義もそれがため? 韓国人は大変だねと日本人がホッとする分だけ、彼らは早く前に進むのだ。
もちろん言葉で言うほど簡単ではないが、持って生まれた資質と能力を120%生かす道を自分で探し、あるいは自らつくってでも邁進しようとする。徴兵制の影響などもあって、自分は何者で、どんな使命を持っているのか、若くして熟考するのだろう。当然みな野心も強いし、財閥への反発が強いのは“成功願望”の裏返し、ひとかどの人間になろうとする思いが強い。使命感と野望が両方強いからこそ、早くから「私はプロゴルファー」「私は女優」というふうに、ちゃんと世に出ていく仕事を選ぶわけだが、それだけに芸能界に入るのも生半可な気持ちではなく、10代から命をかける。運を天に任せるのではなく、何が何でも席を勝ち取るべく必死で取り組む。そういう役割を得るのは容易ではないが、迷いなく生真面目に、その道に挑むことが充実した明快な人生をもたらすのは確か。だから魂レベルが高く見えるし、成功者も多いのだ。
そんな彼らに比べれば、日本人は良くも悪くも生き方がのんびり幼いことがわかるはずだ。そういう意味で、あなたは自分の役割を知っているだろうか。自分は何が得意で、何が好きで、何をしている時に一番心地よく、忙しくても喜びを感じるか、それを考えて考えて考えて、自分の役割をひねり出していく……実は誰もがやってほしいこと。きっと生き方が少し変わる。何かが見えてくる。最低でも、人生は充実するはずなのだ。
どちらにせよ、妥協を許さぬ一生懸命。その“がむしゃら感”にはとてもついていけないと思うのだろうが、でも実はもう一つ、韓国人が私たちを魅了する絶対的な理由がある。愛情深いこと。先の仲間意識が強いという一面にもつながるが、ともかく家族愛が強く、友人愛が強い。人間愛が強いと言ってもいい。非情な頑張りではなく、常に愛を持っての頑張り。だから人の心を打つのだろう。
速く、熱く、愛を持って、一生懸命! 自分の役割に一生懸命! そりゃあ敵わない。それをただ眺めているのではなく、何か一つでいいからお手本にしてみたい。そう、清潔な色気、そこから真似てもいいし、何でも早く片付ける、今すぐ取り組むスピード感を真似てみるのもいい。そういうエネルギーの源はやっぱりキムチ? そう思うならキムチから始めてみてもいい。でも、どの入り口から入っても、きっとこう感じるはず。魂がしゃんとする……。何だか人生がゆるゆるになっている人こそ、こうした韓国人のマインドをなぞってみたい。
日本は今、円安ばかりか、国力も個人の力も弱まっていると言われる。今まで何だかんだ世界で1、2を争う国だったのに。私たちのせいじゃないけれど、平均賃金でも日本は韓国にとっくに抜かれている。そんな今だからこそ、心をまっさらにして、隣人のバイタリティーに真摯に学びたいのだ。憧れている場合じゃない。正しさを認めて学ばなければ!
撮影/戸田嘉昭 スタイリング/細田宏美 構成/寺田奈巳
Edited by 中田 優子
公開日:
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