――『僕はメイクしてみることにした』連載のきっかけは「ずっと探していた人材」として、原案・鎌塚亮さんをSNSで見つけたことだったそうですね。
VOCE編集部・大森葉子(以下 大森)「はい。メイクだけでなく美容に対して全面的に肯定的で、ポジティブな方ではなく、戸惑いを感じつつ、自分の足で進もうと葛藤している方をSNSなどで探し続けていたんです。
特に男性の場合、『美容に非常に関心が高い、あるいは美容に対して何のハードルも感じていない若い男の子』と『美容に全く関心のない、あるいは、どちらかと言えば美容行為を毛嫌いしている人』とが、二極化していると感じていました。その間の層の人数がいちばん多い気がしているものの、いわゆるサイレントマジョリティの方々はなかなか発信していただけないのでなかなか見えてこない。そんな時、 “普通の男性”として、彗星のように現れたのが鎌塚さんでした」
――いわゆる“普通の男性”を探していたのはなぜですか。
大森「『VOCE』は美容専門メディアなのに、美容の情報を届けたいすべて方に十分にリーチできていないなぁ、という忸怩たる思いがずっとありました。美容情報が高度、かつ細分化されすぎていて、二極化の間にいるであろう『ちょっと関心はあるけど、よくわからない』『やりたいけど、何から始めて良いのやら』『自分にはできる気がしない』という方に美容がもつ力が届かないと思っていたんです。新しく発売される洗顔料を伝えるのもメディアの役割ですが、その前に正しく洗顔法を伝えたい方がたくさんいるのになって。
私自身、職業柄たくさんの美容の知識を持っている方だと思いますが、基本的には何もしたくないタイプで(笑)。自分の顔にシミができても『仕方ないよね、生きてるんだから』みたいに思えちゃうタイプなんですよ。だから、美容をやりたい人はやれば良いし、やりたくない人がいても別に良いともずっと思っていて。それぞれの人が横やり入れられずに、いたいようにいられるようになっていけばいいな、と。
そこで、まずできることは何かを考えた時に、『やりたいけど、やれない』という人にきちんと情報が届かない、今の状況はかなり歯痒い。その層の中には美容やメイクの楽しさに気づいてハッピーになれる方もたくさんいるんだろうな、とずっと思っていて」
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「漫画にしたい!」と思った理由
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