「はじめまして美容」応援!

『僕はメイクしてみることにした・シーズン2』11月1日配信スタート!【作者:糸井のぞ先生インタビュー】

公開日:

自分の気持ちも人の気持ちも同じぐらい大事なはずなのに……

 自分の心地良さや内面の変化を伝える一朗に対して、長谷部が「お気持ち」ばかりと嘲笑する。しかし、実はそうした「お気持ち」こそ、多くの男性が一番苦手とする部分にも見える。

「自分の気持ちも大事にしないし、人の気持ちも大事にしない、あるいは自分の気持ちは大事にしちゃうのに、人の気持ちを軽んじている。本当は自分の気持ちも人の気持ちも同じぐらい大事なはずなのに、『お気持ち』という言い方には気持ちを軽視して腐してしまう感じがしますよね。そのくせ結局、自分も気持ちで動いてしまう、自分に重きを置いてしまうということは、私自身も過去に何度もあり、変わるのが簡単じゃないこともよく知っています」

 何でも素直に受け入れ、素直に発言できる一朗に対し、他人目線での「身だしなみ」を重視しつつ、自分の気持ちに振り回され、周囲に当たり散らす長谷部は、面倒くさく、かなりこじらせている感がある。

「私自身、そういうキャラクターが愛おしくて、迷惑だと思いつつも、好きなんですよ。私の作品では長谷部みたいな面倒くさいキャラクターを中心にすることが多いんですが、今回は一朗という素直なキャラクターを主役にすることで物語に思ってもみなかった幅が出ました。一朗はもともと人を信じる力がある人ですが、さらにメイクによってセルフケアできることを覚えてから、大事なことを親友に伝えたいし、傷ついても向き合おうとする。あくまでもメイクという方法を使ってはいますが、誰でもそういった何か大事なものを見つけることができれば、前向きになれることはあると思っています」

©️糸井のぞ・鎌塚亮/講談社

主人公の一朗は素直だが、決して聖人ではない

実は、今まで描いてきた主人公と全く異なる主人公を作れたことが一番の収穫だと言う。

「一朗の気持ちになって考えると、『いやいや、もっとムカつくでしょ』『受け入れるの無理だよ』と思うんですけど、そこを一朗は素直に受け止めるのがあまりにピュアで、新鮮でした。ピュアな人を真ん中にすると、話が進むのが早いのも発見でしたね(笑)。
警戒心や猜疑心が強いと、その分自分の中で否定することでネームが増えたりしがちですが、一朗のように素直な人は、迷うことはあっても、素直に進んでいく。ただし、一朗も誰でも助けたいわけじゃなく、自分が信じたことを伝えたいという思いがあってのことで、そういう意味では自分勝手なエゴもあるんですよね。
鍵と鍵穴じゃないけど、合わない時は何を言っても合わないし、仲直りしたくても、どうやっても鍵がはまらないこともいっぱいあって、そのまま疎遠になることもあれば、何年も経って復活する場合もある。それが、たまたま奇跡的にうまくいった形を漫画にしているだけで、一朗も決して聖人ではないところが大事にしている点で、私が一番『面白いな、この人』と思うところなんです(笑)」

次ページ
恋愛感情とは違う男女の相互理解を

こちらの記事もおすすめ