連載 元タカラジェンヌ特集!

【宝塚歌劇団・観劇の基本】劇場は?チケットは?ファンクラブは?マナーは?初めてのあなたでもこれを読めば楽しめる!

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宝塚歌劇団・観劇の基本

VOCEで人気のタカラジェンヌOG特集。興味を持ったものの、「宝塚歌劇団を観てみたいけれど、特別なお作法があるんじゃないの……?」なんて声もチラホラ。そんな初心者でも劇場で観劇を楽しむことができるハウツーを伝授します!

目次

元タカラジェンヌ特集に出演される元タカラジェンヌさんたちを観ていたら、「ぜひナマの宝塚を観てみたい……」と、そう思う人も多いはず。でも、いざ「観に行こう!」となると、「え、どこで観られるの?」とか「どうやって観る演目を選べばいいの?」「そもそも、いつ上演されているの?」と、頭の中にはクエスチョンマークが浮かぶばかり! そんなアナタのためにヅカ沼にハマって早くも17年になるビューティライター・前田美保が、宝塚観劇のハウツーを指南。何人ものヅカ初心者を劇場に送り込んだ手腕を発揮して、皆様を夢の世界へとお連れいたします。

教えてくれたのは…
前田美保

ビューティライター

前田美保

ビューティライター歴23年。タカラヅカ観劇歴17年。舞台好きの経歴を買われ、2005年VOCE初の宝塚特集で当時雪組のトップスターだった朝海ひかるさんを取材、そのままタカラヅカ沼に見事着水。そこからは東京宝塚劇場に日参、大劇場に遠征を繰り返す日々を経て、立派な雪ん子に育つ。現在の推しは宙組の真風涼帆さん。宙組をメインに観ながら、他組も本公演は必ず観劇。そのほか、元タカラジェンヌが出演するミュージカルやストレートプレイにも積極的に足を運ぶ。歌舞伎や落語などの伝統文化芸能を観に行く回数も合わせると、年間約200回以上は劇場を訪れる計算に。宝塚歌劇団の現役生徒、OGのタカラジェンヌさんのインタビューも多数経験。

宝塚歌劇団の「きほんのき」

─宝塚歌劇団とは?

劇団四季など、通常の劇団は男女で構成されていますが、宝塚歌劇団は【未婚の女性だけ】で構成されています。元タカラジェンヌ企画でも“男役スター”や“娘役”という肩書がついていると思いますが、女性しか在団していないため、【男役】【娘役】のどちらを演じるかを決めたうえで歌劇団に入団します。※途中で男役から娘役に転向する場合もあります。

─宝塚歌劇団には誰が入団できるの?

宝塚歌劇団に入団できるのは、宝塚音楽学校を卒業した人だけです。皆さんも一度はニュースなどで目にしたことがあるかもしれませんが、この宝塚音楽学校というのが「東の東大、西の宝塚」と呼ばれるほど入学が難しい超難関校。年によって倍率は異なりますが、それでもかなりの狭き門。宝塚音楽学校では2年間を過ごし、その間に宝塚歌劇団で活躍するためにダンスやバレエ、声楽、演劇、ピアノ、日本舞踊などを学びます。

ちなみに宝塚音楽学校は誰でも受験できるわけではなく、受験時に中学卒業、もしくは高等学校卒業、または高等学校在学中の人のみ。中学校3年生~高校3年生のあいだ、わずか4回しかチャンスがありません。毎年、約40名が宝塚音楽学校に入学します。

─宝塚歌劇団でよく聞く、【組】とは?

宝塚歌劇団には花組、月組、雪組、星組、宙組(そらぐみ)の5つの組と、専科と呼ばれるスペシャルなグループがあり、約400名が在団しています。公演数と生徒の増加により、ひとつの劇団をふたつに分ける形で最初に誕生したのが花組と月組。次に雪組が発足し、1933年に東京宝塚劇場が設立されたタイミングで星組が誕生します。宙組が一番新しい組で、その誕生は1998年です。

各組にはそれぞれ代々受け継いできた【特徴】があります。どの組を観劇するかというポイントにもなるので、各組の特徴を紹介します!

【花組】

宝塚で最も歴史のある組のひとつで、いわゆる『ザ・宝塚』といっても過言でない男役、娘役の美学が詰まっている組。『ダンスの花組』とも呼ばれるこの組は、見どころの多い華麗なショーが得意な組としても有名です。男役が黒燕尾を着て一糸乱れぬ振り付けで踊る群舞はどこの組も素敵ですが、特に花組は一見の価値アリ。
現在の男役トップスターは柚香光(ゆずかれい)。娘役トップは星風まどか(ほしかぜまどか)。

【月組】

花組と同時に誕生した、長い歴史を誇る組。月組は『芝居の月組』と呼ばれ、上演作品にも大作が多い印象です。月組でこれまで上演されてきた作品には『ベルサイユのばら』や『風と共に去りぬ』といったこれまでの宝塚を支えてきたようなものが多く、また『ME AND MY GIRL』などの海外ミュージカルも多数上演。最近では『今夜ロマンス劇場で』など、映像作品が宝塚風にアレンジされて上演されています。
現在の男役トップスターは月城かなと(つきしろかなと)。娘役トップは海乃美月(うみのみつき)。

【雪組】

3番目に誕生した雪組は『和モノ(日本物)の雪組』と呼ばれ、今までにも『星逢一夜』や『星影の人』、『心中・恋の大和路』など、名作と呼ばれる日本物の作品を度々上演しています。それと同時に、『ルパン三世―王妃の首飾りを追え!―』や『るろうに剣心』、『JIN-仁-』、『CITY HUNTER』といったマンガ原作の舞台化にも定評のある組なので、宝塚初心者の宝塚デビューにもピッタリ。
現在の男役トップスターは彩風咲奈(あやかぜさきな)。娘役トップは朝月希和(あさづききわ)。※朝月さんは2022年12月25日で退団予定のため、次期娘役トップに夢白あや(ゆめしろあや)が決定しています。

【星組】

星組は東京宝塚劇場の創設と共に誕生した組で、昔から煌びやかな演目を多く上演してきたため、『コスチュームプレイの星組』と呼ばれています。有名な上演作品にはフランス革命直後の時期を描いた『THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット・ピンパーネル)』やオペラ『アイーダ』をベースに宝塚版として書き直した『王家に捧ぐ歌』などがあり、こちらも宝塚らしい華やかさを思いっきり堪能できる組。
現在の男役トップスターは礼真琴(れいまこと)。娘役トップは舞空瞳(まいそらひとみ)。

【宙組】

宙組は1998年に創設された最も新しい組。高身長の男役が多くモダンかつスタイリッシュで、『ファントム』や『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』、『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』に『王家に捧ぐ歌』『オーシャンズ11』など、その時々のトップスターが持つ魅力に合わせて上演される演目も変幻自在といった印象です。また厚みのあるコーラスも特徴で、劇場に響き渡る重厚な歌声に圧倒される観客が多数。
現在の男役トップスターは真風涼帆(まかぜすずほ)。娘役トップは潤花(じゅんはな)。

宝塚観劇の前に知っておきたい知識!

─トップスターって、何?

【組】についての解説の中にも、現在の各組のトップスターたちを入れておきましたが、トップスターというのは、その組で行われるすべての本公演で主役を務める生徒(※劇団員のこと「生徒」と呼びます)のことです。いわば、その組の“顔”。男役トップスターと、娘役トップがカップルの形で存在し、それを支える2番手スター、3番手スターというポジションがあります。その下には中堅のスターや下級生が存在し、ひとつの組が成り立っています。これは【スターシステム】と呼ばれています。

トップスターは必ず男役の生徒が務めます。公演のポスターなどでもメインになるので、実際の舞台で観たときも一目で認識できるはず。2番手は“将来トップスターになることが(ある程度)約束されている男役”が務めます。3番手も、確実とは言えませんが、トップスター候補のひとりとして考えられている場合が多いです。

実際に舞台を観ている途中で、「誰が2番手で、誰が3番手なんだろう?」と分からなくなったときは、ショーで着ている衣装をチェックしてみてください。トップスターは衣装がまったく別ということが多い中、2番手、3番手は同じ衣装を着ていながらも、ついているキラキラの数が違うんです! もちろん2番手のほうがよりたくさんのキラキラがついています。

─宝塚の舞台はどこで観られるの?

宝塚歌劇団は専用の劇場を兵庫県宝塚市(宝塚大劇場)と東京の日比谷(東京宝塚劇場)に2つ持っています。男役トップスターが主演する【本公演】と呼ばれる作品は、宝塚大劇場と東京宝塚劇場で上演されます。通常、“宝塚を観に行く”と言った場合は、この本公演を指すことがほとんど。

宝塚大劇場
宝塚大劇場
東京宝塚劇場
東京宝塚劇場

そのほか、“全国ツアー”や“外箱公演”と呼ばれる公演があります。全国ツアーは本公演のあとに、本公演でやったお芝居、もしくはショーを上演作品として、文字通り全国(その組のトップスターの出身地が組み込まれることが多い)を回るツアー。外箱公演と呼ばれるのは、前述の2つの劇場以外の劇場で行われる公演を指します。“外箱”と呼ばれる劇場には、宝塚バウホール、シアター・ドラマシティ、日本青年館、日生劇場、神奈川芸術劇場、東京建物 Brillia HALLなどがあります。

─宝塚ではどんな作品が観られるの?

宝塚で上演されるお芝居には2つのパターンがあります。ひとつは【オリジナル】と呼ばれる作品で、宝塚歌劇団に所属する演出家がそれぞれのトップスターが持つ魅力や特性、イメージなどに合わせてストーリーや役柄を当て書きしたもの。各組の特徴を捉えて作品が描かれているので、その組や組に所属している生徒さんを良く知っている人なら間違いなく楽しめます! 【オリジナル】はお芝居とショー(レビュー)の2本立てで構成されることがほとんどです。

もうひとつは【一本物】と呼ばれる作品。こちらは休憩をはさんでお芝居が1幕、2幕に分かれていて、最後にプチサイズのショーがついているもの。こちらは、海外ミュージカルや映画、漫画原作を宝塚版にアレンジしたものが多く、例えば『ベルサイユのばら』はこのタイプに相当します。ほかにも有名なところでは『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』や『ファントム』、『ロミオとジュリエット』『1789 -バスティーユの恋人たち-』といった海外ミュージカルもこのタイプ。漫画原作の一本物には、『ポーの一族』や『はいからさんが通る』、『るろうに剣心』などが挙げられますし、また映画をベースにした一本物だと『オーシャンズ11』や『カサブランカ』『誰がために鐘は鳴る』『風と共に去りぬ』などがあります。

これを見て「あ、エリザベート観てみたい!」とか「オーシャンズ11が観られるの?」なんて思う人もいそうですが、これらもまた必ずしもいつも上演されているわけでないので、そこのところはご了承を。ただ、エリザベートやファントム、ロミオとジュリエットといった演目はある意味宝塚の“ドル箱”的演目でお客さんの入りも格別にいいので、数年ごとに定期的に上演されています。ぜひチャンスを狙ってみてください。

宝塚歌劇を観劇する方法、服装、マナーは?

─チケットはどうやって取ればいいの?

さて、宝塚の組についても理解したし、観てみたい演目も何となく決まったアナタ。次に来るのは「どうやってチケットを取るか」です。

宝塚歌劇団には【宝塚歌劇Webチケットサービス】という公式のチケット販売サービスがあります。こちらは登録するだけで公演チケットを24時間購入することができるので、「宝塚を観に行きたい!」と思ったときは、まずこのサービスに登録しましょう。

そのときに【宝塚友の会】というワードが目に入ると思いますが、これがいわゆる宝塚の“公式ファンクラブ”です。宝塚のチケットを最も早く入手するには、この【宝塚友の会】の会員であることが条件となります。一般前売に先がけて先行販売があり、しかも宝塚大劇場および東京宝塚劇場の一番良席とされるSS席(1列目~7列目センターブロック)を入手できるのは、やはり友の会の会員のみ! 入会費(¥1000)と年会費(¥2500)はかかりますが、SS席が当たる可能性があるというのは嬉しいところ。確実にチケットを手に入れたい、そして良席で観たいと思うならこの友の会への入会が必至です。

それ以外のプレイガイドでもチケットを入手することは可能ですが、いわゆる“一般発売”が行われるころにはほぼ売り切れてしまっていることがほとんど。最近は映画館でのライブビューイングのチケットしか取り扱ってないという可能性も。そんなときにチェックしたいのが、VISAやJCBなどカード会社が行っている先行販売です。日程は限られてしまいますが、中には【貸切公演】などを実施している場合もありますので、自分が持っているカード会社のHPなどをチェックしてみて。ほかにも大手新聞社など、スポンサーについている会社も独自の先行販売や貸切公演を行っています。

─生徒さんのファンクラブってあるの? それに入るにはどうしたらいい?

インターネットで少し検索を行えば、通常、どんな俳優さんも女優さんもそれぞれのファンクラブがすぐに見つかるでしょうし、そのままオンラインでファンクラブに入会することも難しくありません。しかし、宝塚歌劇団は前述の公式ファンクラブである【友の会】以外、いわゆる生徒さんそれぞれの【公式ファンクラブ】というのはありません。

ただし、それぞれの生徒さんの私設ファンクラブというのは存在します。それは【会】と呼ばれ、その生徒さんが出演する公演のチケットを優先的に申し込むことが出来るほか、入り待ちや出待ちができたり(※1)、【お茶会】と呼ばれるファンミーティングに参加することもできます(※2)。※1、2 現在はコロナ対策のため実施されていません。

この【会】に入るには、自分が応援したい生徒さんにファンレターを書くのが最も王道な方法。ファンレターは宝塚大劇場公演中なら大劇場宛てに、東京宝塚劇場で公演中なら東京宝塚劇場宛てに出すと、本人に届きます。ファンレターの中に「○○さんの会に入りたいのですが、どうしたらいいですか?」と書いておくと、ご自身の会を運営しているスタッフの方から連絡があるそうです。お気に入りの生徒さんが出来たら、勇気を出して【会】に入ってみることもアリです!

─観劇中のマナーは? 気をつけるべきことはある?

宝塚以外でも劇場にお芝居を観に行ったことがある方なら、何も心配することはありません。観劇中に前のめりになることはNGですし、後ろの方の視線を遮ってしまうようなお団子頭にしていくこともダメ。帽子をかぶっていた場合は、係員の方に注意を受けると思いますが、それらはほかの劇場でもNGとされていることばかり。「宝塚だから!」と気負わずにリラックスして観ましょう。

ひとつだけ、ほかのミュージカルやストレートのお芝居と明らかに違うところがあるのですが……。それは拍手をするポイントです。「好きなところで拍手していいんじゃないの?」と思われそうですが、曲とセリフの繋ぎなどいろんなバランスがあるらしく、「あれ? 曲の終わりには必ず拍手するんじゃないの?」と思っても“しない”パターンもあるんです。なので、初見のときは周りを見渡し、周囲の拍手のタイミングに合わせてください。何度も観るうちに、何となくタイミングが分かってくると思います!

あと、パンフレットはぜひ購入を! トップスター、2番手、3番手くらいまでは見分けがつくと思いますが、宝塚の舞台メイクは少し特殊なので、それ以外の下級生の方の顔がごっちゃになってしまうことも多々あります。「誰が誰か分からなくてストーリーを見失ってしまった……」なんてことにならないように、劇場についたら最初にパンフレットを購入して、大まかなストーリーと生徒全員の顔をチェックしておくことをおすすめします。気に入った生徒さんが見つかったときにすぐに調べられる!という利点もあります。

さて、初めての宝塚観劇のためのハウツーはいかがでしたか? 「宝塚は演目の選び方も分からないし、劇場に行くまでのハードルが高くて……」なんて思っている方の背中を少しでも押すことができていれば嬉しいです! 最後に宝塚の専門用語の解説をして、終わりたいと思います。ぜひ劇場に足を運んでみてください!

<おまけ>宝塚をもっと楽しめる用語辞典

エトワール

オペラで言うところのプリマドンナ。フィナーレの最初にソロで歌を歌いながら大階段を下りてくる。エトワールに選ばれるのも、生徒さんにとっては名誉。

大階段(おおかいだん)

フィナーレで生徒が降りてくる階段。全部で26段あるそう。足元を見ずにまっすぐ前を見て下りてくる生徒さんの姿はいつ見ても圧巻。

銀橋(ぎんきょう)

舞台の前面、オーケストラピットを囲むように設置してある通路のようなエプロンステージ。ショーの中詰めなどでトップスターをセンターに生徒さんがズラリと並ぶとテンションもマックスに!

研究科(けんきゅうか)

宝塚音楽学校を卒業して歌劇団に入団すると、研究科1年という扱いに。(音楽学校では1年目を予科生、2年目を本科生と呼ぶ)。なので、入団してから何年目、というのを研究科〇年生と呼ぶことに。たとえば入団7年目は研究科7年生、縮めて研7(けんなな)と呼ぶ。

シャンシャン

フィナーレで全員が手にしている小道具。それぞれのお芝居やショーにちなんだものが作られる。

生徒(せいと)

宝塚歌劇団に入団した劇団員は、音楽学校からの流れで、常に「生徒」と呼ばれる。

羽根

フィナーレで男役トップスター、娘役トップ、2番手、3番手の男役が背負って出てくる衣装装置のひとつ。トップスターが背負う羽根には“ナイヤガラ”と呼ばれる“タレ”のようなものがついており、その重さは20kgにもなるという。

取材・文/前田美保

Edited by 三好 さやか

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