ぐるぐるぐるぐる。私はとにかく色々なことをぐるぐると考えてしまう。特に悲しいこと、悔しいこと、むかつくことを。そんな私は最近、大きな人生のテーマを掲げている。それは“今を生きる”ということだ。
8月の暑さにやられて体調がすぐれず、さらに落ち込むこともあり、元気がない日々があった。そんな中、人のご縁がつながってゆく不思議な流れがあったので、私は新しい出会いの場へ積極的に足を運んだ。ピラティスの先生や、治療院の先生や、スポーツ内科の先生……それぞれの角度から私の心と体を分析してもらった。
ある方とお話ししているとき、こんな事を言われた。
「ベッキーさんは、“今”を生きてない」と。
なんだかわからないけど、怖く思った。すると、その方は続けた。
「みなさん、過去→今→未来が繋がっていると思っているんですけど、でも実は“今”だけ別次元なんです。人は“過去”や“未来”を考えるからぐるぐると沼にハマって抜け出せなくなるんです。人生は“今”の連続です。“今”をしっかり生きてください」
なるほど。これはぐるぐる病が持病の私にはいいお薬だ。ありがたい。その日から私のテーマは『今を生きる』になった。
例えば、料理中。私は野菜を切りながら、よくぐるぐると考える。ふと前日の嫌なことを思い出し、ムカ。さらにそこから派生して、何週間か前の出来事もリンクさせて、ムカムカ。ぐるぐる、ムカムカ、ぐるぐる、ムカムカ……。いつもの沼の始まりである。でもそんなときはお薬だ! はい! 『今を生きる』! ぽちっと気持ちを切り替えてみる。
ザクザクっ! おっ、きゅうりがいい感じの薄さで切れた。あ、人参少し余ったから細かく刻んでサラダにかけようか。ん? なんかまな板の汚れ気になるからあとで熱湯で除菌しよう!
……なんとも平和で健康的な時間だ。こんなシンプルなことでいいのに、それが出来なかったなんて……。もっと早くこの方法に気づきたかった。
とはいえ、ぐるぐるから抜け出すのが難しいときもある。私もいつも「考えたくなくても、考えちゃうの!!」と思っていた。でも、きっとそれは、考え“ちゃう”のではなく、自分から考えに“いってる”ところがあると思う。だからこそ日々のトレーニング。事あるごとに「私、ちゃんと“今”を生きてる?」と確認。もし過去や未来を考えて元気がないのなら、すぐに切り替えて、今目の前で起こっていること、今目の前にある素敵な景色にピントを合わせる。それを繰り返して、心をトレーニングしていくことが大事だと思う。
何歳になっても学びの日々は続いていくのだ。心地よい“今”を繋げていったら、素敵な未来と出合えそうだから、私は“今”を丁寧に生きようと思う。
▼ベッキーの「新こきゅう」連載の記事はこちら
- 自分の心にインタビューをする【ベッキー書き下ろしエッセイ連載第1回】
- 自分になかった発想を受け入れる【ベッキー書き下ろしエッセイ連載第2回】
- カウンセリングを受ける素晴らしさ【ベッキー書き下ろしエッセイ連載第3回】
- 謎の正義感に駆られた時代遅れの頑張り屋【ベッキー書き下ろしエッセイ連載第4回】
▼過去のインタビュー記事はこちら
ベッキー/Becky
1984年生まれ。神奈川県出身。14歳で子ども向け番組『おはスタ』でデビュー。以降、バラエティやトーク番組、雑誌などで活躍。2019年にプロ野球指導者の片岡保幸さんと結婚し、2020年春に第一子、2021年春に第二子を出産。2021年には「第14回ペアレンティングアワード」でママ部門を受賞。洋服のデザインや絵画制作も行い、カラフルなアクリル画が印象的な「Becky art」も人気。YouTubeチャンネル「ベツキイ!!!!」も、絶好調配信中。
撮影、イラスト、文/ベッキー 撮影(ポートレイト)/猪原悠
Edited by 渕 祐貴
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