「わがままボディは、あえて役作りだと言ってきます(笑)」(北村匠海)
―映画『とんかつDJアゲ太郎』では、全て渋谷でロケをされたと伺いました。とんかつの被り物をしてスクランブル交差点を歩くシーンが特に印象的でしたが、いかがでしたか?
北村匠海
加藤諒くんとも話していたんですけど、ものすごく進化しているこの場所で、今の渋谷を残せたというのが単純に嬉しかったです。恥ずかしさは多少なりともありましたけど(笑)、今回は振り切るシーンしかなかったので、とんかつの被り物をするとか、一個ギミックがある方がスイッチを入れやすくてありがたかったです。
山本舞香
公園にいる子供たちの前で踊ったり、私は絶対に恥ずかしいだろうなと思ったけど(笑)、“三代目道玄坂ブラザーズ”(加藤諒・浅香航大・栗原類・前原滉)とか、フワちゃんがいたから心強いよね。
北村匠海
そう。それこそみんな同じ格好をしてたから。
―撮影中に一番笑ったエピソードは?
北村匠海
僕が一番パンチのあるアゲ太郎役だったので、誰かで笑うみたいなことは意外となかったんですけど、(舞香ちゃんは)どうですか?
山本舞香
いやぁ、(北村)匠海くんが面白すぎるんですよ。完成した試写を見たとき、部屋で一人で踊っているシーンや、短パンとノースリーブで走りに行くシーンとか本当笑いました。あとね、わがままボディすぎて……。
―それは、アゲ太郎としての役作りで?
北村匠海
あえてそう、と言っておきます(笑)。あのときめちゃくちゃ太っていたんですよ。それが意外と役にマッチして良かったけど。自分に対して何の努力もしてこなかっただろうし、っていうアゲ太郎のボディです。
山本舞香
食べたいもの食べて生きてきたんだろうなっていうとんかつ屋の息子感(笑)。アゲ太郎っぽい。ポスターの顔、今と全然違うよ?
北村匠海
丸いよね。映画を見ていて自分で一番びっくりしたのは、赤いランニングウェアを着て、父親に『俺、DJになるよ!』っていうシーン。ダンスの撮影が前日の深夜まであって、そのまま現場で仮眠を取ってから早朝で渋谷をダッシュだったから、もうパンパンに顔が浮腫んでいてブサイクすぎた(笑)。
山本舞香
あぁ、アゲ太郎愛おしい〜! っていう感じが、私はうまく出ていたと思うよ(笑)。
「弱いところを見せないのが、匠海くんとアゲ太郎の共通点」(山本舞香)
―山本さんは、ヒロイン・苑子をどんなイメージで演じられましたか? また、北村さん的にキュンとした印象的だった苑子とのシーンを教えてください!
山本舞香
常にニコニコしていて憧れられるという王道なヒロインだけど、人の気持ちがすごくわかる子だなっていう印象で。アゲ太郎が落ち込んだときには、『私もちょっと違うけど同じ経験があって……』って一度自分のことをさらけ出してから、『じゃあアゲ太郎くんもこうだよね』という励まし方をする子なんです。それをあえて役作りをしたというよりは、匠海くんと向き合ってお芝居をして、感じたものを返していた感じです。アゲ太郎と匠海くんって、弱いところをあまり見せないでカッコつけるところが、ちょっと似ているんですよ。5年前と変わらない。それを受け取って苑子なりのお芝居をしていたので、アゲ太郎が匠海くんでよかったなと思っています。
北村匠海
実は、苑子にとってすごく大事なシーンを序盤に撮影したんですよ。DJをやろうってアゲ太郎の背中を押してくれるシーンなんですけれど、それを舞香ちゃんが堂々とやっているのを見て、身を委ねられるのを感じて。そこから月日が流れての、最後にDJをするクライマックスシーン。苑子というか、舞香ちゃんの顔が満面の笑みで。“よくがんばったね、お疲れさま”という表情を見て、アゲ太郎としても、僕自身としてもすごく救われた感じがありました。
山本舞香
お互いに泣きそうになってたもんね。ステージと客席で目が合った瞬間に、頑張ったなこの現場っていう。
北村匠海
そうそう。しかもこのシーンは、映画『仰げば尊し』以来の共演でずっと親友の(伊藤)健太郎ともセッションできるシーンだったし、いろいろなことが相まって。これはアゲ太郎として感動しているのか、北村匠海が感動しているのかっていう、役との垣根がないくらい不思議な感覚になっていましたね。
「恥ずかしかったのは、舞香ちゃんに見られながら踊るシーン」(北村匠海)
―撮影中、お二人がアゲアゲだと思った瞬間は?
北村匠海
僕は無理くりテンションを上げてたからなぁ……。
山本舞香
撮影が始まる前は、毎回必ず変顔してたよね。一人で。
北村匠海
そうしないとアゲ太郎を演じきれなくて! 一度変な顔をしてから撮影に挑んでいたんだけど、舞香ちゃんにめちゃくちゃ見られてたっていう。
山本舞香
見ちゃった(笑)。アゲアゲだったよ。でも、匠海くんは基本的にみんなをアゲてくれていましたけどね。イラッとしたときにする変な動きとか、笑わせようと思ってやっているわけじゃないけれど、なぜか面白くて私も気分が上がりました。
北村匠海
自分的に少しアゲれたかもと思ったのは、舞香ちゃんの周りで踊りまくるシーンの撮影ですかね。
山本舞香
あれ、カッコ良かったよ?
北村匠海
超恥ずかしかったんだよ! しかも相手、舞香ちゃんだし。
山本舞香
どういう意味!?(笑) 全然恥ずかしそうに見えなかった。
北村匠海
人前で踊ることが一番苦手なんですよ。昔から気心知られている舞香ちゃんが相手だからこそ、踊っている僕を見られるのがすごく恥ずかしくて。だからもう逆にめっちゃ気分をアゲました。
山本舞香
(笑)。何回か笑いを堪えられなくてNGになっちゃったよね。
北村匠海
そう。しかもそのシーン、予告動画にも大々的に使われるっていう(笑)。
―作品では、キャベツの千切りやとんかつを揚げるところなど色々な音が使われていましたが、お二人のバイブスがアガる音はありますか?
山本舞香
自然と体がリズムにのっちゃう歌とか?
北村匠海
僕は音楽じゃないけど、ある整体の施術でポキポキって骨が鳴る音ですね。動画サイトでその音が流れている30分くらいの映像があるんですけど、ずっと見ています。
山本舞香
また変なもんに手を出して! 咀嚼音(ASMR)も好きじゃなかった?
北村匠海
咀嚼音も好き! でも今はこのポキポキっていう動画見て欲しい。
山本舞香
この子、少し変わっているんです。
―(笑)。それでは最後に、お二人のソウルフードを教えてください!
北村匠海
せーの。カレー!
山本舞香
ラーメン!
北村匠海
あ、僕もラーメンにしよう。
山本舞香
ラーメンめっちゃ好きなんですよね。家系。食べた後、ちょっと後悔するけど、食べるとやっぱりアガる!
北村匠海
わかる。僕、『井の庄』のラーメンがめちゃくちゃ美味しいので好きです。
北村匠海(きたむらたくみ)
PROFILE:1997年11月3日生まれ、東京都出身。2011年にダンスロックバンド「DISH//」を結成し、メインボーカル&ギターを担当している。2017年、映画『君の膵臓をたべたい』で「第41回日本アカデミー賞新人俳優賞」を受賞。その後、映画『春待つ僕ら』(’18)、『十二人の死にたい子どもたち』(’19)、『思い、思われ、ふり、ふられ』(’ 20)、ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』(’20)など多くの作品に出演する。今後は映画『東京リベンジャーズ』が2021年に公開予定。
山本舞香(やまもとまいか)
PROFILE:1997年10月13日生まれ、鳥取県出身。2010年、フリーペーパー『鳥取美少女図鑑』がきっかけでスカウトされ、翌年芸能界デビュー。『それでも、生きていく』(’11)でドラマ初主演、『チア☆ダン』(’18)、『ハケンの品格』(’20)、映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(’18)、『今日から俺は!!劇場版』(’20)などに出演。女優活動のほか、雑誌のモデルやバラエティ番組『王様のブランチ』にレギュラー出演するなど、幅広く活躍している。
映画『とんかつDJアゲ太郎』
©︎2020「とんかつDJアゲ太郎」製作委員会
とんかつ屋三代目の跡取り息子・アゲ太郎(北村匠海)は、たまたま訪れたクラブで衝撃を受け「とんかつDJ」を目指そうとする。全ては一目惚れした苑子(山本舞香)の心を射止めるためにー。しかし、豚肉にもDJ機材にも触ったことがないアゲ太郎の道のりは、一に勢い、二に勘違い、三に運命の出会い!?と、爆走爆笑の大ハプニングだらけ! 果たして「とんかつDJ」として頂点を目指せるのか!?
全国公開中
http://agaru-movie-tda.jp/
【出演】
北村匠海、山本舞香、伊藤健太郎、加藤諒、浅香航大、栗原類、前原滉、池間夏海、片岡礼子・ブラザートム、伊勢谷友介
撮影/大靏円(昭和基地 ¥50 management) 取材・文/高橋夏実
Edited by VOCE編集部
公開日: