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化粧品を使う私たちが海を守るためにできること【STOP!海洋汚染Vol.4】

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化粧品を使う私たちが海を守るためにできること【STOP!海洋汚染Vol.4】

SDGsの目標の14番目に『海の豊かさを守ろう』というのがあります。海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する、と書かれていますが、実際に頭の中に【海の豊かさの危機】を明確に思い浮かべられる人はどのくらいいるでしょうか。海洋汚染の真実に迫ります。

【STOP!海洋汚染】シリーズはこちら!

阪口秀 先生

海洋政策研究所所長

阪口秀 先生

1981年4月 京都大学農学部農業工学科 入学、1985年4月 京都大学大学院農学研究科修士課程農業工学専攻 入学、1987年4月 京都大学大学院農学研究科博士後期課程農業工学専攻 入学。神戸大学農学部助手、オーストラリア連邦科学技術研究機構(CSIRO)主任研究員、海洋研究開発機構数理科学・先端技術研究分野長、同理事等を経て、現在、笹川平和財団海洋政策研究所長、笹川平和財団常務理事。

海を毎日身近に感じられる場所に住んでいる人ばかりではありません。しかしながら、下水を通じて、私たちの日々の生活の残滓は一滴残らず海へと注ぎ込まれています。「化粧をしないで、とは言えないし、そういったところで聞いては貰えない(笑)。でも、海に流さない方法を考えることはできます」と阪口先生。前回はクレンジングの方法について具体的にディスカッションしましたが、そのほかに私たちができることは何なのでしょうか。

いよいよ最終回を迎えた阪口先生のお話。今回は私たち、化粧品を毎日使うユーザー側の意識改革について、阪口先生が手ほどきをしてくれます。

日焼け止めに関して言えば、指定成分が入った製品を【選ばない勇気】を持つこと

VOCE編集部
VOCE編集部

前回の最後に、“化粧品を使う側の意識改革”というテーマが出てきましたが、それについてもう少し深掘りしていきたいと思います。


阪口秀先生(以下、阪口)
阪口秀先生(以下、阪口)

化粧品会社サイドも日焼け止めに関しては、各社今年色々と動きがあったようですね。少しずつでも、それは大いなる一歩です。だからこそ、今度はユーザー側が意識的に変わっていく番だと思いますよ。
毎日化粧をしている人が多いと思いますが、その化粧品が海洋汚染とリンクするという意識を高めることができたら、「化粧品に関して私はこれだけ意識しているんだから、ほかのことでも“海の豊かさを守る”ことができるかも」という意識が芽生えるのでは、と思います。まずはひとりひとりがそう思うことが必要です。


VOCE編集部
VOCE編集部

そうですね、まずは一人一人が意識するだけでも変わっていきますね。


阪口
阪口

そのうえで、さらに多くの人に【化粧をしながら、同時に海を守る努力をしている】姿勢が浸透してくれば、化粧品とまったく違う業界の人たちも“意識改革”や新しい取り組みをスタートせざるを得ない状態になります。
『海の豊かさを守る』という目標は、決して化粧品メーカーだけが取り組むことではないんですよね。化粧品を使うユーザーが意識を高く持ってくれることで、海に有害であるほかの原因、たとえばお菓子のラッピングやタバコといった、恒常的に海に流れてしまっているものも意識をしてほしいですし、そのきっかけになると思っています。


VOCE編集部
VOCE編集部

前回、化粧を落とすときに【洗い流さない】という選択についてお話しいただいたと思いますが、ほかにもユーザー側ができることはありますか?


阪口
阪口

まずは、第1回のときにお話しした10種類の成分について、それらが入っているものを選ばない、使わないという姿勢です。10種類の成分を全て規制しているのはパラオだけで、ハワイやフロリダなどほかの地域では規制の厳しさが違っているのですが、でも、「規制されてないから使っていい」というわけではないので、可能な限り、一番厳しい規制に合わせていくのがベストでしょうね。
何度も繰り返してお話ししていますが、パラオやハワイ、フロリダに行くときだけの話ではないので、デイリーに使っているものも成分表を見て、10種類の成分が入ってないかどうかをチェックするようにしてほしいと思います。


VOCE編集部
VOCE編集部

成分表示をくまなくチェックするクセをつけることは必要ですね。


阪口
阪口

とはいえ、メーカーがそういった成分を使っていたらユーザーはどうにもしようがないというのも事実です。いくら指定成分が入っていたとしても、性能が良くて安かったら使ってしまうと思うんです。そこはしょうがないですから。
だからこそ、まずはメーカーが「指定成分を入れない意識」を持つことが重要です。それに代わる材料を探して、研究を重ねていくことも必要ですね。それと同時に、ユーザーはどうしてもそういったアイテムを選ばないといけないのなら、「水道で流す量を減らす努力」をする、もしくは「減らせる製品を選ぶ」ことを意識してほしいと思います。ユーザーができるのは、まずそこからですよね。


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成分だけではなく、包装も問題

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