「誰しもが経験しそうなことなので、リアルに演じました」 (浜辺美波)
―恋愛映画の名匠・三木孝浩監督が演出を手がけた映画『思い、思われ、ふり、ふられ』。気持ちの違いや変化に関して繊細な演技が求められたかと思いますが、役作りで意識したポイントはありますか?
北村匠海「まさにその繊細さが大事だったので、感情を表から引いていく芝居というのを心がけました。表情とは裏腹の感情や、セリフで言っている言葉とは逆の想いを演じながら、それを観ている人に『ん?』と思わせなくちゃいけないというのが今回の課題だったんです。僕としては、映画『君の膵臓をたべたい』の頃からそういう役が多くて結構得意な土俵ではあったのですが、改めてこういう役を演じるのは楽しいなと感じましたね。無理なくできた気がします」
浜辺美波「この作品では、私が演じた朱里だけを追ってくれるわけではなく4人のことを描いているので、一つ一つのシーンがすごく重要で。だからこそ、本心を言うわけじゃないけど伝えないといけないことがある、という部分を丁寧に演じました。例えば、最初は自分がアドバイスをする立場だったのに、由奈(福本莉子)が成長することで焦ってしまうみたいな。誰しもが経験することだと思ったので、そこは共感してもらえるようにリアルにできたらなと思いました。私も北村(匠海)さんのように、無理をしないで演じられたというか、朱里として成長しながら青春を送ったと言う感じが強かったです」
「本音を伝えるのが苦手なところは、僕と似ているなと思います」 (北村匠海)
―お二人が今回演じられた役で共感できる部分を、それぞれ教えてください!
北村匠海「僕が演じた理央は、朱里への想いを閉じ込めて“俺には言えない美学が男としてある”みたいな、己に自惚れしている感じがあるんですが(笑)。僕も学生時代、親や友達、仕事においても自分の気持ちを伝えるのが苦手だったので、そういう部分はちょっと似ているなぁと思います。今となっては違いますけど、長らくそういうタイプだったので」
浜辺美波「朱里は親が転勤族ということもあり、人と距離を取るのが上手だったり、どこか明るい自分を作っている感じがあるんですけど、私はどちらかというと元々は由奈タイプで。喋るのが得意じゃないし、これが自分だからと思っていたんです。でも、それだと全然良いことがなくて(笑)。いつからか一本ネジが外れたように明るくなった時期があって、明るい人がいると周りにいる人も明るくなるんだなというのを感じたので、明るくなろうと思ったんです。 “自分のことを変えよう”と思ってそうなったので、その部分は朱里と似ているかもと思いました」
―北村さんは浜辺さんに、浜辺さんは北村さんに、お互いが感じた役に似ている部分はありますか?
浜辺美波「そうだなぁ〜。表面的な部分だけでいうと、同い年ぐらいの子から見てもちょっと飛び抜けているくらい不思議な大人っぽさがあるという感じが、ミステリアスな理央と共通するなと思いました。北村さんは最初に会ったときから常に想いを馳せているというか、雰囲気を持った佇まいをされていらっしゃるので(笑)。学生の頃も目立つ方だったんだろうなと思います。理央も喋る方じゃないのに目立つような、独特な雰囲気を持っているので」
北村匠海「僕は地味でしたよ(笑)。美波ちゃんは、実は周りを明るくさせたり、何かを与えられる朱里っぽさがあったんだなというのを今回感じました。さっきも美波ちゃんがお話していましたが、会うまでは昔の印象だったので、由奈っぽいのかなと思っていたんですよ。映画『センセイ君主』を観てびっくりしたくらい」
浜辺美波「えっ!?(笑)」
北村匠海「まじ……? 嘘でしょ? みたいな(笑)。だから、久しぶりに再会して一緒に芝居をしていくなかで朱里のような部分を感じました」
浜辺美波「ありがたいですね♪」
「全部を許してみたら、どんなときでも楽しくなったんです」 (浜辺美波)
―作中に流れる4人それぞれのナレーションも耳に残る演出でしたが、浜辺さん演じる朱里のセリフ“みんなが幸せになる方法があればいい”という言葉にかけて。最近お二人が幸せになるためにした行動は?
北村匠海「素直になること!」
浜辺美波「それ一番難しい!」
北村匠海「そう、一番難しい。でもやっぱり素直になるってすごく道が拓けてくるんですよ。自分の素直な感情を伝えることで、自分自身の生き方がブレなくなるから。僕が組んでいるバンド・DISH//のメンバーや、事務所のスタッフさん、家族に対しても、昔は言えなかったことをきちんと話すということを最近しましたね」
浜辺美波「私は、全部を許すようになりました。今までは結構決め込んだりとか、自分のルールみたいなものがあって、それが原因でイライラしちゃうことが多かったんですけれど、一回それがプツンと切れたときがあって。でもいいやって許してみたら、全部が面白くなっちゃって。今は何があってもすごく楽しいという感じになっちゃった(笑)」
北村匠海「お。いらっしゃいませ、悟りルートへ!」
浜辺美波「(笑)。これから入門します」
「(浜辺)美波ちゃんは、昔から内面的な美しさがあるよね」 (北村匠海)
―それでは最後に。お互いが“美しい”と感じる部分を教えてください!
浜辺美波「パーツでいうと、北村さんは口ですかね。笑うときの口の形がキレイなんですよ。あまり笑顔で撮影したりはしないんですけれど、いいなって」
北村匠海「確かにあんまりやらないよね。いつも、『北村くんもうちょっと笑ってくださーい!』とかすごく言われる(笑)」
浜辺美波「そう。でもだからこそ、笑顔なときの口はとっても美しいなと思います。内面でいうとすごく精神が安定しているところ。お仕事がハードで寝ていないときもあるだろうに、そういうときでも穏やかな雰囲気を持っていらっしゃるから。みんなイライラしているときも、北村さんを見ていると落ち着くような感じでした」
北村匠海「美波ちゃんは、目がキレイ。小柄だし透明感があるのに、目力は強くて印象的。あと、人を引き寄せる魅力がすごくあると思います。映画『君の膵臓をたべたい』で出会った頃と今の美波ちゃんって全然違うし、お互いの距離も違うから変な感じがするんですけれど、スタッフさんとかを見ていてもみんなが美波ちゃんのこと好きだなぁというのがわかる。内面的な美しさが変わらずあるからなんだろうなと思います」
右:浜辺美波(はまべ・みなみ)
PROFILE:2000年8月29日生まれ。石川県出身。第7回「東宝シンデレラ」オーディションで芸能界入り。スペシャルドラマ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』やNHK連続テレビ小説『まれ』(’15)、映画『君の膵臓をたべたい』で注目を浴びる。その後、映画『センセイ君主』(’18)、『映画 賭けグルイ』の出演や、アニメ映画『HELLO WORLD』(’19)、『名探偵コナン 緋色の弾丸』(’20)の声優を担当。現在放送中のドラマ『私たちはどうかしている』にも出演している。今後はドラマ『タリオ 復讐代行の2人』が10月9日よりスタート、映画『約束のネバーランド』が今冬に公開予定。
左:北村匠海(きたむら・たくみ)
PROFILE:1997年11月3日生まれ。東京都出身。2008年、映画『DIVE!!』で俳優デビュー。映画『陽だまりの彼女』(’13)、『信長協奏曲』(’16)などで注目を浴びると、2017年、浜辺美波とW主演を務めた映画『君の膵臓をたべたい』で話題に。その後も、映画『勝手にふるえてろ』、『スマホを落としただけなのに』(’18)、『十二人の死にたい子どもたち』(’19)と数多くの作品に出演。今後も、映画『とんかつDJアゲ太郎』、『さくら』、『東京リベンジャーズ』などの公開を控えている。2013年にデビューしたダンスロックバンド「DISH//」のメインボーカル&ギターとしても活躍中。
映画『思い、思われ、ふり、ふられ』
©2020映画「思い、思われ、ふり、ふられ」製作委員会
明るく社交的な朱里(浜辺美波)、内向的でうつむきがちな由奈(福本莉子)、クールな理央(北村匠海)、爽やかで天然な和臣(赤楚衛二)。偶然出会ったタイプの全く違う4人は、同じマンションに住み同じ学校に通う高校1年生。親同士の再婚で家族となり、朱里に言えない恋心を抱える理央。そんな理央に憧れるけれど自分に自信が持てない由奈。和臣に惹かれていき、自分の感情に戸惑う朱里。ある秘密を目撃してしまい自分の気持ちに蓋をしてしまう和臣。1人の告白をきっかけにそれぞれの感情は複雑に絡み合い、相手を思えば思うほどすれ違ってしまう。4人の切なすぎる片想いの行方は―?
8月14日(金)より全国ロードショー
【出演】
浜辺美波 北村匠海 福本莉子 赤楚衛二 上村海成 三船海斗 古川雄輝 / 戸田菜穂
撮影/楠本隆貴(will creative) ヘアメイク/佐鳥麻子(北村匠海さん)、鎌田順子(浜辺美波さん) スタイリスト/鴇田晋哉(北村匠海さん)、瀬川結美子(浜辺美波さん)
(北村匠海さん衣装)
シャツ ¥39000、パンツ ¥36000 共にビューティフルピープル(ビューティフルピープル 渋谷パルコ 2F)
取材・文/高橋夏実
Edited by VOCE編集部
公開日: