連載 齋藤薫の美容自身stage2

【齋藤薫の美容自身2】あなたは女としてホンモノか?ニセモノか? 今こそ見極めの時!

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人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。今月のテーマは“あなたは女としてホンモノか?ニセモノか? 今こそ見極めの時!”。毎月第2水曜日更新。

男のニセモノは人を幸せにできない
女のニセモノは私の幸せだけ考える

「あいつはニセモノ」……そういう言い方をよく耳にする。人間をホンモノとニセモノに二分してしまう評価の仕方、ちょっと怖い気もするけれど、わざわざ自分をホンモノに見せようとするタイプに限ってニセモノが多く、ホンモノのふりをするからニセモノがばれてしまう、という方程式がそこにあるのだから仕方のないこと。

政治家から芸人まで、不正やらゲス不倫やらで日々ネットやテレビを騒がせているのは、ホンモノ顔したニセモノゆえと言わざるをえない。で、私たち女がこの分類に関してとても神経質になるのは、極端な話、自分がその男と人生を共にしたら幸せになれるかなれないか、という判断がそこに含まれているからなのだ。立派なふりして、小心で小ずるかったり、善い人のふりをして、全く自己中心で自分しか愛せなかったり、心のない男はおしなべて人を幸せにできないからニセモノ。社会的な地位などなくても、人への愛情さえあればホンモノと呼びたい、それが女心である気がするのだ。

ちなみに、女性にはホンモノかニセモノかという言い方をあまりしないが、女のニセモノは主に“美しい心”を装う。ひたすら自分の幸せのためだけに。おとぎ話の昔から、「ガラスの靴が入るか入らないか」という基準で国中の女たちを審査したのは、とりもなおさず外見以上に、美しい心の持ち主を探し出す作業。心正しき美女が、大昔から女の最高位にあったことは疑いようがないのだ。

逆に言えば、邪悪な心の象徴としての魔女を糾弾した歴史は、心正しき美女を敬う反動といってもいい。ただいつの時代も、何をもって“心の美しい醜い”を見分けるのか、曖昧かつ難しい問題だったが、今ようやくそれが明快になってきた。社会的な問題に対してどういう心を持っているか? そこで心の美醜が測られる時代になったのだ。

アメリカでは今、いわゆるMe Too運動に続き、黒人への差別問題が激化しているが、実はここでちょっとスキャンダラスな出来事が起きている。

大人気を博した青春ドラマ『glee/グリー』でブレイクした女優のリア・ミシェルが、ある差別をめぐって、CMのクライアントから突然の契約破棄を言い渡されたのだ。リアは人種差別撲滅を支援するコメントをSNSに投稿したのだが、ドラマで共演した黒人女優サマンサ・ウェアから「彼女は偽善者、自分は共演中に彼女から激しい差別に合い“生き地獄”を味わわされた」と暴露されたのだ。その結果、大炎上。アメリカ中がその歪んだ真心を非難した。

ハリウッドの現場には昔からあったはずの、いじめや差別。でもそれが今はSNSでそっくり明るみに出て、あっという間に社会的制裁を受けるようになった。日本でも不倫に対しての制裁が昔よりずっとずっと厳しくなっているが、これもSNSの普及で、みんなが陪審員になっているから。何だか倫理感や道徳感がかつてないほど厳格に問われている。勢い、人権問題にも環境問題にもちゃんと正しい心を持つことが、本気で問われる時代になった。まさしくエシカルの時代!

エシカルを形にしている女にはもう誰もかなわない時代!

たとえばジョージ・クルーニーの妻、アマルは、有能な弁護士にして人権活動家の顔も持っている。美しすぎる上に、ハリウッド女優も霞んで見えるようなオートクチュールのドレスに身を包んで華やかな場所に登場する姿は、人権弁護士なのに派手すぎないか?贅沢すぎないか?という反感を生んでもいるが、本人はどこ吹く風。結局誰も太刀打ちできないのは、この人こそエシカルをきちんと形にしている人だから。エシカルとは言うまでもなく倫理的に、道徳的に、正しい行いを指す。これからは美しくエシカルな女性こそがクローズアップされていくはずで、アマルは心の正しさを解りすい活動にして見せていく時代の象徴として、いよいよ誰をも唸らす存在として君臨するのは間違いないのだ。

そうそう、王室を離脱してロスに出戻ったメーガン妃も、女優復帰ではなく人権問題で表舞台に出てくれば、マスコミに茶化されることなく、お望み通りスーパーセレブとして生きていけるのだろう。それどころか政治家志願を噂され始めた、いよいよエシカル美女の時代なのを、この人は知っているのだ。

もちろんエシカルな生き方は今後もっと洗練されなければならない。環境問題では17歳の環境活動家、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんの、大人も怒鳴りつけるような過激なアピールの仕方に、そこまで言葉を荒らげなくても……という声も上がったりするが、彼女が一人で始めた「金曜ストライキ」はたった1年で100万人規模に。みんな金曜の授業をボイコットして、路上で気候変動の危機を訴えているのだ。もし彼女があと少し柔らかくなったら、おそらくその何倍もの賛同が得られるのだろう。エシカルだって、やっぱりたおやかな方が伝わりやすいのだろうから。

そうこうするうちにコロナ禍へ。ただそれが、大きな意味のエシカルな意識を高めたことは確かで、コロナが収束した後は、なおさらエシカルが美の条件の一つに入ってくるはず。ちょっと耳の痛い話をすれば、海外から日本に来た若い女性は、同年代の日本女性が社会問題にあまりにも無関心であることに驚くという。それだけ日本は平和ということかもしれないが、コロナを機に、きっと少し覚醒するのだろう。もし将来に少しでも不安を感じるなら、もう少し社会の動きに敏感になるべきだ。自分たちの世代が将来どこまで幸せに生きられるか? それを考えることが、すなわち社会問題に関心を持つこと。それがエシカルなのだから

そこまで後れをとっている日本でも、さすがに様子が変わってきた。最近は女優や歌手やタレントが、こうした社会問題についてコメントするようになってきたのだ。いや欧米では何も意見を持たないことに批判が集まるのに、芸能人の社会性ある発言に、未だ批判が集まる日本って、どれだけ後れているんだろう。小泉今日子、きゃりーぱみゅぱみゅ、そして柴咲コウ……その顔ぶれを見れば、今の潮流に乗った薄っぺらな意見でないのは明らかなのに。“意見を持つ女性”こそがホンモノ、な時代なのは確かなのに。

企業にも責任を求めるSDGsが次第に行き渡ってきているせいか、地球保護を下敷きにしたホリスティック美容を長く訴求している、吉川千明さんや岸紅子さんが今改めて注目を浴びている。何より、エシカル美容を実践してきたこの人たちの、透明感ある生き生きとした美しさはリアルな説得力となっている。人間やっぱり今こそ、こういう浄化された美しさを身に付けなければいけないという目覚めは、もうすでに始まっているのだ。

もちろんコスメはオーガニックを!という単純な話ではないけれど、地球の美しさにどれだけ心を向けられるか、心の中にエシカルがどのくらいあるか、それが本当に見た目の透明感に現れてくるのは間違いないのである。

さらに言うなら、エシカルを意識しているとそれだけで、生まれながらにいい人だったような、心底美しい心の持ち主になっていくから不思議。何が正しいのかを考えていくうちに、それに矛盾した言動ができなくなる。それこそ、先に述べた女優リア・ミシェルのように、心と行動が逆向きになっていると、そんな自分に違和感を覚えるようになる。知らず知らず、自分自身で間違った行動を正すようになっていく。だから気がつけばホンモノの人格者になっていたりするのだ。地球にも他人にもぐるりと愛情を持てる、ホンモノの心ある美しい人へ。それがエシカルの最大の効用なのである。

おそらく今まで、自分の心が正しいのか正しくないのかなど考えたこともなかったはず。でも今こそ自分に問いたい。あなたはホンモノか、ニセモノか? 美しい心の持ち主なのか?

齋藤薫の美容自身/格言

「齋藤薫の美容自身 stage2」前回の記事はこちら▼
マナー逆転、常識も逆転。そんな中でマナーのある美しい大人になる方法

撮影/戸田嘉昭 スタイリング/細田宏美 構成/寺田奈巳

Edited by 齋藤 薫

公開日:

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