No.0 THE FOOL(愚者)のカード
「純粋で無邪気ゆえに無敵。何者にもなれる自由な存在を表す」
タロットの最初のカードには、「THE FOOL」というタイトルがついています。訳すと「愚者」。
「愚者」という表現はいかがなものかと思いますが、もちろん文字通り「愚かな者」という意味とは少し違います。このカードに込められているのは、「まだ何も知らない純粋無垢で自由な精神」。
「何も知らない」というのは、ある意味、無敵です。
それがどんなものか知らないからこそ冒険ができるし、恐怖心や羞恥心も生まれないのかもしれません。見方を変えると、まだスタートラインにも立っていない状態とも言えるでしょう。それを示唆したように、このカードのナンバーは「0」なのです。
では、このカードの絵を見てみましょう。
タロットの絵柄には様々な象徴が込められています。その象意を読み解くことで占っていくのが、タロット占いの真骨頂。ですから、象意を十分理解することは、占いの結果をより深めることにつながります。
今回の「THE FOOL」の絵柄を見てみると……。
一人の少年が描かれています。
少年は無邪気で汚れのない純粋性を表しています。まだまだ経験不足で無知ではありますが、心は自由。これから何者にもなれる希望のある存在です。
右手には棒を持ち、その先には袋が1つ。荷物はたったこれだけ。とても身軽です。
左手に持ったバラは、バラ色に輝く人生や未来の象徴。前途は有望です。
そしてこの少年は、なぜか崖っぷちに立っています。これは「怖いもの知らず」という解釈ができる一方で、「無鉄砲」「危険が見えていない」という意味づけもできます。この先、どんな感動や喜び、あるいは試練が待ち受けているのか、進んでみないとわからないといった状況でしょうか。
足元の犬は「危険を知らせている」とも「楽しそうな少年についてきた仲間」「純粋な心が動物に伝わっている」とも捉えることができるでしょう。
こんな崖っぷちに立っているのに、それでものんきな雰囲気で、この少年はさらに前に進もうとしています。後ろに引き返すのではなく。
その瞳は明るい未来を信じるかのように、彼方へと向けられています。
常識や既成概念に縛られず、自由な心で生きようとする少年の姿。
確かに、酸いも甘いも嚙み分けた大人にとっては、それは現実を知らない「愚か者」にしか見えないかもしれません。
でも、そう言って一笑してしまっていいのかどうか……。
そんなことを、このカードは私たちに問いかけているのではないでしょうか。
文/グロリアス星子 イラスト/サクマラン
Edited by VOCE編集部
公開日:
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