多様性がキーワードの現代、さまざまな価値観の基準は今なお変化を続けています。「美しさの基準」もそのひとつではないでしょうか。メイクは「モテ」じゃなく、自分の「好き」で決めていい。そう教えてくれるのは、メイクアップアーティストの水野未和子さん。水野さんは、一人ひとりの魅力を“ディファイン(明確化)”するメイクに定評があります。人生もメイクも自分軸を大切にして、あるがままの「私」を受け入れるための考え方をご紹介します。
教えてくれたのは…
メイクアップアーティスト
水野未和子(みずのみわこ)
オレゴンに留学後、イギリスに渡り、London College of Fashionでメイクアップを学ぶ。卒業後、フリーランスのメイクアップアーティストとしてロンドンでキャリアをスタートし、帰国後は多くの雑誌や、KOSE、POLAなどの広告、CMなどを手がける。人によって違う、その人だけの魅力をディファイン(明確に)するメイクに定評があり、数々の女優やモデルが厚い信頼を寄せる。初の著書『ディファインメイクで自分の顔を好きになる』が10月30日発売に。
【Instagram】mizuno.miwako
胸も、メイクも、「サイボーグの理想形」になってない?
メイクは、ブラジャーと一緒。そう言ったらきっと、驚きますよね? でも私、ずっとそう思っていたんです。
自分の胸をどう見せたいかで選ぶブラジャー。自分の顔をどう見せたいかで選ぶメイク。服によって見せ方を変えたり、つけ心地も大事だったり。寄せて上げて見せかける「矯正」系もあれば、スパンコールやレースで派手に気取る「装飾」系もあり。メイクを語るのに、ブラジャーに例えると、とてもわかりやすいと思うんです。
私は、日本で理想とされている「大きくハリのある胸」には憧れていません。そう見せるブラジャーは、好きじゃない。私が愛用しているのは、余計な装飾をそぎ落としたようなシンプルでミニマムなもの。自分の胸に寄り添って、輪郭をきれいに整えてくれる、つまりはディファインしてくれるものです。
日本でブラジャーを買いに行くと、「着ける人の胸に沿う作り」ではないことに気づきます。下がっていちゃいけない、広がっていちゃいけない、ボリュームがなくちゃいけない、胸の上に大きくハリを持たせるように余計な肉までもカップに入れ込んで形にする「サイボーグの理想形」になっている気がしちゃうの。
ソバカスは消すもの、まつ毛は上げるもの……、そう決め付けているメイクと同じだと思いませんか? それぞれが違っていいんです。その人の見せ方があっていいんです。自分の胸、結構好きだよ。自分の顔、結構好きだよ。それがいちばんなんだもの。
「カバー」や「カモフラージュ」に囚われていたらメイクは楽しめない!
じつは、まわりの女性たちと会話をするたび、こうも思っていました。「好きな服」はあるのに、「好きな顔」がない。「自分らしい服」はあれこれ浮かぶのに、「自分らしい顔」と聞かれると、途端に答えに困る。それはいったい、なぜだろう? って。
では、服を選ぶとき、「体型カバー」だけを考えているでしょうか? もちろん、着られる着られない、似合う似合わないなど、大前提として体型との折り合いはつけていると思うけれど、ただ、それよりも先に「好き」や「着たい」という気持ちがあるはず。その気持ちには、「私って、こういう人間なんです」という個性の主張がある気がするんです。
ところが、メイクとなると、途端に視点が「カバー」や「カモフラージュ」が主になりません? 一重の目をなんとかしたい、目の下のクマが気になるといったコンプレックスや、シミやシワ、くすみやたるみなどのエイジングを隠したりごまかしたりするという目的になりがちだと思うんです。自分にしかない個性を際立たせるというよりは、理想や平均に近づけようとするメイクに躍起になっている気がしてならないの。
もし、好きな服を着るように、好きな顔を創れたら。このうえない自信になるはずなのに。それは、コンプレックスやエイジングにばかり目を向けるのとは逆で、自分を知ること、自分を認めることになると思うんですよね。すると、メイクが義務から楽しみに変わるんじゃないかな?
メイクは楽しむもの、自分を楽しませるもの。服を選ぶ感覚で、メイクに向き合ってほしいと思うんです。そう、悩みでなく、ときめきに正直に。
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自分の中に根付いている従来の価値観を刷新するのは、もちろん容易いことではないかもしれません。それでも、水野さんの言葉はまるで爽やかな風のように、私たちの気持ちをふっと軽やかにしてくれます。もっと自由に、もっと自分の好きを大切にメイクと向き合えたら。その時、鏡には新しい顔の自分が映っているかもしれません。
『ディファインメイクで自分の顔を好きになる “私だけの魅力”が絶対見つかる自己肯定メソッド』
著 水野未和子 定価 1400円(税別)
10月30日発売
Kindle版も配信中!
講談社
数々のファッション誌や広告で女優やモデルのメイクを手がけているメイクアップアーティスト、水野未和子さん。水野さんのメイクの特徴は、人によって違う、その人だけの魅力をディファイン(明確に)すること。何かを隠すのではなく、誰かのようになるのではなく、「自分になる」メイクです。この本では、あらゆる年代、あらゆる属性の誰もが自分の魅力を底上げできる「ディファインメイク」の考え方と、そのメソッドを詳しく紹介します。
『ディファインメイクで自分の顔を好きなる』 文/松本千登世 構成/金澤英恵
Edited by VOCE編集部
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