『もやしもん』著:石川雅之
テーマのマニアック度においてはダントツ!
身近でない世界を描いたマンガは数あれど、『もやしもん』ほどマニアックな世界を描いたマンガとなると少ないはず。そう、主人公の沢木直保がその不思議な力を持ってして見ることができるのは、何と“菌”なのです。
造り酒屋の息子である結城蛍と一緒に、田舎から東京の農大に入学した沢木直保。祖父の友人で大学の教授である樹慶蔵という風変わりな老人と出会い、初日から一気に農大ライフの洗礼を受けることに。
樹の研究室で、長谷川遥という大学院生と知り合った直保と蛍。しかし遥は、菌が見えるという直保の能力に嫉妬を隠せません。
さらに直保たちは、研究の一貫として日本酒を密造していた2年生の川浜と美里という生徒と出会い、その学生ライフは混迷を極めていきます……。
菌の世界がこんなに面白かったなんて!
さてこのマンガの最大の見どころはというと、それは間違いなく、もう一人の主人公とも言える菌について本格的な解説がなされているところでしょう。
たとえば北極圏の人が野菜不足を補うために食べている発酵食品のこととか……。
日本酒製造において最大の敵となるヒオチという菌のこととか……。
他にも身近な飲み物や食べ物の菌について、「そうだったんだ!」という話がたくさん登場します。それゆえ、「お酒や発酵食品について学びたい」と何度も読み返す読者も多いほど。一方で、ただ何となく面白いからと読み始めた人たちも、読むにつれて自分が食べているものへの関心を一気に強めているようです!
風変わりで愛すべき農大ライフと登場人物たち
しかし菌という専門性の高い分野について本格的な解説がされているとなると、難しくて疲れそう……と及び腰になってしまう人もいるかもしれません。それをとても面白く、読みやすくしてくれているのが、ユニークな農大ライフとそこで学ぶ風わ変りな人々です。
農大キャンパスでは生徒たちが当たり前のように巨大大根を育てていたり、動物が通行したり……。
中には知的好奇心から日本酒の密造を試みる生徒も!
皆、飄々としていながらいたって真剣。そのおかしみが、学問的な解説もすんなり頭に入れさせてくれるのです。
読めばこの作品がなぜ、こんなにも長く愛され続けているのか絶対分かるはず。『もやしもん』で、菌という奥深い世界に足を踏み入れてみませんか?
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取材・文/山本奈緒子
Edited by VOCE編集部
公開日: