なぜミツバチを保護しなくてはならないのか?
いま、ミツバチが急速に減少していることが大きな問題となっています。減少し始めたとされるのは1990年代後半から。2011年には国連環境計画(UNEP)がミツバチの激減に関する初の報告書を発表し、その後も世界中からミツバチが消えているという報告が後を絶たちません。なぜミツバチの激減が問題視されているのでしょうか?
ミツバチと言えば、花の蜜を集め、巣に蓄えることでハチミツに加工することは周知の事実。しかし、ハチミツを作ること以外にも重要な役割を担っているのです。それは、ミツバチが花の蜜を集める際に、体に花粉をつけて花から花へと移動を繰り返しているうちに、自然と受粉を行なっているということ。「世界の食料の9割を占める100種類の作物種のうち、7割はミツバチによって受粉を媒介している」とUNEPの報告書にも記載されており、このままミツバチが世界から姿を消せば、私たちは今までのように野菜や果物を食べられなくなってしまうかもしれないのです。
ミツバチをシンボルに掲げるゲランの取り組み
ミツバチの激減に対してさまざまな原因が考えられるなか、ひとつとして挙げられているのは環境破壊――。「気候変動」や「環境汚染」など、人間の活動によって、地球本来が持つ自然や生態系を破壊し、このままいくと地球自体の存続も危ぶまれています。
ブランドの歴史的シンボルとしてミツバチのイメージが強いゲランは、そうした環境問題に目を向け、2007年から「IN THE NAME OF BEAUTY -美という名のもとに」と題し、パッケージにエコデザインを採用するなど、積極的にサスティナブルに取り組んでいます。なかでも注力しているのが、地球の存続はもちろんのこと、ゲランにとっても大切な存在であるミツバチの保護。代表するエイジングケアラインの「アベイユ ロイヤル」は、ハチの自然治癒力に注目したスキンケアシリーズで、ハチミツやロイヤルゼリーなど、フランス・ウェッサン島のみ生息する稀少種「黒ミツバチ」由来の成分で作られています。それら黒ミツバチを保護するため、ウェッサン島のブルターニュ・ブラックビー保護協会とパートナーシップを締結。また、ヨーロッパ中にミツバチの巣箱を作ったり、「Bee University(ミツバチの大学)」と称する会を設立するなど、様々な活動を行なっています。
日本では「ニホンミツバチ」の保護活動をスタート。昨年よりフランスの本社で行なっている「Bee School」に、ニホンミツバチの内容を加え、今年から日本の養蜂所とともに啓蒙活動を開始しました。その活動を支えるため、「アベイユ ロイヤル」の売り上げの一部を寄付する取り組みも行なっていきます。
また、昨年10月にはユネスコと養蜂活動においてパートナーシップを締結しました。ますますミツバチ保護への活動の範囲を広め、養蜂家の育成やその国際的ネットワークを構築していくことなどを目標に掲げています。
アベイユ ロイヤル ウォータリー オイル 30ml ¥11600、50ml ¥16700/ゲラン
養蜂家がスタートさせたオーガニックコスメブランド、メルヴィータ
ハチミツやミツロウなど、ミツバチの恵みを生かした「アピコスマ」シリーズなど、オーガニック認証コスメブランドとして知られるメルヴィータは、実はミツバチに感銘を受けて生まれたブランド。創業者が養蜂家でもあったことから、ロゴにも入ったミツバチを大切にする姿勢は、30年以上にわたり続けられています。これまでに、フランス国内の菜園で養蜂トレーニングへの資金提供や設備投資を行なったり、モロッコではアルガンオイル産業で働く女性たちに持続可能な養蜂業を伝えて事業化することで、約670の養蜂箱を設置し、2,680万ものミツバチに巣を与えています。
(左)アピコスマ スリーハニー バーム 8g ¥1900
(右)アピコスマ リッチリップバーム 3.5g ¥1300
/メルヴィータ
ミツバチを守る活動をミツバチコスメで支援するニールズヤード
同じくオーガニック原料にこだわるニールズヤードは、2011年にプロポリス成分を配合した「ビーラブリーハンドクリーム」を発売して以来、「HELP SAVE THE BEES」と題し、さまざまなキャンペーンを実施してきました。キャンペーンのたびに発売される売り上げの一部を寄付したり、植樹や苗木を寄付するなど、幅広い活動を行なっています。ミツバチがもたらす自然の恵みを詰め込んだハンドクリームでの反響を受け、その後もリップバームやハンドウォッシュ、ボディローションなどを展開。これらアイテムの売り上げの一部も、ミツバチを増やす活動へ継続して寄付しています。
(左)ビーラブリーハンドクリーム 50ml ¥2800
(中)ビーラブリーリップバーム 15g ¥1700
(右)ビーラブリーハンドウォッシュ 295ml ¥3000
/ニールズヤード レメディーズ
山田養蜂場が提案するミツバチの癒しのコスメ
創業以来、70年を超える年月をかけ、ミツバチと自然との完全共生がもたらす恵みとして、「“アピセラピー”こそ究極のサスティナブルビューティ」だと提唱する山田養蜂場も、ミツバチとの関係性を大切にしているコスメブランドのひとつです。「アピ」とはラテン語で「ミツバチ」、「セラピー」は「癒し」を意味し、ハチミツはもちろん、ローヤルゼリーやプロポリスなど、ミツバチが作り出す恵みを美容や健康に役立てる自然療法とのこと。豊かな自然があってこそ、こうした恵みを受け取れることに感謝し、自然環境を守る活動に積極的に取り組み、2001年より国内でスタートした植樹活動で植えた樹は、現在、国内外を含め216万539本にも及んでいます。そんな山田養蜂場のアピセラピーコスメティクスは、すべて香料・鉱物油・パラベン(防腐剤)を使用せず、ローヤルゼリーなどミツバチ由来の成分を使用しています。
(左)RJローション EX 120ml ¥4000
(中)薬用 RJエッセンス EX 30ml ¥8200(医薬部外品)
(右)RJクリーム EX 30g ¥5000
/山田養蜂場
自然がもたらす恵みに感謝をすることで心も肌も美しくなる
私たち人間の行いによって、悲鳴を上げ始めている地球。今回は、かのアインシュタインも「もしハチが地球上からいなくなると、人間は4年以上は生きることはできない」と残しているように、食物や生態系に大きな役割を果たすミツバチに、企業として向き合う姿勢を紹介しました。
ミツバチが生み出すハチミツは、古代エジプトやアーユルヴェーダでも医療としても使われてきた、美や健康に良い自然の産物。もちろんハチミツだけではなく、ローヤルゼリーやプロポリスなどの産物も、人間の手では作り出すことはできません。
そもそも人間も自然の一部であり、合成香料や防腐剤が入ったものではなく、天然由来のものを使用した方が「自然である」はずです。毎日使うものだからこそ、環境のことを考えたものを選び、自然の恵みに感謝をする。その一人一人の小さなアクションが、肌だけではなく、心も豊かにしてくれ、やがて地球を変える大きな動きになっていくのです。
取材・文/齊藤美穂子
美容のミライとは?
「キレイになるって、面白い!」をテーマに1998年に創刊された美容誌VOCE(ヴォーチェ)。そのウェブサイトが今年20周年を迎えました。新しい時代、新しい世代に向けて、新ビューティ企画「美容のミライ」を始動します!
テーマは、「キレイになるって、地球に優しい!」。人や環境を傷つけることなく、また最先端の科学やテクノロジーを凝縮して生み出される新時代のコスメたちをフィーチャーし、“未来のキレイ”を見つめるコンテンツをお届けします。
Edited by VOCE編集部
公開日:
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