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立ち止まってもいい。Netflix『私の解放日誌』にみる韓国エンタメの新潮流

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社会に違和感をもつ2人が出会うドラマ『私の解放日誌』

そして、2022年4月からは『私の解放日誌』が放送され、日本でもNetflixによって、ほぼリアルタイムで視聴することができた。

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脚本は、先述の『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』のパク・ヘヨン。ヒロインのミジョン(キム・ジウォン)と、長男のチャンヒ(イ・ミンギ)、姉のギジョン(イ・エル)は共にソウルの会社で働いている。しかしミジョンは同僚たちとの会話にも、どこかついていけないところがあり、社内の同好会の活動にも参加していない。理由のひとつには、彼女の実家が、地下鉄を乗り継いで一時間以上かかる、サンポ市という郊外にあることも関係があった。

これまでのヒーリングドラマは、田舎町には自然がたくさんあって、そこにいるだけで癒やされる場所とされがちであったが、このドラマでは、田舎町ではなく、ソウルの“郊外”であるからこそ、閉塞感が漂い、決して癒やされるだけの場所ではない。そこが、これまでとは違った描かれ方である。

そんな郊外にあるミジョンの家で働く男性。彼は、ク(ソン・ソック)という苗字だけを名乗り、仕事が終わると、いつも焼酎を飲んでいる。口数は少なく、それ以外のことは謎に包まれているが、ミジョンは彼に妙に惹かれるようになり、ある日突然、彼に対して「私を崇めて」と告げるのである。

どこか社会や人間関係に違和感を持っており、そこはかとなく「疲れている」ふたりが、シンパシーを感じるのは必然のように思える。それ以上に、謎めいていて、悲しみを全身から漂わせるクを演じるソン・ソックの魅力でこのドラマが成立しているようなところもある。

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作詞家の松本隆氏も、このドラマを見て、「ソンソックの野生の色気に1秒ごとにやられる」と自身のTwitterで綴っているほどである。

ソン・ソックについてもう少し書くと、1983年生まれで2016年デビューという遅咲きの俳優ながら、『D.P. -脱走兵追跡官-』(21)などの話題作や、アメリカのドラマ『センス8 シーズン2』(16)にも出演。韓国でリメイクされた『Mother』や『最高の離婚』(共に日本の原作は坂元裕二脚本)では、どちらのドラマでも、綾野剛が演じた役を演じた。2022年はマ・ドンソク主演で、コロナ禍以降で初めて1000万人を超える動員を記録した『犯罪都市2』にも出演しているため、韓国で今、一番ホットな存在となっている。そして、そんな彼が、ある意味、今の韓国の気分を表すような、それでいて、これまでにドラマでは見たことのないような役を魅力的に演じているのが『私の解放日誌』なのである。

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