今回のゲストは元宝塚歌劇団・雪組娘役スターの大湖せしるさん。在団中は男役と娘役を両方経験され、雪組を支えてこられた方。様々な経験で培った表現力は素晴らしく、存在がドラマティック! 内面はとても可愛らしく、そのギャップも魅力です。今回は宝塚時代のお話をしていただいています。
幸せすぎる宝塚人生でした。
美夢ひまり(以下 美夢)
在団11年目で男役から娘役に転向というのは宝塚史上初だったんですよね。
大湖せしるさん(以下 大湖さん)
そうです。でも実は音楽学校時代も迷っていたんですよ。私は入学するまでパンツを穿いたことがなくて、男役なんてできるのかなって。でも宝塚は男役が花形だし、「できるなら男役の方が良いよ!」と周りからも言われて男役をやってみようって思ったんです。
美夢
そうだったんだ。
大湖さん
でも入団してからショーなどで時々回ってくる娘役のとき、すごく心地良くてですね。2期上の緒月遠麻さんからも「娘役のとき、いきいきしてるよね~」と言われたことがあってやっぱり自分が心地良いとそう見えるんだなって思いました。
美夢
劇団や周りから転向をすすめられたことは?
大湖さん
それが一度もなくて(笑)。
美夢
なかったんだ! 意外!
大湖さん
そうなんです。男役も楽しかったから、私は男役だって言い聞かせてやっていたのですが、『ロミオとジュリエット』の愛役をいただいて。それでとても心が揺さぶられました。
美夢
あれは本当に素敵だったもんね。評価も高かったでしょう。
大湖さん
ありがたいことに……はい。『ロミオとジュリエット』の後に契約更新で劇団の理事長や組のプロデューサーさんとお話しさせていただく場があり、そこでも愛役を褒めていただきました。そこで「娘役への転向を考えています!」って突然言っちゃったんです。
美夢
そこで言うって決めていたの?
大湖さん
いや、全然決めてなかったです。だから雪組のプロデューサーさんにも言っていなかったので、本当にびっくりしちゃって。
美夢
それはそうだわ。
大湖さん
男役10年目だったので、「とりあえずよく考えてください」という形でその話は終わったんです。そこから一年悩んだのですが、やっぱり後悔の無い宝塚人生にしたいなと思ったので転向を決めました。
美夢
たくさん悩んだんだね。
大湖さん
自己中心的な考え方でしたけど、ただただ自分の宝塚人生を満喫したかったんです。ヒロインをやりたいとかそんな大それた希望はなかったので、彩凪翔ちゃん主演の『春雷』で自分がヒロインをすると聞いたときは、驚きすぎて本気で椅子から落ちました。
美夢
人って本当に椅子から落ちるのね(笑)。
大湖さん
そうなんですよ! その後もヒロインや、とても素敵な役をたくさん与えていただいて、幸せすぎる宝塚人生でした。
次ページ
娘役に転向して変わったこと