森絵梨佳の“仕事”論
有名になりたいとは思わない
「VOCEに初めて出させていただいてから、もう13年。できることなら当時の私に教えてあげたい。『そのままでいいよ、間違ってないよ。いつか表紙を飾れるよ』って。それくらい今、うれしさでいっぱい。ただ、表紙は夢でしたが、この世界で“森絵梨佳”として有名になりたい、と思ったことはないんです。私の“欲”のベクトルは、編集さん、ヘアメイクさん、スタイリストさん、カメラマンさんが込めた想いを100%表現したい。その一点に向いてるから。
先日、長年一緒にお仕事をしている編集さんに『絵梨佳ちゃんは撮影中にモニターを見ないよね』と言われて気づいたのですが私って『自分がどう写っているか?』には興味がないんです。それより、ちゃんと求められている世界観を表現できたかどうかが大事。私の仕事は表現すること。それをジャッジするのはほかのスタッフの方たち。極端な話、彼らが最高とジャッジするなら、それが私が考える美しさと違っても構わない。そう考えてるから、モニターをチェックしようとは思わないんですよね」
仕事は生きがいであり、支え
「モデルという仕事は私の生きがいであり、支え。落ち込んでる日でも、カメラの前に立つと忘れられるし、元気になれます。いろんな仕事がありますが、ビューティ撮影は特別。
たとえば、メイクの撮影は基本的に顔にドーン!とフォーカスした“寄り”の世界。ファッション撮影だと洋服やアクセなど見せなきゃいけないものがたくさんあるけど、ビューテイは顔まわりだけでの表現なので、逆に『自由度が高くて面白い』と思ってるんです。まぶたの開け具合、唇の力の入れ具合、体の捻り具合、手や指の表情、とほんのちょっとの違いで見え方がガラリと変わる。この“寄り”の世界の中では表現の方法は無限大。その奥深さに私はずっと魅せられてきたし、今でも撮影中は楽しくて常に夢中です。
ずっと昔、ビューティ撮影に不慣れな頃は集中のあまり、呼吸するのを忘れてメイクさんに『絵梨佳ちゃん呼吸して!』なんて心配させちゃったことも。あとで聞いたらまばたきをまったくしなくなり、目つきがおかしくなっていたとか(笑)。だけどそこまで夢中になれる仕事に出合えて、そしてそれを10年以上も続けてこられた私は、なんて幸せ者なんだろうと思いますね。
気がついたら33歳となり、年下のモデルさんも増えてきました。パワーというか、勢いという面では、若い子には勝てないかもしれない。だからこそ求められている場所で全力を尽くす。そして楽しむ。そのマインドで自分らしくがんばっていけばいい。そうすることでこの先もずっと走り続けられると思っています」
撮影/三瓶康友 ヘアメイク/吉崎沙世子(io) スタイリング/木下夏実(DRAGON FRUIT) 取材・文/中川知春 構成/鬼木朋子
Edited by 鬼木 朋子
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